表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/96〜男女比1:96の貞操逆転世界で生きる男刑事〜  作者: Pyayume
第五章「X」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/69

第45話「ニュース」

到着ゲートの照明が視界に入った瞬間、後藤が短く息を吐いた。


「……着いたな。」


フロントガラス越しに見えるターミナルのガラス壁が、反射でぼやけている。


赤いランプが濡れたアスファルトを照らし、滑走路の向こうでは、出発機の尾灯が線を引いて消えていった。


俺はスマホを取り出し、再び中村に連絡を取る。


「佐藤現着、状況はどうですか?」


『内山いまり、内山みのり、共に機内にいません。降ろされたみたいです。』


「……どういうことですか?」


『分かりません。ただ乗客を下ろせるのは航空会社か税関か、そこに上から命令を下せる省庁ですかね。』


中村とのやりとりの傍、横目で空港待合のロビーの画面のニュース映像に驚愕した。


<資源庁、男性DB3000人以上誤登録か!?〜システム改修中のミスか、それとも意図的操作か〜>


映像が流れている大型モニター前がざわついていた。


スーツ姿の客が立ち止まり、ニュースキャスターの声が響く。


「な!?」


俺は開いた口が塞がらなかった。


資源庁のデータベースが再編作業で止まるというのは知っていても、理由については通知されなかったはずだ。


事実、再編理由も御厨理事官にすら『風の噂』程度しか流れていない。


「中村主任!資源庁のニュース見ました!?」


思わず声が上ずる。


俺の声につられて、後藤もモニターを振り返った。


ロビーの客たちがざわつきがさらに大きくなる。


ニュースキャスターの声が、ガラス壁に反響して聞こえた。


<資源庁が管理する男性情報データベースにおいて、三千人前後の個人情報が誤って登録・更新された可能性があるとのことです。内部関係者によりますと、担当していたシステム企画課の職員は現在、謹慎処分を受け……>


後藤が低く息を吐いた。


「……みのりだ。」


俺は即座に中村へ問い詰めた。


「ニュースに出たシステム企画課職員が、内山みのりか裏取れますか?」


『今、山崎係長が対応中です。こちら側でもおそらくは、資源庁の権限で止めた可能性が高いという話をしてます。関係者保護を名目に。』


「確かにこのネタで資源庁が炎上した上で、謹慎してる人間が海外にトンズラなんて、上層部の首丸ごと挿げ替えられる事態だもんね……。」


後藤が後に続いた。


「中村主任、一旦切ります…続報あればすぐに下さい。」


俺はそう言って通話を切った。


<資源庁関係者によりますと、データベース改修を担当していた職員は既に自宅待機中であり、警察当——>


ニュース映像は同じ内容を何度もループ再生していた。


そんな中、再びスマホが震えた。


<内山班、間も無く現着>


素早く『了解、国際線ターミナルに来たら電話を』とだけ打って、俺は後藤たちに指示を飛ばす。


「そろそろ内山班が来ます。私たちは内山姉妹を探しましょう。」


空港ロビーでは、誰もがニュースを見上げ、ざわめきが波のように広がっている。


国の中枢であり、国力の源でもある国家資源に関するデータベースの問題は、それほどまでにインパクトの強いものだった。


「……これで、内山みのりの足止めは確定ね。」


「そうですね。資源庁権限なら、表向きは“保護”。実際は監査対象としての軟禁。」


「で、姉は一人残されたってわけね。」


俺はうなずき、再びスマホを手に取る。


「係長、内山いまりを確認したら追尾、内山班に引き継ぎをします。内山が自宅に帰るようなら、それを確認して当初の予定通り6時に捜索差押に着手させます。」


『わかった。空港はそこそこ男性もいるだろうが、目立たないようにな。』


「了解。引き継いだら本部に転進しますので。」


通話を切り、俺は短く息を整えた。


「後藤部長、森下さん。いまりを探します。私たちは防カメ確認を、直接確認は空港署の巡回員に頼みましょう。」


「了解。……流石に防カメの荒い画像は、散々兎を追いかけ回したあたしらで拾うしかないね。」


空港署の協力もあり、空港内のセキュリティセンターに入室し、カメラ映像を見せてもらう。


幸い、内山姉妹はすぐに見つかった。


防カメ映像からは、二人は旅客機から降ろされ、みのりはそのままスーツ姿の二人組に連れていかれ、いまりは一人で待合室から外に出ていた。


「兎はワンピースにカーデガンですね!珍しいです!」


「流石に海外旅行ときたら、普段のパーカーじゃないねー」


動線を追いかけると、15分前に空港内の和食レストランに入った姿を確認した。


「私、ここの親子蕎麦セット好きなんですよね。飛行機乗るたびに食べてますよ。」


「わかるわー、ここ出汁がちゃんと効いててうんまいんだよねー。」


森下と後藤の雑な会話に少し緊張が抜けた。


俺が空港署員に連絡すると「親子蕎麦セットを飲食中」という報告がきた。


その報告の後、合流した内山班に引き継ぎをし、俺たちは本部に戻ることにした。



捜査車両に乗り込み、ラジオをつけると、やはり資源庁のニュースが流れていた。


「このニュースに救われましたね」


俺はぽつりとこぼした。


「ああ、でも完全に炎上してる。ここまで来たら庁舎ごと燃えるな。」


と、それに反応する形で、運転しながら後藤もかえした。


俺はタイミングが良すぎると思いながら、本部までの少しの間、目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ