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1/96〜男女比1:96の貞操逆転世界で生きる男刑事〜  作者: Pyayume
第七章「潜流」

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第93話「炎上」

翌日、地下駐車場までSPに送ってもらい池袋署内に入ると、以前のような奇異の視線を感じた。


「あれあれ、男なのに女所帯に入るってそうよね」

「あんな芋い女までイケる男なんだから、あんたも相手して貰えば?」

「やだやだ、あいつ病気持ってるに決まってるじゃん」


そんな声が聞こえている。


いったい何があったと言うのだろうか。


「おい!佐藤っっ!!」


突然怒鳴り声が聞こえ振り返ると、顔を真っ赤にして関が走ってきた。


「お前何やってたんだよぉ!早く来い!署長室だ!!」


何かしか記憶は無かったものの、物凄い勢いの関に押されて署長室へと急いで向かった。


---


「で、これはなんだ?」


署長室に入り、挨拶もそぞろに見せられたのはタブレット。


俺と水越が顔を寄せ合っている画像が、SNSに投稿されているようだ。


俺と水越の顔部分にはモザイクがかけられているが、昨日の夜に間違いない。


<警視庁不祥事!?公用車での相引きか?>という煽り文句が付いた投稿は、現時点でかなり炎上していた。


「SSBCの水越係長と私です。昨晩SSBCの公用車に乗っていたので、その際の写真かと。」


「そんなことはもう分かってる!これは何をしてるんだ!」


激昂している署長が指差したタブレットには、件の投稿に対するコメントも見てとれた。


<一定数の男がいる公務員様は勝ち組ですねー>


<国家資源相手の独占反対!この女は処すべき>


<この男、この間池袋の防犯講習で見た!池袋署唯一の男警だよ!>


<むしろ男から迫ってない?尻軽男すぎでしょ>


等、俺も水越も批判にさらされていた。


「事件捜査資料の確認を依頼され、それを確認した後、別の画像を確認した際のものかと。」


「これは公用車を使ったデートではないと?」


「はい、他に同乗者が2名居り、その2名が内偵に行った後に送ってきた画像を私と水越係長で確認していました。」


「…もういい」


署長は深いため息をつき、タブレットを机に置いた。


「佐藤。お前は一旦、家に帰れ。」


「……処分、ですか。」


「無期限謹慎だ。形式上の処分だ。外部に対して『ちゃんと対応しました』という建前が必要なんだよ。今回の件は、お前の素行云々より見られ方の問題が大きい。」


関が横でバツが悪そうに眉をひそめている。


署長はさらに俺に書類を差し出した


「SSBC側からも連絡があった。水越係長も処分対象だ。」


差し出された紙には水越が7日間の謹慎という内容が書かれていた。


「……水越係長もですか。」


「向こうも内規がある。男女が公用車で密着していた写真が世間に出ている以上、組織として動かざるを得ないんだそうだ。」


胸の奥がひどくざわついた。


「水越係長は7日なんですね。」


「水越係長は大きな事件の解析指揮をとっているそうだ。そことのバランスだろう。お前と違って所属がバレていないから軽傷で済んだ、と向こうは言っていたが……」


その言い方には、明らかに気の毒だという色があった。


「まぁ以上だ。佐藤、SP呼んでまっすぐ帰れ。しばらくは自宅だ。」


「承知しました。」


署長室を出ると、関が待っていた。


「理由は分かった。車両の方は俺が見ておく。」


「ありがとうございました。多分暇になるので、メッセージとか貰えたら俺も確認します。」


「おう。まぁまずは、ちょっと休めってことだ。署の雰囲気は気にするな。まぁ、見る限り全然凹んでねぇから心配してないが。」


そこまで言った関が、一歩俺の方に近づき、声を潜めた。


「お前が捜査に執着してることは分かったが、謹慎中は考えることはできるだろ?」


「そうですね。」


そう言って俺は笑みを返すと、関が合わせてふっと笑う。


「お前、あのSSBCの係長と良い仲なのか?」


「そんなこと無いですね。」


「いや、なんか……あの人、他部署なのにお前のために今回のことで、SNSのサーバーをハッキングして無かったことにしようとしたって話がもう回ってきてる。」


「……は?」


思わず声が裏返った。


「とにかく。お前は謹慎だ。家に帰れ。」


そう言いながら、背中をバシッと叩かれた。


痛みより、胸のざわつきの方が大きかった。


---


出勤したばかりの署を出て、エレベーターホールを抜けたところでスマホが震えた。


<佐藤君すまない。私も謹慎だ。私が事態をうまく説明出来ずにすまない。>


文章だけなのに、水越の声がそのまま聞こえる気がした。


思わずため息が漏れる。


「……巻き込んだのは、俺なのに。」


誰にも聞こえない声で呟いた時、画面にもう一通メッセージが届く。


俺は見る気が起きず、スマホを握りしめ、タクシーに向かって歩き出した。


家に向かって揺られるために。

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