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1/96〜男女比1:96の貞操逆転世界で生きる男刑事〜  作者: Pyayume
第六章「山羊」

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第67話「マネー・ローンダリング」

「それにしても、本気度が違いますね……。」


中村が感嘆の声を漏らす。


山崎は小さく笑い、腕を組んだ。


「財務特別捜査官は、主幹外では滅多に動かん。彼女たちを応援に貰うってことは、もう引き返せないって合図だ。」


その言葉に、室内の空気が一段と引き締まった。


そこへノックの音が飛び込み、扉の向こうから低い声がした。


「失礼します。」


段ボールを抱えた的場瑠月、後ろにはSSBCの若葉くるみ。


そして、見慣れない長身、スレンダーでショートカットの女性。


「捜査第二課・財務担当の七瀬睦月です。」


黒のスーツに身を包み、姿勢のまっすぐなその女性は、端末と分厚いバインダーを静かに机に置いた。


「四月上旬より錦部長指示で財務捜査を進めておりました。未完成ですが、現段階の報告をしに参りました。」


的場が段ボールを開けると、帳簿、送金明細、投資口座記録、財務捜査に必要な証拠資料がずらりと並ぶ。


「時間は有限。では、簡単に説明を始めます。」


そう言って七瀬が端末を操作すると、壁のスクリーンに複雑な資金フローが映し出された。


白と赤の線が交錯する。


「まず、LUXEの直近1年での総売上は約6億2千万。そのうち4億8千万が経費として処理され、3億9千万が三つの外注先に流れています。」


淡々と話しながら七瀬は画面を指し示した。


「『CBD-THC株式会社』『こーくばぐず』『麻麻商事』。三社とも代表住所は架空、所在地は同一の私書箱。資金は研究協力費としてCBD-THCに集約されます。」


分かりやすく円グラフが表示されて、不明な会社は資金流入があることがわかる。


「で、ここからが問題です。」


ページを送ると、青い線が赤く変わった。


「この研究協力費は入金額の88%が暗号資産に変換。ミキシングというマネー・ローンダリングサービスに資金が転送されています。」


「つまり約3億5千万くらいが行方不明ってことですか?」


俺が尋ねると、七瀬はわずかに口角を上げた。


「普通ならばですね。暗号資産はミキシングを使われた時点で追跡不能になる。しかし、当庁に限ってそれは通用しない。なぜなら、彼女…若葉巡査部長がいますので。」


七瀬の言葉に、目にやる気が宿った若葉が一歩前に出て、タブレットを映す。


捜索差押えの時とは雰囲気が違う。


「では、私からこの3社に対応した暗号資産アドレスと送金状況を表示します。」


若葉がそういって画面を切り替えると、よくわからない文字列と矢印が複雑な図形を描いていた。


「このように、ミキシングサービスで資金の隠匿を測っていますが、私が研究していたデミキシングの方法で、うち98%を特定しました。残りは引き続き解析中です。」


俺を含めて皆の視線が驚きに変わる。


「特定先は会社ごとに別のDEXで別銘柄に交換。その後、独自に組まれたスマートコントラクトで数万アドレス単位に分割送金されています。最終的に枝分かれした資産は、百を超える個人ウォレットへ集まります。」


山崎が眉を上げた。


「ちょちょちょ、待ってくれ!DEX?スマート……?」


「DEXは無人の暗号資産取引所、スマートコントラクトは自動送金プログラムと、今回は解して下さい。技術的な詳細を含めて報告書にまとめていますので、後でご一読を。」


一拍置いて、若葉が息を整えた。


「結論ですが、既存のマネロンサービスに加え、自作のマネロンの仕組みを用意してまで隠匿を測っています。尋常ではないほど捜査を警戒している証拠です。」


沈黙が一瞬流れ、俺が腕を組み直す。


「質問が2つあります。1つ目は、若葉部長の結果が証拠化できるのか?2つ目は結局その暗号資産っていうのは誰の持ち物になっているのか?です。」


「1つ目に関してですが、暗号資産の取引履歴は全てブロックチェーンに記録され、改ざんは不可能です。つまり暗号資産部分に関しても充分公判維持が可能です。」


若葉が言い合えると、タブレットを操作した。


「2つ目に関してです。個人ウォレットから暗号資産取引所へ送金されていますので、eKYC照会で判明しています。しかし、どれも飛ばし用のアカウントです。」


飛ばし用、つまり暗号資産取引所のアカウント売買によって手に入れたものということだ。


「この飛ばしアカウントから確定申告不要の20万以下の資金にして、複数のNPO法人口座に集約されています。もちろん寄付金名目です。」


スクリーン上の矢印が赤く変わる。


「そして、そのNPOから実員以上の口座数に給与が振り込まれている。ここまでが資金の外郭になります。」


と若葉が言い、軽く会釈をした。


この矢印「銀行 → 暗号資産 → NPO → 個人」という単純な線に、全員が息を呑んだ。


この線を疎明するために、どれだけのリソースが割かれたのか、想像に難く無いためだ。


「私から補足しますが、NPOの所在地等は、全てレンタルオフィスになっており、連絡先は電話代行になってますね。」


七瀬がNPOの情報をモニターに映し、その声が室内に響いた。


「七瀬係長の所感としては、これは犯罪収益の金庫番となりますか?それとも、実際の受益者ということになりますか?」


と、俺が問うと、七瀬は即答する。


「NPO口座に残った金の使い道を見れば明らかです。ギャンブルサイト、ダークマーケット、決済代行……管理ではなく消費されています。つまり、人の金で飯を食う受益者ゴキブリですね。」


中村が手元のメモを握りしめた。


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