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1/96〜男女比1:96の貞操逆転世界で生きる男刑事〜  作者: Pyayume
第三章「潜入」

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第29話「三週間」

山崎は深く息を吐き、モニターに映るLUXEの地図を見据えた。


「……Xデーまで三週間ある。準備を分担しよう。」


その声に、室内の空気がわずかに緊張を帯びた。

誰もが理解している。


この三週間は待ち時間ではない、成否を分ける時間だ。


「まず、私が人員の確保を進める。」


山崎が静かに言った。


「理事官を捕まえ次第、今回の件を詳らかにする。知り合いづてに各所属の根回しも並行しておこう。情報漏洩を防ぐため、正規の要請は前日の朝に出す。現場経験と機動力のある人間を優先的に回してもらうよう働きかける。」


「お願いします。」


俺は頷き、次に口を開いた。


「私は人員確保の補助に入ります。必要な部署への文書処理、説明資料は私の方でやります。それと、当日のデータ保全に使う要員とツールの準備も進めます。」


「データ保全要員?」と後藤が眉を上げる。


「ええ。LUXEのシステム構造は未知数です。内部データの保全は現場で出たとこ勝負になるでしょう。臨機応変に対応出来るようなスキルを持つ人材が必要不可欠です。」


「なるほどな。」と後藤が頷いた。


「そういえば、前に話してた警大時代の技官の知り合い。今、警視庁に解析屋として出向してるんですよ。彼女の力を借りられれば成功率は上がるはずです。本人への根回しはしておきます。上との調整は山崎係長、お願いします。」


山崎が小さく感嘆の息を漏らす。


「……頼もしいな。じゃあ佐藤主任は技術と支援、それに人員調整の補助だな。」


「了解です。」


次に、中村が手を上げた。


「私と後藤部長は、LUXEの従業員の特定や、行動パターンの割り出しをします。営業時間、出入りする従業員、搬入の時間、ゴミの収集タイミング等、全部記録します。」


「係長は張り込み要員の確保もよろしく。二交代制にしたいんで、体力あって口の固いのをよろしくー。」


後藤が補足する。


「張り込みは顔を覚えられたら終わり。私はもう顔割れてますから直接の張り込みは避け、周辺の防犯カメラ映像を回収して、出入りするスタッフの特徴をデータベース化しておきます。」


中村が続けた。


「それと、LUXEが出すゴミ収集所にも監視を。内部で何か“処理”しているなら、廃棄物にも有力な痕跡がいくつも出るはずです。」


「……なるほどな。もう一歩欲しいな。…中村主任、週2回くらいの頻度であの店の客として通ってくれ。内部の情報は新鮮なほどいい。あ、金は経費でな。」


山崎が腕を組みながら言うと、中村は顔を真っ赤にして「わ、わかりました。」と照れながら承諾した。


「よし、じゃあ現場は二人に任せよう。報告は随時メッセージで。情報整理は共有クラウドで手が空いた者からどんどん更新しよう。進捗も共有していこう。」


「「「了解。」」」


短い返事とともに、静寂が落ちた。


だがその沈黙は、恐れではなく士気の表れだった。


後藤が缶コーヒーを開け、ひと口すすって呟く。


「三週間って、思ったより短い。まあ、やれるけど。」


「ええ。でも油断は禁物です。」


俺はモニターのLUXEの文字を見つめた。


「この三週間で、全てが決まる。」


山崎が小さく頷き、端末を閉じる。


「よし。明日からそれぞれ動こう。しばらく休みは取れないが、我慢してくれ。全員での進捗確認は一週間後に設定する。」


中村がまっすぐ前を向いた。


「了解です。」


「あ、私は電話を一本かけてから帰るから、気にせず先に上がってくれ」


山崎の声に呼応するように、俺たちはそれぞれの端末を閉じた。



3週間後に、それぞれの覚悟が同じ一点へと収束していくことを信じて。

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