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1/96〜男女比1:96の貞操逆転世界で生きる男刑事〜  作者: Pyayume
第十章「本 星」

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第131話「業務過多」

「解析結果ちょっとだけ持ってきました!」


そう言いながら水越が入ってきた。


目の下のクマはまた濃くなっていたが、声は快活だった。


俺たちが水越を一斉に見たせいで、水越が気まずそうに頬を指で掻いた。


「…取り込み中でした……か?」


「いえ、大丈夫です。それより水越さん、寝てないのでは?」


俺の純粋な疑問、水越は肩をすくめた。


「心配には及ばないよ!仮眠は30分は取ったから!人間それくらいでも働けるのさ!」


俺は、それが冗談なのか本気なのか分からなかったので、ツッコまなかった。


「忙しいのは分かるが、ちゃんと体は休めてくれ。時間かかる作業を仕掛けて寝るとかして。」


「まぁまぁ、お気になさらず。」


水越は山崎の言葉を気にしている様子の無いのか、雑にノートPCを机に置き、画面を開いた。


水越は笑っていたが、瞬きをするたびに焦点が一瞬遅れるのが分かった。


「では、御厨理事官が撮影していた弁天島地下の映像です。」


「えっ、資源庁のサーバデータとか、甘南備のデータとかの話じゃ無いの!?」


後藤の驚いた声に、水越が少し悔しそうな表情になった。


「そっちはまだ複写作業中なんですよ……とにかく容量がデカいので時間かかってて……解析着手できるのが早くて明後日とかになりそうです…」


「複写作業は仕方ないですよ。生データの解析なんて毀損の可能性高くするだけです。それより、出来るところからやっていただいてありがたいです。」


中村が穏やかに反応し、水越が「そう言ってもらえて助かります。」と返した。


そのやり取りを見て、俺のいない間での、中村の成長を感じた。


「それでは、御厨理事官が撮影していた映像見てください。」


水越がそう言って画面を切り替えると、弁天島の地下の映像が映し出される。


白い壁、無機質な照明、規則正しく並ぶ医療機器。


ちょうど倉橋の案内を受けながら、住田が横たえられていた部屋に着いたあたりの場面だった。


「ペン型カメラは焦点調性ができないので、映像自体はかなり荒れてるのは容赦してください。で、気になるフレームがありまして…」


水越がキーボードを叩き、映像を一時停止する。


「ここです。」


止められたシーンは特に目立ったところが無く、住田周辺に置いてあった医療機器が映っていた。


「分かりにくいと思うんで、拡大して映像鮮明化かけます。」


再びキーボードを叩き、画面の端の部分が拡大された。


大型の医療機器の側面に、白い小さなシールが貼られていたことが分かる。


「……何でしょう…リース会社の管理ラベルの様なものですか?」


俺が質問を投げかけると、水越は頷いた。


「流石佐藤君。これ、医療機器のリース品だっていうシール。納品企業名、契約番号、管理部署何かが書いてあるんだよね。」


そう言いながら水越によって画像がさらに拡大される。


解像度は低いが、文字の配置とフォーマットははっきりしていた。


「見えにくいですが、資源庁の名前が書いてあるように見えますね。で、リース会社は……麻麻商事…?」


「私にもそう見えるが……麻麻商事に捜索差押え(ガサ)に行ったのは横峯か。丁度ここにいないな。」


山崎がそう言いながら部屋を見回した。


「この契約番号とリース会社から、国の入札記録を見ないといけませんね。」


「今確認しました。案件名は『共生研究用資機材の整備』継続案件で、他の企業と比べて8割の価格で麻麻商事が入札入れてますね。」


俺の意見に、中村がスマホで検索し、即時答えた。


「つまり、弁天島の設備はきちんと予算要求され、国家予算で維持されていた研究施設ということですか。……刑法第96条の6(入札談合)に当たるかはさておき。」


「……人体実験が、制度の中にあったってことか。」


山崎が小声で呟いた。


「確かに、弁天島の規模の研究はそのくらいの規模を感じました。住田の監禁も、研究も、普通では成立しません。」


一拍置いて、俺は続ける。


「やるべきことが多すぎます……挙げるなら…」


そう言って俺は、


闇バイトの連中の応募ルートや報酬受取の裏付けと取り調べ


大原麻子の監禁罪の裏付けと取り調べ


甘南備店舗での証拠品精査及び法人送致検討


資源庁データを多角的な視点での解析


祖母井の国家公務員法違反《秘密漏洩》の裏付けと取り調べ


弁天島研究所での研究内容及び法令違反検討、追加捜索差押検討


望月と倉橋の任意取り調べと取締り検討


等と列挙した。


「ほんと、あたしらだけじゃどうにもなんない仕事量だね。応援が居たから解決するものでもないし…」


後藤が言うと、皆が苦笑した。


「……でも、どれも放ってはおけない。やるべきことを絞って徐々にやるしかありません。それが我々刑事の仕事ですから。」


俺の重い言葉を、皆が頷いて同意した。


その光景に、さらに気持ちが前向きになった気がした。


「……水越さん。ちなみに、あっちはどうなりました。」


俺がそう言うと、水越は一瞬だけ視線を泳がせながらノートPCの画面を閉じかけた。


「……流石佐藤君、抜け目ないね。…今出そうかはちょっと迷ってたんだが……実は、もう1つあります。」

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