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1/96〜男女比1:96の貞操逆転世界で生きる男刑事〜  作者: Pyayume
第四章「それぞれの準備」

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第37話「空中散歩」

マイク付きのヘッドホンをしてはいるものの、ローターの音が耳の奥を叩いていた。


夜の街の光が、次々に流れていく。


機体が傾くたびに、シートベルトが腰に食い込んで息が詰まりそうになる。


隣では後藤が、何度目かの舌打ちをした。


「おい、何であんたがいんだよ!あんたの現場は執務室へやでしょうが!」


「いいじゃないですか、こんな機会ないんですから。私も乗りたかったんですよ。」


「遊びで飛んでんじゃないんだよ、これは!」


「知ってますよ。でも、屋上の監視者割らないといけないの、後藤部長もわかってますよね?」


「……チッ。だいたいあんたSランクなんだから、何かあったら責任取れないでしょ!」


「まぁそうなったら責任取るのは上司の仕事なので。山崎係長には事後承認貰うつもりですから。」


「この馬鹿!」


ヘッドセット越しでも後藤の怒りが伝わってくる。


「大丈夫です。佐藤主任は私が命に代えても救助します!」


そう言いながらヘリの操縦士が夜の川をなぞるように旋回した。


目的のビル群が見えてきた。


俺と後藤と森下は景色を確認すると、ヘリコプター内部のモニターに目を移した。


「近いです。もう少し北西方向です。」


俺の指示を聞きながら操縦士がLUXEの屋上に近づく。


「あ、今日もいますね!」


森下が指をモニターに指をさした先には、LUXEの屋上でスマホを見ている人影があった。


流石にスマホの画面までは見えないが、十分確認可能だ。


後藤がズームを上げると、背格好が確認できるレベルになった。


柵に寄り掛かった長い髪の女が膝を抱えて座り、スマホの光を覗き込んでいる。


髪の毛は中途半端に金髪だった。


「あいつプリン、です」


森下が言った。


「今日はたまたまプリンが監視してるだけかもしれないが、新しい顔じゃないね」


後藤が頷き、期待外れだとも言いたげだ。


そんな時、夜の街で少し目立つ白のパーカーで。フードを被った人間がLUXEから出てきた。


「まってください!下、出口から兎です!」


「あの歩き方、確かに兎に見える」


室内に緊張が走り、俺の心拍も早くなるが、不思議と恐怖はなかった。


むしろ、最近書類仕事ばかりだったためか、久々に血が巡る感じがする。


「カメラ固定、座標マークしました。」


オペレーターの声がヘッドホンから響く。


「撮影継続。森下、地上班に送れ」


後藤が淡々と指示を出す。


さっきまで怒っていた顔が、もう現場のプロの顔に戻っていた。


私はふと、窓の外を見た。暗闇の中で、街が息をしているようだった。


下では、誰かの生活が続いている。


その屋上で、ひとりの元SPが、別の誰かの人生を裏で操作している。


「後藤部長」


「なんだ」


「終わったら、一杯行きません?」


「バカ、まだ始まってないよ。それに、男から酒なんて誘うもんじゃないよ!好色だと思われるよ!」


そう言いながらも、笑った後藤の横顔が、いつになく穏やかに見えた。


機体が再び旋回し、モニターは確実に兎をとらえている。


今日で突き止めてやると、話さなくても全員が思っていた。

ヘリコプターに乗ったことが無い故に短めになってしまいました。


あの、プルルルルっていう音は、「ヘリコプターのローターの音」と言うらしいですね。

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