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1/96〜男女比1:96の貞操逆転世界で生きる男刑事〜  作者: Pyayume
第十章「本 星」

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第145話「PIN」

「これは、何ですか?」


俺は思わず水越に尋ねた。


「祖母井方で押さえたスマホの解析結果です。」


「それって、データほぼ何も無かった話じゃなかった?」


これまで黙っていた後藤が突っ込んだ。


「実は今表示しているのは、このスマホのeSIMのプロファイル一覧なんですよ。」


「……電話番号、多くないか?」


山崎が眉をひそめる。


「8つあります。登録されているだけで、通常使えるのは2回線までですけど。」


一覧には、通信事業者がばらばらな番号が並んでいた。


「ここまでeSIMに登録しているのは異常です。しかも契約的には全部生きてます。」


水越は淡々と続ける。


「で、そのうちの一つ海外の登録番号がありまして、この番号のラベル部分を見て下さい。」


水越が一つのプロファイルを選択する。


<

Profile Label : BLUE-PIN

MSISDN : +86xxxxxxxx

Status : Active

>


「……ラベルってかいてあるぞ?」


画面を見ていた山崎が疑問を口にし、水越はそれに頷いた。


「ええ。eSIMのプロファイル名は、基本的に利用者が自由につけられます。」


「BLUEのPIN、…なんだろうね。」


横に居た後藤が小さく呟いたが、水越は答えず、別のウィンドウを開いた。


表示されたのは、大原麻子の手荷物から押収したノートPCの写真だった。


「このノートPC…大原の手荷物にあったものですが、BitLockerでフルディスク暗号化されていました。そのため、複写するには起動時のPIN入力が必要でした。」


画面が切り替わりPIN入力のスクリーンショットに切り替わった。


「PINそのものは桁数も任意に決められるので、なかなか特定するまで時間がかかるんですが……このPCで使われていたPINが…」


水越は入力履歴の一行を指した。


「このeSIMの電話番号、下8桁でした。」


一瞬、部屋の空気が止まった。


「……ん?おかしくないか?祖母井のスマホに登録していた電話番号が、大原のPCを開けるためのPINコードってことか?」


山崎があからさまに混乱している声で言った。


「ええ、その通りです。まぁ、PINを電話番号にするというのはよくある手法ですし、ラベルにPINとまで書いてあるので不思議はないですけど。」


「……あ、いや、そういうことじゃなくてな。」


水越の回答に山崎が困惑している。


「あ、そういうことですか。PINはパスコードを指していることは直ぐに分かったんです。後、LUXEでは桜木真冬がwinterって名前でしたから、その命名規則を思い出し、BLUEは青、青はAO、と言う流れでこれは大原のイニシャルと仮定しました。」


水越がそう言いながらキーボードを叩き、画面に<BLUE→青→AO→AsakoOohara>と表示された。


「いや、そういうことでもなくて!」


俺は、水越と山崎の噛み合わない会話に少し笑いながら、助け舟を出す。


「係長の言いたいことは、『祖母井が管理していた電話番号を、大原がPINとして使っていた』こと、しかも『祖母井も大原のPCのPINと認識していた』ということで、祖母井と大原の繋がりが見えたということです。」


「そうそう!だから、他に繋がりが見えれば祖母井の再逮捕や、他に関与している資源庁職員が大原から導けるかもしれないと思ったんだ!」


俺の言葉に山崎が頷いた。


「……で、その無事開くことができた大原のPCには何か目ぼしいデータはあったんでしょうか。」


静かに尋ねた中村に対し、水越は少しだけ表情を引き締めて頷いた。


「ありますよ。ただし、まだ全量の解析は終わっていません。」


水越はそう前置きして、ノートPCの画面を操作した。


表示されたのは、メールクライアントの一覧だった。


「これは……PCのローカルに残っていたメールです。クラウド同期は切られていましたが、送受信の痕跡は消えていません。」


差出人の一覧が並び、その中の一つに、見覚えのある名前があった。


「……また福田、か。」


山崎が低く呟く。


「はい。資源庁の業務用アカウントです。内容も、かなり直接的でした。」


そう言いながら、水越が<件名:弁天島>と題されたメールを開いた。


メール本文には、簡潔な指示だけが残っていた。


<

資源庁に警視庁がガサ。至急倉橋と島に向かうこと。現地にいる望月と共に全て処理すること。

>


「……まんま、証拠隠滅の命令じゃん。だもん、大原が現場から飛ぶわけだね。」


後藤が吐き捨てるように言った。


「そうだな、メールの送信タイミングも資源庁のガサ後か。」


「こういうものが残っていても、PCのデータ見れるはずがない。そう思って大原は取調べでも余裕の態度だったのかもしれません。」


俺がそう言うと、誰も否定しなかった。


「…このメールで福田の身柄取れないの?」


後藤が尋ねる。


「これだけじゃかなり厳しいな。証拠隠滅等は、故意に他者の刑事事件に対する証拠の毀損や偽造に対して適用されるもの。つまり『福田が犯罪の証拠が島にあることを認知していること』、『その犯罪に対して自分が関与していないこと』が必要だ。」


確かに、現時点で福田は監禁の共謀共同正犯の可能性や、薬機法の間接正犯の可能性があり、証拠隠滅がすぐに適用可能か判断がつかない。


「資源庁の一部の人間で一連の事案を計画していたとしたら、福田は直接実行行為をしていなくても事前共謀には絶対参加しているでしょうから、共謀共同正犯の可能性がありますよね。」


中村が山崎の言葉を補足した。


「薬機法関連であれば、実際に情の知らない者にやらせたという間接正犯ともいえる可能性もありますし、現時点で福田を直接追及は避けるべきかもしれません。」


俺も中村の言葉を補足した。


「じゃあ、どうするっての!?もう祖母井がこれだけ関与している証拠があるんだから、福田が糸を引いているのは間違いないでしょ!」


後藤の口調が荒くなったが、誰も言葉を返さず、またしばらく沈黙が落ちた。



その沈黙を破ったのは、水越だった。


「このPCから出てきたのは、今見て頂いたメールだけではありません。」


水越は画面を閉じたまま、こちらを見た。


全員の視線が、彼女に集まる。


「大原は、ただ資源庁の命令を受けて動いただけではないかもしれません。」


「どういう意味だ。」


山崎が低く尋ねる。


「まだ整理できていませんが、大原は思いのほか、中側の人間かもしれません。」


俺は、ゆっくりと口を開く。


「つまり、福田を追うことを考える前に、まず大原が何者かを特定する必要がある。そういうことですね。」



俺の言葉に水越は小さく頷き、そして、再度画面を切り替えた。

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