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1/96〜男女比1:96の貞操逆転世界で生きる男刑事〜  作者: Pyayume
第十章「本 星」

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第146話「ダークウェブフォーラム」

水越がノートPCを操作すると、画面が一瞬暗転した。


次に映し出されたのは、これまで見てきたどの画面とも違う、黒一色を基調としたUIだった。


背景はほぼ完全な黒。文字は淡い灰色と緑、ところどころに赤が混じる。


俺には、意図的に読みづらく設計されたような画面に見えた。


「……これ、何の画面なの?」


後藤が疑問を呟く。


「Tor経由でアクセスされていたダークウェブのフォーラムです。PC内に、管理者用のキャッシュと操作ログが残っていました。」


水越が淡々と答えた。


画面左には、スレッド一覧が並んでいる。だが、タイトルはどれも意味を持たない単語の羅列だった。


<LOT-32>


<BIO-MATERIAL>


<WHITE ROOM>


<RE:Harvest>


スレッドの下に、妙に婉曲な単語が並ぶ。


「……self、milk、implant?…これ全部、隠語ですよ!selfは男性本人、milkは精液、implantは体外受精……ここでは、人間を商品として扱うための言葉しか使われていません。」


声に出しながら中村が眉をひそめた。


水越はそれを聞きながら、右側に表示されていたパネルを拡大した。


そこには、管理者操作ログが時系列で表示されていた。


<

ADMIN_LOGIN user=Cannabinoid

POST_EDIT thread=LOT-32

LOT_UPDATE Grade=C → C

LOT_UPDATE Grade=C → B

>


「……Cannabinoidって名前が表示されていますね。」


俺が口にすると、水越は頷いた。


「フォーラム管理者のハンドルネームです。大原のPCから、この管理操作が行われていました。」


「Cannabinoid……甘南備、か……それとも大麻か…」


山崎が小さく呟いたことを合図に、水越は次のログを表示する。


<

ADMIN_NOTICE_POSTED

Title: [AUCTION NOTICE]

>


そのまま投稿をクリックすると本文が開き、黒い画面に、淡々とした文章が浮かび上がる。


<

==AUCTION NOTICE==

今回のオークションでは、通常ロットに加え、何と、Grade-B男性の出品もございます。

Premium Lotとしてご案内いたします。

>


「……ランクBってまさか、石田!?」


後藤の声が、思わず大きくなった。


「そうでしょうね。我々が把握しているランク改ざん候補者もランクCまででしたし、ランクBは国家管理上も準重要資源ですから。」


俺はそう言って画面を見つめながら、嫌な予感を噛みしめていた。


「……これが大原のPCの履歴から見えるってことは、……大原は男性DBに直接触れられる人間っていうことに…?」


誰もが、次々に明らかになる資源庁の闇に、資源庁そのものが主導している犯罪であることに戦慄した。


水越はさらに、<Logistics_Standard_v3.pdf>という無機質なタイトルのファイルを開いた。


「これは……物流手順書のようなものでした。」


そう言って水越がページを送ると、淡々とした箇条書きが続く。


<

・鎮静剤投与量

・昏睡維持時間(最大36時間)

・輸送時の注意事項

・島での最終処理を行う場合

>


「……島っていうのは弁天島でしょうね。」


俺が言うと、水越はページ下部を指した。


「その通りだよ。はい、ここです」


そこには、短い一文があった。


<調教不可個体は弁天島施設に搬送後、最終教育を実施すること。>


「人間を壊す工程を、教育、ってそう呼んでるのが一番気持ち悪いね。」


後藤がぼそりと呟いた。


「……やっぱり、弁天島は終点か。」


そう言いながら、山崎が、ゆっくりと息を吐いた。


「はい。しかも、ここに記載されている工程は、一時的な保管や医療処置の範囲を完全に超えています。」


山崎の表情が一層固くなった。


「……これがあれば、弁天島をもう一度叩けるな。人身売買オークション後の廃棄拠点。違法薬物の使用。監禁・輸送の実態。資源庁の闇の部分も含めて、もう一度弁天島に行く必要がある。」


山崎の言葉を受け、俺も心が一層引き締まった。


「……はい、望月によってもう蛻の空かもしれませんが、行かざるを得ないでしょう。」


水越は、画面を閉じようとして、ふと手を止めた。


「……もう一つだけ、確認しておいてください。」


そう言って別のタブを開き、表示されたのはフォーラムの管理用ディレクトリ構造だった。


スレッドでも、投稿でもなく、フォーラム全体を裏から支える、管理者専用の領域。


そこに、いくつかのフォルダ名が並んでいた。


<

auction_rules

payout_schedule

operator_notes

>


そして、その中に<handlers_list.xlsx>というファイルがあった。


「……ハンドラリストですか?」


中村の声を受けて、水越が答える。


「出品者や運営担当者の管理用リストです。ただし……この中身は空でした。このオークションを動かしている人間がほぼ確定するこのリストが、です。」


室内の空気が、一段重くなった。


「……消されたものは仕方ない。今は全容解明に向けて、出来ることをするまでだ。」


山崎が、低く言った。


「三度、弁天島ですね。今度は捜索差押許可状付きで、行きましょう。」


俺の声に皆が静かに頷いた時、山崎の卓上の電話が鳴った。



「はい、特務捜査の山崎です……あ!お疲れ様です。………はい、……わかりました。……えぇ、そちらも……はい、ありがとうございます。失礼します。」


山崎が受話器を置き、少し笑みを浮かべて皆の方を振り返った。


「今連絡が来た!…祖母井も大原も闇バイト達も、全員勾留ついたぞ!さらに、資源庁から証拠品に対する準抗告も退けられた!……これで憂いはない!引き続き頑張ろう!」

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