表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/96〜男女比1:96の貞操逆転世界で生きる男刑事〜  作者: Pyayume
第八章「包 囲」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

118/162

第113話「山崎玲奈:サーバ室」

5月31日、午前9時42分。


システム企画課のフロアは、異様な静けさに包まれていた。


資源庁職員達は椅子に座ったまま、誰一人として言葉を発しない。


水越の指示を受けた捜査員達のキーボードを叩く音だけが、やけに大きく耳に残る。



私は水越と共にサーバ室の前に立ちながら、背後にいる母の気配を意識せずにはいられなかった。


母は何も言わず、ただここに立つことを分かっていたかのような落ち着きで、捜査の様子を見ている。


知らせを受けた、と言っていたが、それは誰から何の知らせを受けたんだろうか。



私はふと、佐藤の顔を思い浮かべた。


佐藤ならきっと祖母井の家で、秘密漏洩以外の何かを掴んでくれる。


「それならば…私達もここから何かを見つける……」


私達のところに、サーバ室の鍵とワンタイム入室カードを持った職員が近づいてきた。


「これが一時入室カードです。1名ずつしか入れませんので気をつけて下さい。カードをかざして前室に入り、丸部分に乗り、顔写真撮影と金探スキャンがOKであれば奥扉が開錠します。」


「ありがとうございます。しかし、随分厳重ですね。」


「当たり前です。ここは国内の男性関連情報全てが触れる場所ですから。」


職員の言葉は淡々としていたが、表情からは敵対心が読み取れた。


「……私が先に入ります。不要な操作を見落とさないために。」


水越はそう宣言して、一時入室カードをかざした。


水越の入室が終わった後に、システム企画課の職員、私と順番に一人づつ続いた。


私が無事に入室出来ると、2人はあるサーバの前で待っていた。


「お待たせしました。…しかし、凄いセキュリティですね。」


思わず漏れた呟きに、職員は即座に答えなかった。


数秒遅れて、事務的な声が返ってくる。


「内部不正対策です。USBや記録媒体の持ち込みは過去に問題になりましたので。」


「……これは案内されないと分からないですね。」


何台あるかも分からないサーバ群に、水越が小さく息を吐いた。


「ひとまず、本件に関係するシステム企画課全員分のメールデータおよび、触れるファイル群、取得しているログ関連の保全をしたいです。」


水越の意見に、私も同意した。


国家予算で割かれた設備故に、何からしていいのか分からない。


しかし、当初の目的は祖母井の国家公務員法違反の立件だ。


水越が付き添いの職員に確認をしながら、データ保全用に用意したらしい8TBの外付けを接続し、端末の操作を始めた。


少し手持ち無沙汰になった私は、その様子を横目に、サーバラックのラベルを一つずつ追っていった。


「…精液評価・トレース、…人口動態管理、…繁殖プラン適応プログラム評価、…医療データ、…再教育プログラム管理、……ん?」


再教育という文字を見た瞬間、私の背中に冷たいものが走った。


「……水越係長。」


私が声を落とすと、水越が画面から顔を離さずに「どうしました?」と返事をした。


「この再教育プログラム管理というのが気になった。念のため保全を頼む。」


私の依頼に資源庁の職員が反応した。


「すみません、再教育関連は当庁でも機微のため、私にはアクセス権限がありません。」


「誰が持っているですか?」


「アクセスするときには必ず事前承認と立ち合いが必要で、アカウントの払い出し権限は祖母井課長、秩父局長、福田管理対策官のみです。」


福田弥生、資源庁の管理対策官で、内山みのりの最後の証拠品に名前が記された人間だ。


私の勝手な推測ではあるが、福田に頼んでも首を縦には降らないだろうと思った。


「秩父局長に連絡は取れるだろうか?」


「本日は午前所用で外出していますので、午後になれば連絡可能かと…」


「午後……ですか。」


私がそう繰り返すと、職員は視線を逸らした。


その反応だけで、今日中に連絡がつく保証などないことが分かる。


「……分かりました。では、正式なアクセスは後に回します。」


そう言ってから、私は水越に視線を送った。


水越はわずかに頷き、端末の操作を続けながら、声を落とした。


「ログとメタデータだけ、確認してみますね。」


水越はあくまで保全作業の延長と言い訳が立つ範囲で、慎重にキーを叩いていく。


しばらくすると、水越の動きが、一瞬止まった。


「どうかしたか?」


私が近づくと、水越は画面を少しこちらに向けた。


「確認のために、再教育管理システムのアップデートログに記載されていた国家生殖資源登録番号《男性ID》と、男性管理DBの個人名を紐づけたんですが、見てくださいこの名前。」


「……何?」


私が画面をのぞき込むと、<処遇:RE-EDU>と更新された男性の名前が並んでいた。


見知った名前だけを挙げると、<住田正人>、<北村南人>、<丸山義春>、<橋本陽太>、<石田翔一>と名前が続く。


そして最終更新された人物の箇所に、私は思わず息をのんだ。


「……っ………<佐藤悠真>…だと?」


「はい、佐藤君の名前。しかも佐藤君と住田だけは更新アカウントがFukuda、それ以外はUbagaiなのにです。」


「……祖母井の余罪がある可能性を鑑み、これ…保全してもらえるか?」


言いながら、私は何か強大なものに近づこうとしている感覚に陥り、脇に汗がにじんだ気がした。


「……わかりました。ちなみに、再教育関連の業務ってあなたが担当だったりしますか?」


水越の質問に立ち合い職員が焦った顔で否定する。


「ち、ち、違います!それは特に機微な業務で、本当に担当と上長以外は分からないんです……前は内山係長……今は、望月係長が担当のはずです!」


「望月?……あっ、被害届タレ出すときに居たあいつか!」


私がその名を繰り返すと、立ち合い職員は一瞬だけ言葉に詰まり、視線を泳がせた。


「……望月係長は、今はフロアにいません。会議中か、外出中か……恐らく。」


職員の語尾が曖昧になる姿だけで十分危険度が理解できた。


「水越係長、望月のアカウント、ログで追えるか?勿論、祖母井課長の違反との関連性を確認するために。」


「……了解、やります。」


水越は即座に入力を切り替え、画面上に、アクセス履歴が時系列で並び始める。


「……ありました。」


水越の声が低くなる。


「庁内サーバに対する直近のアクセスは5月31日、午前3時32分。ただ、接続端末は…資産管理台帳と紐づけると……」


水越が少し無言になり、20秒ほど経ってから再び口を開いた。


「資源庁の香川拠点配備端末?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ