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1/96〜男女比1:96の貞操逆転世界で生きる男刑事〜  作者: Pyayume
第四章「それぞれの準備」

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第35話「踏み絵」

俺は、係長の指示で捜索差押許可状の請求準備をしていた。


捜索差押許可状や逮捕状等の令状とは、捜査機関に対して、裁判官が方法や範囲を定めて、捜査を行うことを認める許可状だ。


つまり、裁判官に対してどのような違反かということだけでなく、強制であることの必要性や、目的が何かを説明する必要がある。


これまで散り散りになっていた情報を分かりやすい報告書にし、編綴するため、そこそこのリソースは割かねばならない。


作業に夢中になっていて、気づけばそろそろ日付が変わるころになっていた。


扉がガタガタなり始め、後藤と森下が入ってきた。


よほど急いでたのか、何やら息が上がっている。


「遅くまでお疲れ様です。兎の追尾はどうでした?」


労いの言葉をかけつつ、後藤に尋ねる。


「打ち切ったよ。やばいことが2つあってね」


後藤はそう言いながら何やら考え込んでしまった。


森下はオロオロしているばかりだ。


「やばいことが2つって、途中でガソリンでも入れてきたんですか?」


「入ってねぇよ。こっちは現場で冷や汗もんだったんだ。」


後藤は机の端に腰を下ろし、煙草を取り出そうとして、ここが庁舎内だと思い出したように舌打ちした。


森下は依然として所在なげに立っている。


「まずひとつ。中村が橋本陽太と裏引きしてた。」


「……裏引き?」


「あの二人、夜のコンビニで鉢合わせたんだけど、どう見ても偶然には見えなかった。中村がLUXE近くのコンビニにきたと思ったら、次に橋本がコンビニに入っていって、二人で出てきた。向かった先はLUXEとは逆方向だったよ。」


俺は手を止め、ゆっくり顔を上げた。


「中村主任が橋本と直接接触ですか。……なるほど。それがひとつ目のやばいことですか。」


「そう。もうひとつは、多分LUXEに張り込みに気付かれた。」


後藤は声を落とした。


「LUXEの屋上、あんなとこ深夜に人がいるはずないんだよ。でも、23時半ごろ、金属柵の影に人影と赤い小さいランプ、それにスマホの明かりが見えた。……何にせよ、張り込みを見られた可能性が高い。」


森下が小さくうなずいた。


「わわわ、私も!何かの人影とスマホの明かりっぽいのは見えました!」


「それは確かですか?」


俺は眉を上げる。


「車の停車位置はLUXEがある小路の入り口ですよね?そんなにはっきり見えるものですか?」


後藤は腕を組み、天井を睨んだ。


「最近のスマホ舐めんなよ?そこらのコンデジよりくっきりしてるんだから。だから、今日の張り込みは打ち切り!中村の行動も不明!屋上には誰かがいる!以上!!」


荒々しい後藤の主張は、静かな部屋にこだました。


そして、俺は一呼吸置いてから口を開いた。


「……まず、中村主任のことは、心配しなくて大丈夫です。」


「は?あんた何言って――」


「実は中村主任、週2で通ってるのに、スタンダードコースの60分にしか入らなくて怪しまれてたんですよ。それ以上のコースは警察官としての倫理が勝ったんでしょうね。」


通常、店に通うたびに欲望がエスカレートするはずなのに、中村は理性や秩序を重んじるが余り、最低限の注文しかできなかった。


それで、データ無しカードを持参し、中で何かを嗅ぎ回る奴と向こうに意識されてしまったのだろう。


「そんな時、橋本から裏引きの誘いがあったそうです。おそらくLUXE側の踏み絵でしょう。あらゆる法規や判例から、今回のケースは裏引きに応じても違法捜査にならないと判断しました。」


後藤は呆れたように息を吐いた。


「……あんた、頭おかしいんじゃないの!?違法捜査じゃなくても、モラルは皆無でしょ。しかも中村に橋本を性搾取させてんだよ?どんな人生送ったらそんなこと出来んだよ!」


「承知してます。ただ、中村主任は迷わず決めていました。LUXEを討つためにはそれしかないと。それに、LUXEの外で橋本から情報が取れるのは大きいと思います。」


森下が不安げに口を開いた。


「でも、もし店側に全てバレてたら……その……危なくないですか?裏引きに乗って、向かった先で監禁とかされる可能性もあるんじゃないですか?」


「その通りです。」と、俺は頷いた。



その返事を受け、「あぁ!?」と、一際大きい声を後藤が上げた。

調べると、裏引きでの検挙例は売春防止法や詐欺が多いみたいですね。

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