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1/96〜男女比1:96の貞操逆転世界で生きる男刑事〜  作者: Pyayume
第三章「潜入」

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第28話「作戦会議」

山崎は俺の目をまっすぐ見て口を開いた。


「Xデーの前日と翌日にメンタル健診を受けること。少しでも異常があれば、今後この手の捜査は二度とさせない。」


俺は思った以上に緩い条件に救われた気持ちになった。


「異論ありません。」


俺の声を受け、中村がタブレットを操作し始めた。


「では、作戦を立てましょう。」


中村の声が、少し震えているのがわかったが、その震えは恐怖ではなく決意の表れだと感じた。


壁のモニターに、LUXEのビル外観と周辺地図を映し出す。


俺はそこに加えて、先ほど探しておいたテナント募集時のWebページのアーカイブを表示した。


中村が俺の意図を汲み、赤マーカーで監視カメラ、扉、壁等を描き込み、フロアの全体像を浮かび上がらせた。


「LUXEが入っているビル及びLUXE内部は今丸をつけた位置に監視用カメラがあります。私が確認できたフロアの構成はこれです。確認はできなかったけど、受付と太陽は別のところから来たから恐らくここが男性用スペースだと思います。」


そう言って中村は間取りに印をつけた。


「中村主任、間取り図の正確性は?」


俺の問いに、中村は少し考えるように顎に指を当てた。


「五分五分ですね。私が入ったのは受付から見える範囲と施術室までの通路だけです。ただ、体感としてドアに対しての壁の厚みが不自然でした。防音目的というよりは、裏側に隠し部屋があるような。」


「なるほど。つまり、男性が拘束・管理されているスペースはその背後の区画にある可能性が高いと。」


中村の説明に、山崎が納得し頷いていた。


確かに、悪事を全面にやっているなら隠し部屋があるというのは妥当な気がする。


「なら、私が電話で知らせます。想定通り隠し部屋に通されたら1コール、把握済みの場所なら2コール、別フロアなら3コールではどうでしょう。」


俺の提案に山崎が頷いた。


「わたった、それで行こう。」


「では、そのコールの後、我々は踏み込むので佐藤主任はすぐに保護通報をしてください。」


中村の声が少しだけ強くなり、拳を握りしめたまま続ける。


「他の行政機関がくるまで私たちで出来るだけ証拠品を押収しましょう。あとはスタッフ、客や男性がどのくらい居るかなよって臨機応変に…」


「圧倒的に人が足りないでしょ」


中村の話を遮り、黙っていた後藤が吐き捨てるように呟いた。


「人を抑えるヤツ、モノを押さえるヤツ、判断するヤツ、外部との対応をするヤツ、4人じゃとても無理」


「後藤部長の言うことは最もだ。その辺りどうしようか。」


後藤の後に続いた山崎が、そう言いながら俺の方に視線を投げかけた。


「それは係長の仕事ですよ。理事官に話を通して他の係から人を借りるのか、管轄署に協力を仰ぐのか。人手は確保して下さい。」


俺は冷たく言い放った。


山崎は警部として少し頼りなさすぎるため、このくらいは言っていいだろう。


「出来れば私は男性の保護及び聴取を担当したいので、現場でデータ保全が出来る人間と、ある程度取り調べの経験がある人間は確保してください。」


山崎は少し間を置いて、深く息を吐いた。


「わかった。いろいろ伝を頼ってみることにするよ。私の顔程度がどこまで通じるか分からんが、必ず人員は確保する。これは私の責任だな。」


そう言いながらも、山崎は自信なさげに俯いた。


俺は、その姿に少し気まずさを感じ、空気が重くなる前に山崎にこう言った。


「もし要員を確保するのに私が必要なら協力しますので言ってください。懇親会でお酌するくらいなら訳ないので。」


助け舟を出したので多少喜ばれると思ったが、山崎の反応は意外なものだった。


「な、なな、何を言ってるんだ! そんなの性接待じゃないか!」


一瞬、空気が和んだように思えたのだが、山崎が真っ赤になって叫んだ。


その反応に合わせて中村と後藤も顔を赤らめ、お互いに顔を見合わせている。


俺は小さくため息をついた。



やはり、記憶があるとはいえ、社会生活に関しての常識にはまだ慣れそうにない。

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