表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

第1話 フレンドリストが0人だった日

世界で三千万人が遊んでいる、いわゆる“覇権MMO”。

公式がそう名乗るだけの数字は、確かにログイン画面に並んでいる。

サーバー選択、キャラクター作成、チュートリアル。

どこも混雑していて、人は溢れているように見えた。


その中で、俺はただのいちプレイヤーだ。

特別な称号もなければ、ランキングに名前が載ることもない。

毎日ログインして、デイリークエストを消化して、装備を少しずつ更新する。

それだけ。


このゲームには自動マッチングシステムがある。

ダンジョンに行くときは、参加ボタンを押すだけでパーティが組まれる。

募集文を書かなくていい。

誰かの返事を待たなくていい。

システムが、全部やってくれる。


開始と同時に、

「よろしくお願いします」

というマクロが流れる。


それからは無言だ。

誰がどんなスキルを使っているかも分からないまま、

敵を倒して、宝箱を開けて、ボスを倒す。


クリア画面が表示されると、

「お疲れ様でした」

というマクロが流れて、即解散。


――それが、日常だった。


最初のうちは楽だった。

効率がいいし、失敗しても責められない。

何より、気を遣わなくていい。


俺は元々、知らない人と話すのが得意じゃない。

チャットを打つ前に、

「これ変じゃないか?」

「今話しかけるタイミングか?」

そんなことを考えているうちに、機会を逃す。


だから、この仕組みはありがたかった。

必要な会話はマクロが全部やってくれる。

俺はボタンを押して、操作していればいい。


快適だった。

少なくとも、最初のうちは。


数か月くらい経った頃から、

なんとなく違和感を覚え始めた。


ダンジョンを周回しても、記憶に残る相手がいない。

昨日一緒だった人が誰だったのか、思い出せない。

フィールドは賑やかなはずなのに、

俺はずっと一人で走っている感覚があった。


「……これ、MMOって言うよりソロゲーでは?」


独り言みたいに呟いて、

自分で少し笑った。


ソロゲーならソロゲーでいい。

一人でやるゲームも、俺は嫌いじゃない。

誰にも合わせなくていいし、

自分のペースで進められる。


でもこのゲーム、

“大規模多人数オンライン”って、

でかでかと書いてあるんだよな。


多人数って、どこだ?


街には人がいる。

チャットログも流れている。

でも、それは全部背景みたいなもので、

俺の物語には一切関わってこない。


効率はいい。

装備も揃ってきた。

進行も順調だ。


なのに、

どこかで引っかかる。


このまま続けて、

俺はこのゲームで、

誰かと「知り合い」になることがあるんだろうか。


その疑問だけが、

周回の合間に、ずっと残っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ