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1/96〜男女比1:96の貞操逆転世界で生きる男刑事〜  作者: Pyayume
第十章「本 星」

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第149話「糾合」

6月8日、午後0時18分。


いつも通り、捜査本部の部屋は、昼休み返上で張りつめていた。


山崎と中村は自席でおにぎりを齧りながら作業をし、後藤と森下は他の裏付け班とともに外に出ていた。


横峯は大原の取調べのため、今日はまだ姿を見ていない。


水越や若葉を始めとした解析班は、ずっと画面に張り付いていて、声を掛けられるような状態ではなかった。



「……ちょっといいですか。」


これまで無言で作業をしていた水越の声が聞こえた。


俺や山崎が水越のデスク周りに集まると、そこにはハードディスクが散乱し、3枚あるモニター画面はどれもウィンドウが敷き詰められていた。


その一つ一つが、倉橋のスマホ、LUXEで押さえたPC、内山みのりの遺志で残されたデータ、甘南備で押収された店舗用PC、資源庁の内部ログ等を表しているのだろう。


別々に集められたはずのデータが、水越の画面の中で重なり始める息吹を感じさせた。


「では、横串でざっくりと行った解析結果を説明します。」


そう言って水越画面に表示されたのは、倉橋のアカウント履歴だった。


<

体外受精DB 登録履歴

登録者ID:KURAHASHI_K

最終更新:2025-03-28

>


隣に、<LUXE_customers_pre_modification.xlsx>という名前のファイルが並ぶ。


「この倉橋のIDで登録された体外受精データと、LUXEの顧客リスト、これは内山みのりが残した生データの方ですが、名寄せできます」


そう言って、水越が2つのデータの比較結果を表示させた。


「……確かに、繋がるな」


山崎が、低く呟いた。


顧客の職業欄を見ると、どれも社会の上層で生きているが、特に体外受精の結果が振るわなかった女性たちだと分かる。


「この面子を見ると、資源庁が『恩を売っていた』と見るのが自然ですね」


俺の言葉は、誰も否定しなかった。


次に、水越は甘南備のPCログと、資源庁における祖母井の通信ログを呼び出した。


共産圏の医療法人名、弁天島経由の受け渡し手順、暗号資産のウォレットアドレスが並ぶ。


「これは、薬の供給ルートです。やはり大原は、独自に動いていたわけではないです。」


「ちゃんと、輸入や使用の指示者が特定できたってことですか?」


中村の疑問に、水越は頷いた。


「はい。頻度も、量も、タイミングも祖母井の通信が発生するタイミングや、データ送信パケット量が、甘南備内に残っていた輸入判断等のタイミングと被ります。」


水越は、次のウィンドウを前面に出した。


「さらに、同じタイミングで祖母井が福田に承認を求めたり、報告をまとめていたチャットの履歴もありました。チャット自体は削除されてますが、直近のLUXE絡みはサルベージできました。」


水越が表示した画面には、福田から祖母井の指示とも呼べる内容が踊る。


皆がその内容を読んでいると、タイミングを見計らって水越が口を開く。


「それから、もう一つ。ずっと引っかかっていたものがあります」


画面に表示されたのは、暗号資産のトランザクション履歴だった。


「……これって、内山の家から見つかった500ETHが入ったアドレスのものですか?」


中村が、思わず声を上げる。


「ええ。これまで、出所不明だった資金です」


水越の答えに、山崎が腕を組んだ。


「確かに、内山みのりの家から出てきたはいいものの、結局解決していなかったな。」


水越は頷き、近くにいた若葉を呼んで画面を拡大した。


「……では、私から少し説明しますと、このアドレス、マルチシグ対応……つまり、送金には複数署名が必要なアドレスです。」


そう言って若葉が画面の一部を指さした。


「ここを見ていただくと分かる通り、「2-of-3」と書いてありますので、3名の決裁権者のうち最低2名の承認がないと、送金できないものになっています。」


若葉は、淡々と続ける。


「これ、なんと資源庁のログから祖母井が署名鍵の1つを使っていたことが分かりました。そして…もう1つが……福田弥生です。」


の名前が出た瞬間、空気が、はっきりと変わった。


そ捜査本部という空間そのものが、一段深く沈んだような感覚に陥る。


「……一連の犯罪事業の金庫番を2人でやってた、ってことか。」


山崎の低い声が、室内に落ちる。


「はい。しかも、このアドレスへの入金元何ですけど……これ見てください。」


若葉が画面を切り替えると、ダークウェブフォーラムでの取引ログ、オークションID、トランザクションの送金タイミング等が次々に表示された。


「……このように、男性売買オークションの決済と、完全に一致します。」


つまり、男性を売った金が入り、それを資金移動するときは2人が関与していたことになる。


「これは……もはや福田は運営者……ですね。」


俺は、喉の奥が乾くのを感じながら言った。


「そうだな。福田はいくらで売れたか、いつ売れたか、誰が買ったか、全部、把握できる立場にいた。それに、誰に媚びを売るかも福田の思いのまま……だ。」


山崎が俺の言葉に同意した。


そして、若葉は、最後に一つ付け加えた。


「ちなみに、祖母井方で見つかった薬の発注情報と、もう一つのアドレスで決済代行サービスに送金されたタイミングと金額が一致していました。」


山崎が、ゆっくりと顔を上げた。


「……それなら、その後に薬の話を大原と詰めてた記録は?」


水越は、即答した。


「祖母井から福田に伺いを立てていました。その通信ログも残ってます。」


室内が、静まり返る。


「……福田は、金と物流と判断、今回の全てを握ってたということです。」


俺は、はっきりと理解した。


「客観資料も全てこの構造を示しています。」



だが同時に、俺の中で別の疑問が浮かぶ。


資源庁という組織で、この規模の犯罪を、官僚が本当に主導できるのか。


その答えが、まだ表に出ていないだけなのかもしれなかった。

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