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1/96〜男女比1:96の貞操逆転世界で生きる男刑事〜  作者: Pyayume
第三章「潜 入」

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第22話「中村英子:潜入①」

いよいよ潜入編です。

しばらく、捜査員視点となりますので、ご承知おきください。

夕刻。


陽が沈みきる前の空が、都市の硝子に反射して鈍い金色を帯びている。


車のエンジンが静かに止まり、後藤が振り返った。


「ついたよ。……中村主任大丈夫?」


私はシートベルトを外し、短く頷いた。


「ええ。心配ありがとう。いってくるわ。」


短い沈黙のあと、山崎係長が小さく息を吐いた。


「やばいと思ったら即ボタンで知らせること。気づかれる可能性を考えて店舗にはいったら通話は無し。いいわね。」


「了解。……行ってきます。」


ドアが閉まる音が、私の耳には妙に乾いて響いた。



私は、黒いコートの襟を立て、歩道を歩き出す。


これまで内偵なんて何回もやってきたけど、違法風俗店、ましてやここまで監視の目がある状況は初めて。


LUXEは、地図上では準合法セクター『リラクゼーション・サロン』と記されている。


後藤が前に撮影した通り、ビルの入り口から監視カメラ。


上階に並ぶネオンサインの灯りでうまく隠しているのが、余計に周囲への警戒心を強調していた。


入口に料金表付きの看板もなければ、呼び込みもいない。


営業時間表示も、どこにもなかった。


「……ここが、準合法を装った違法風俗。」


胸の奥で呟くと、自分の喉が乾きが強くなった気がした。


コートの内ポケットに忍ばせた承認票が、汗ばんだ指先に貼りついた。


無機質なエレベーターに乗り、4階で降りると一つのドアに小さなインターホンがあった。


入口を移すように監視カメラが2台あり、私の姿と顔を映しているようだった。


インターホンを押すと、声は何も帰ってこなかった。


「すみません。承認票とカードを持っているのですが…」


震えそうな声をしっかり張って、私は持っていた封筒(一つしかない武器)をインターホンに向けた。


『ご予約はありますでしょうか?』


無機質な声が帰ってきた。


「すみません、予約はしてなくて……今日は難しいでしょうか?」


一瞬の静寂の後、電子錠のロック音が鳴った。


『どうぞ、お入りください。』



私が中に入ると、空気が一変した。


外の暗く冷たい雰囲気が嘘のように、温度と湿度が一定に保たれている。


甘い花の香りが、鼻の奥を突き刺した。


壁は白く一見すると医療施設のようだが、それは清潔感があって良い雰囲気だった。


「ようこそ、LUXEへ。」


受付の女は、白衣のような制服を着ていたが、名前などの表記は無かった。


顔は柔らかく笑っているが、目だけが笑っておらず、仮面のように整った微笑。


受付の机の上には、精巧にできた20㎝程のバラの花のガラス細工が輝いていた。


「綺麗なガラス細工ですね。」


と私が言うと、女は「オーナーが誰かから頂いたようで、大切にされてるんですよ。」と返してきた。


私が微笑みで返すと、女が私に手を差し出した。


「承認票とカードを拝見してもよろしいですか?」


私は封筒を差し出すと、受付の女が機械にカードを通す。


小さな電子音が鳴り、女の顔が一瞬曇ったが、私に向き直ると何事もなかったかのように女は頷いた。


「確認いたしました。こちらの不手際でカードにエラーがあったようです。申し訳ありません。」


そう言いながらも女からは謝罪の意は見えなかった。


「ただ、カード情報が確認できませんでしたので、本日はスタンダードコースのみのご案内となりますので、ご了承ください。」


「それは、仕方ないですね。わかりました。」


私の肯定を受け取った女が、奥の扉が開いた。


「それではこちらへどうぞ。」


案内されたのは2畳ほどの待合スペースだった。


ウォーターサーバーとソファが3脚あるだけの部屋だ。


ソファに座ると、先ほどの女が入ってきた。


「初めてのお客様ですね。簡単にスタンダードコースのご説明を致します。」


そういって見せられたのは料金表だった。



===コースのご案内===

※初回は入会金5,000円いただきます。

※指名料金はセラピストランク毎変わります。


【スタンダードコース】

(ヘッド・フェイスセラピー、ボディケア、フットリフレクソロジー、※キス、※オイルマッサージ)

お試し60分:30,000円 ※印メニューは含まれておりません

基本の90分:50,000円

お勧め120分:68,000円

※延長は20分15,000円


【ラグジュアリコース】

(スタンダードに加え、洗体、ハンドジョブ、リップサービスが付きます。一部の男の子は有料オプションがあります。)

100分:100,000円

130分:130,000円

150分:150,000円


【スペシャルコース】

(ラグジュアリコースに加え、Syringeサービス)

※ご案内はカード購入者に限ります

===不明点はスタッフまで===



私は、渡された料金表を見ながら一瞬だけ目を細めた。


これは、ここに本物の男がいる何よりの証拠だ。


通常のセクターでは絶対に出せない単語が、事も惜し気に記載されている。


「初回のお客様ですので、スタンダードの60分、もしくは90分で選んでいただくようお願いいたします。」


受付の女の声は穏やかだが、奥底に妙な圧がある。


間違いなく断れば疑われる。


かといって、深く入れば後戻りできない。


私は、渡された料金表を見ながら一瞬だけ目を細めた。


「……ちょっとお値段に驚いてしまって……60分でお願いできますか?」


「かしこまりました。では担当のセラピストをこの中から選んでいただけますか。」


そう言って女は3枚の写真を提示してきた。


その中の1枚を見て、私は息をのんだ。



間違いない、石田翔一だ。

若干修正しました。

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