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1/96〜男女比1:96の貞操逆転世界で生きる男刑事〜  作者: Pyayume
第二章「二転三転」

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第15話「朝の報告会」

2日後の午前九時、特務捜査係の朝会が始まった。


山崎は手元の端末を閉じ、短く息をついた。


「みんなおはよう、……さて、それぞれ報告をもらおうか。」


部屋には重い空気が流れていたので、まず俺が先に口を開いた。


「石田のランク降格の件ですが、病院への直当たりはまだ避けようと思い、生殖特捜に詳細の提出を試みましたが、有効な記録はほとんど残っていませんでした。」


「補足ですが、国立男性総合病院は生殖庁の影響力が強いので、そこでの改ざんの可能性を考えてのことです。」


俺の乾いた声のあと、中村が説明を続けた。


「なお、降格理由は変わらず『精子含有量不足』。しかし、提出されている診断書が一枚だけで、医師名の欄が“印字”でした。医師の直筆署名がありません。」


「偽造か、もしくは職員の名義借用……の可能性か。」


山崎の表情が少し曇ったが、後藤が次の報告を始めた。


「では、行方不明男性の情報精査の結果ですが、共通点は三つでした。」


タブレットを操作し、スクリーンに一覧を映し出す。


「まず全員年齢が近く二十代前半から三十代前半。次に、全員がランク降格を受けていたこと。最後に、全員が国立男性総合病院新宿が掛かり付けだということ。SP関連で共通項はありません。」


中村が目を細めた。


「明らかに意図を感じるわね。……これらの降格理由の共通点は?」


「石田と同じ『精子含有量不足』。これはもう新宿の病院がやってるとしか思えない」


「つまり、新宿の病院が何らかの基準で意図的に降格しているということね。」


中村は情報を確認しながら、険しい表情で腕を組み、舌打ちした。


「これもう改ざんの蓋然性高いですね。しかも庁の後ろ盾があるから、医師法と精液採取適正化法を理由に照会依頼を突っぱねられる可能性が高い…」


短い沈黙が落ち、そのあとで山崎が視線を俺へ向けた。


「病院側はいったん捜査を止めよう、他の切り口を探すことがいいな。」


山崎の提案に頷いた後藤が口を開く。


「あと担当SP情報は洗ったけど、過去担当間には明確な共通点は無かった。ただ、一部のSPに“腕に傷痕がある”という証言がありました。これ委託先からの聴取結果です。」


そう言い後藤が配布した中には行方不明者に対し、ランク降格前にSPを派遣していた企業の聴取結果だった。


「どの企業も再委託でSP派遣してるのか。ギリギリグレーなことをっ…」


山崎が眉を上げる。


「はい、一人社長のSPを使うとコスト面抑えられると言ってるわ。で、再委託先の企業名もSP名もバラバラ。『株式会社KZM』とか『クシハラ有限会社』とかね。ただ、登記の本店所在地が一緒なんだよね。」


「場所は、新宿区島原三丁目……石田の通報場所が近いじゃないの!」


中村の言葉に、室内の空気が一瞬で変わった。


山崎が端末を操作し、地図をモニターに映し出す。


「……これは近いな。石田の保護現場から徒歩三分圏内だ。偶然で片づけるには無理がある。」


地図上の赤いピンが、まるで血の染みのように浮かんで見え、俺は無意識に拳を握りしめていた。


「現場確認、行きましょうか。」


理性の光を瞳に宿した中村の感情を抑えた声が響く。


「よし、島原三丁目に実地確認は全員で行こう。後藤はスモーク付きの車両よろしく。」


「了解、資機材は何を?」


「何があるかわからんからひとしきりだ。私は理事官に報告してから行くから、裏口に回しといてくれ。」



俺は支度を整えながら、どこか胸の奥にざらついた不安を覚えていた。


『新宿区島原』、そこは行政的には再開発予定地域とされているが、裏では“風俗圏”と呼ばれている場所だ。


昼間は学生や社会人の人通りが激しいが、夜になった途端に欲望渦巻く闇経済の溜まり場として知られている場所だった。


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