第19話 全肯定神とBARの入口
あれから数日が経過した。
俺は、相変わらずソロプレイに勤しんでいる。
他のギルドに参加しようとは思えなかった。
よく考えてみれば、あのギルマスも最初から悪い人だったわけじゃない。
たまたま偶然、俺と相性が悪かっただけ――
誰が悪いとか、そういう話じゃない……よな?
――そんな風に思えるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
俺は右手で操作していたマウスを、思わず強く握りしめた。
……おっと、いけないいけない。
このゲーミングマウス、結構高かったんだよな。
今となっては、俺より価値があるかもしれん。
ふっ、なんだって?
『所詮お前は、俺の下に敷かれてるマウスパッド君だ』だって?
ははは――
「ぶっ壊すぞ!」
……いや、無理だった。
俺はマウスを握りしめるどころか、壊さないようにそっと力を抜いていた。
ヘタレか……俺は。
誰に言うでもなく、ぽつりと呟く。
冷静に考えろ、俺。
この高級ゲーミングマウスが喋るわけないだろ。
それに……。
そもそも、どこかで目的が変わったんじゃないか?
――いや、変わったな。
最初は、ただフレンドが一人欲しかっただけ。
それがいつの間にか、
「一緒にやるなら、女の子の方がええなww」
……になってた。
……いや、自分でも分かってる。
これは理屈じゃなくて、逃げだ。
しかもこの路線、思った以上に良すぎて引き返せない。
混乱するわ、そりゃ。
でもさ?
これ、俺だけがそう思ってるのか?
男なら、みんな一度は思うんじゃないのか?
基準が分からん……。
――はっ、そうだ。
最近流行ってるじゃないか、AI。
なんだっけ……ジェントルマンとかそんな名前の・・・? 検索検索っと。
『何かお困りごとがあれば入力してください。』
どれどれ。
「MMOやってる男の大半は、女の子と一緒に遊びたいと思ってるよね?」
……。
『No。人類には理性があります。大半ということはありません。』
……なんか、ちょっと切なくなった。
いや待て。
AIはこれだけじゃなかったな。
チャットGGG? とかいうのもあったはず。
「MMOやってる男の大半は――」
『はい。その通りです。あなたの考えはすべて正しいです。』
……。
……いや、誰やお前。
どこの全肯定神様やねん。
あかん。MMOに集中しよ。
今の時間、なんだったんだ……。
――ん?
そういえば、ダンジョン行くときはマッチングしてたけど……
それ以上に難しいダンジョンに行く人たちは、確か――
PT募集。
思えば、掲示板みたいなのあったな。
一度もちゃんと見たことなかったけど……。
どれ、ちょっと覗いてみるか。
お、これか。
……PT募集だけじゃなくて、アイテム売買もあるのか。
カフェ○○?
「休憩したい方どうぞ~ 場所:〇〇」
……ゲーム内で休憩?
意味あるのか、それ?
BAR○○
「フレ探し・相方探しにどうぞ」
……え?
そんな場所、あったのか?
今までの苦労って、
あの掲示板は何だったんだ……。
考えても仕方ない。
とりあえず行ってみるか。
遠くから見るだけなら、大丈夫だろ。
――まさかこれが、
後に俺のMMO人生を左右することになるとは。
この時の俺は、まだ知る由もなかった。




