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1/96〜男女比1:96の貞操逆転世界で生きる男刑事〜  作者: Pyayume
第七章「潜流」

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第91話「1 leave this 2」

5月25日、午後4時28分。


ようやく保安係の応援から解放された俺は、オークションの会場がどこになるのかということが、頭から離れなかった。


今やるべきことは車両の捜査だということは分かっている。


それは、防犯係としての職務でもあるためだ。


しかし、机の上のスマホが映し出した山崎の短いメッセージの中で、『もう所属が違うのに』という部分ばかりが目に入る。


もう積極的に関与してはいけない。


そう思っていたが気づいたときには、検索窓に『池袋 イベント会場』と打ち込んでいた。


ざっと結果は100以上もある。


貸会議室にダーツバー、カラオケ等、ジャンルも様々だ。


何となく検索結果をスクロールすると、ある貸会議室の口コミに目が留まった。


<ここ最悪、元準合法セクター跡らしくて、メス臭が半端ない>


<設備は新しいのに、臭いがキツすぎてもう使わない>


それを見た瞬間、俺の中である可能性が浮かんだ。


今朝からバタバタしていた『おせおせ学園』の図面は、そこそこ広くて音響施設が整っていなかったか。


さらに、立地もいわゆる|準合法セクター集合ビル《風俗ビル》であり、何かを搬入しようが誰も気に留めない環境ではなkったか。


許認可事務で使う店舗型準合法セクター特殊営業届出の簿冊を開き、『おせおせ学園』を確認する。


桶塩原ビル地下一階の『おせおせ学園』。


『営業所の構造及び設備の概要』欄を確認すると営業所の床面積もそこそこ広く、平面図をみても少し変えればオークション会場にも利用できそうだ。


照明設備、音響設備、防音設備、あたりもきちんと設置されていることがわかる。


「…偶然だとしたら、出来すぎてる。」


確か、『おせおせ学園』は匿名の110番で『違法に外国人を雇ったセクターがある』と通報を受けたはずだ。


シーチェストから薬が減っていたことを気づかれて、急に場所変更したかった運営者は、会場として使えそうな場所を探していたということか。


そして偶然バイトで応募してきた『おせおせ学園』の従業員が、不法就労者と知ったため、その場所利用を考えた可能性がある。


通報内容から現行犯逮捕に至れば、営業実態把握のために店内の物も押収され、警察を掃除業者として使える。


これ以上なく理屈が通っている気がした。


「つまり……31日のオークション会場は……『おせおせ学園』?」


流石に荒唐無稽過ぎてぼそりと呟いた後に、自嘲が込み上げた。


それと共にスマホが震えた。


思わず、着信先を確認せずに電話を取った。


「もしもし。」


『佐藤君?水越だけど、電話大丈夫?』


久々に聞く水越の声は、何やら興奮した様子だった。


「水越さんからの連絡はいつでも歓迎ですよ。どうかされたんですか?」


俺の質問に水越は小さく笑った。


『君はそんなことばかり言うな。いつか刺されるぞ?まぁそれはさておき、実は、佐藤君に見てほしいものがあるんだ!』


「見てほしいものですか?私に?」


思わず背筋が伸びた。


電話の向こうで、紙をめくるような音が聞こえる。


『いや、前に解析した内山みのりのデータ、再度見直したたら新しいことが分かったんだ!捜査本部の主要どころは出張やら検察官との打ち合わせで戻り予定が無くってさ。意見が聞きたいんだ。』


水越に頼られるというのは悪い気がしない。


しかし、もう外様となった自分が情報を見てもいいのか、一瞬だけ迷った。


「なるほど、分かりました。まもなく定時ですからその後であれば大丈夫です。」


『わかった。じゃあ池袋に行くよ。』


「待ってください。公用車で来ることは出来ますか?正直、池袋で自由に使える部屋が無いんです。」


『わかった。若葉に頼んで車出させるよ。雑司ヶ谷駅通り過ぎたら一報入れるね。』


「承知しました。」


通話を終えると、既に定時2分も回っていた。


俺は「お先に失礼します。」と挨拶をして、部屋を出た。


---


「で、これが見てほしい物なんだけどね。」


そういって水越がノートパソコンを俺に見せてきた。


今、俺は公用車の後部座席で水越と隣合わせで座っている。


運転席には若葉、助手席には見慣れない女性が座っていた。


池袋周辺は駐停車禁止区域が多いため、適当に流してもらっている。


若葉はさすがに俺に慣れたのか、落ち着いた運転だが、助手席の女性は新人らしく、こちらをちらちら気にしている。


「前に内山みのりの『遺書.docx』から出てきた『a.png』って画像があっただろう?あれの本当の意味が分かったんだよ!」


少し興奮気味に水越の声のトーンが上がった。


画面には『a.png』を開いた状態、黒地に緑文字で一言< 1 leave this 2 U >と書かれている。


「この画像普通なら6~7kb程度のサイズのはず。でも、実際のサイズを見ると。」


俺はエクスプローラに書かれたサイズ部分を読み上げる。


「857kbと書いてありますね。」


「そう、ずっとそこが気になっていた。で、さっきとうとう分かったんだ。< 1 leave this 2 U >の意味がね。」


水越が一拍置いた。


「これはそのまま1個の画像から2つの画像をleaveする。つまり、この画像に隠れている画像があって、それを剥がして見ろっていう意味だったんだ。Uが不自然に離れていたのは、byUchiyamaって意味だったのかな?」


「でも、そんなこと出来るんですか?」


「Binwalkってツールで隠されたファイルが取り出せるんだよ。実際に『a.png』の中に他の画像ファイルが隠れてたんだ。それがこれだ。」


水越がパソコンを捜査すると、画面にQRコードの様な画像と文字列が表示された。


「QRコードとパスワード……ですか?」


「そう、これを読み取った先のURLがストレージサービスでね、このパスワードを使ってダウンロードしたファイルがこれ。色んな情報があるけど、正直どれが事件的に必要なのか分からない。そこで佐藤君に見てほしかったんだ。」


水越が見せてきたファイル群はいろいろなものが散乱しているような印象だった。


内山みのりが。急いであるもの全部詰め込んだという感じなのだろう。


そこに並んだファイル群の中で、ひとつだけ目を引いた。


『男性DB更新ワークフローの是正検討.pdf』


俺はそのファイルを開くと、画面には国章入りの表紙が表示された。


<報告者:内山みのり>


ページをスクロールすると、淡々とした報告の文体が続く。


<男性DB更新のワークフローにおいて、独善的にデータ更新が出来る権限が存在することが発覚した。システムの運用過程において、恣意的なデータ更新により男性の人権が著しく損なわれる可能性が有り、可及的速やかに是正措置を講ずる必要がある。>


さらに、電子承認欄とコメントが目に入る。


<【祖母井決裁済】>

<【局長以上への報告は祖母井が行うため、決裁完了とする。】>


俺は息を呑み、目の奥が熱くなるのを抑えられなかった。


「……内山みのり、ちゃんと報告上げてたのか。」


水越が静かに呟き、俺が頷いた。


「でも、資源庁からの資料では誰もこんなこと言っていませんでした。どこかで揉み消され、全てみのりに押し付けたんですね。」


俺はページを戻し、もう一度、見出しを読んだ。


『男性DB更新ワークフローの是正検討』


「彼女は、最初はこれを止めようとしていたんだ……。」


胸の奥で何かが崩れ落ちるような感覚がした。


しかし、感情だけでは何も進まない。


俺の中である案が浮かんだが、それを実行するには立場が無い。


「水越さん、このファイル群を一度に見せると山崎係長も中村主任もパンクする可能性があります。なので…」


俺はそう言って、今表示した検討資料と、数個のメールファイルを指で示した。


そのメールファイルは『みのりがデータ改ざんを祖母井に報告していたもの』や、『データ改ざんが出来る方法を倉橋医師に共有していたもの』等だ。


「いま示したファイルを優先して山崎係長に見せ下さい。」


「わかった。佐藤君の判断を信じるよ。」


水越が頷いたことを確認した俺は、運転している若葉のほうを向いた。


「若葉さん、ちょっと歩道に寄せて運転変わってください。」


「それは良いですけど、どうしてですか?」


「若葉さんには、焼肉でも食べてもらおうと思いまして。」

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