第10話 おしゃれという名の初心者キラー
おしゃれ――
それは、ある者にはレアアイテムよりも強力な武器。
またある者には、意味不明なゴミ。
……俺はどっちかって言うと、後者寄りだ。
かなり後者寄りだ。
ただ、このアイテム。
数からしてもポーションみたいな消耗品と同じ枠っぽいし、
何より――99個。
「……初心者が考えても始まらんな、これ」
ここは素直に聞こう。
下手に知ったかぶってメッキ剥がれる方が致命傷だ。
「初めて見るアイテムなんですけど……Aさん、これって……?」
「ふふふーん。そりゃそうだよね。
初心者のうちは、正直ほぼ使わないアイテムだし」
「え、そうなんですか?」
「うん。どっちかって言うと、
ある程度ゲーム分かってからのコンテンツかな?」
「なるほど……さすがAさん。
ゲーム歴長いって言ってましたけど、伊達じゃないっすね!」
「うんうん、そうなのだよ(エッヘン)」
……この人、ノリがいい。
ていうか普通にいい人だ。
「だからね、俺君も分からないことがあったら、
いつでも“お姉さん”に頼っていいからね?」
「……」
やばい。
この言い方、地味に破壊力ある。
(ちょっとチョロい?)
……いやいや、よくないよくない。
その考えはホワイトサイクロンの彼方へ沈めろ俺!
「あはは、頼もしいですよ。A姉さん!」
「ふふふ。
なかなか俺君ノリいいね?
変にかしこまられても困るから、ちょうどいいよ」
「じゃあこれからA姉さんって呼ばせてもらいますね!
……で、さっきのアイテムの話なんですけど、
これ一体なんなんです?」
「それはね――」
A姉さんは、俺の装備を一通り見回してから言った。
「今さ、俺君って防具そのまま着てるでしょ?」
「はい」
「そのままだとさ……
なんて言うのかな……“鎧感”すごくない?」
「……あ」
言われてみれば、めちゃくちゃ重装備だ。
完全に“戦闘用”。
「言われてみれば...街中にいる人たちって、
結構普段着みたいな格好してますよね?
それ、実はずっと不思議だったんですよ」
「でしょ?」
「折角ファンタジー世界なのに、
リアルじゃ着れないカッコいい鎧とか着てないなって。
……もしかしてこの世界、
俺みたいな鎧姿って逆にダサいんですか?」
「んー……ダサいってほどじゃないんだけどね」
A姉さんは少し考えてから言った。
「一目見て、
『あ、初心者さんだな』って分かる感じ?」
「うわ、それ地味に恥ずかしいやつ……」
「もちろん、それだけで判断されるわけじゃないよ?
他にも色々要素あるしね」
「なるほど……
じゃあこのアイテムって……?」
「ふふん」
A姉さんは、ちょっとドヤ顔で言った。
「防具はそのままで、
“見た目だけ”を別の防具に変えられるアイテムだよ!」
「……え?」
「数が多いのはね、
俺君これからまだまだ色んな装備手に入れるでしょ?
その時用ってわけ」
そう言って――
ウィンクエモート。
「……」
やばい。
雰囲気が完全に“できる先輩”。
「(ドキューン……)
……これはモテるタイプの人や……」
女性免疫耐性レベル2の俺には、
破壊力が高すぎる。
「……でもA姉さんの見た目、
ごつい獣人なんだよなぁ……」
脳がバグる。
――俺のMMOライフ、
いよいよ方向性が分からなくなってきた。




