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1/96〜男女比1:96の貞操逆転世界で生きる男刑事〜  作者: Pyayume
第七章「潜流」

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第100話「帰還」

俺が、特務捜査係の部屋を開けると、そこには見慣れた光景が広がっていた。


寄せた机の上に散らばる資料や写真。


壁の予定表には赤ペンで書き込まれた大量の付箋。


壁際の折りたたみ机には、大量のドッチファイルとデスクトレーが並んでいた。


雑然としているはずなのに、どこか秩序があって、何より懐かしさで心がどこか温かくなった。


それは特務捜査係への思い入れなのだろう。



捜査会議の真っ只中だったのか、部屋の中央に立っていた山崎が、俺の気配に気づいて振り返る。


その一瞬の間に、表情が硬直し、次いで頬が緩んだ。


「……佐藤主任か?」


山崎の声には、驚きと、安堵の二つが混ざり合っていた。


俺が部屋の中に足を踏み入れると、より一層懐かしさが込み上げる。


ここを離れてから、期間にしては僅かだというのに、どれほどこの係を求めていたのか、今さらになって思い知らされた。


「辞令が出ました。今日付で当面の間、捜査第一課へ派遣となります。」


俺は気恥ずかしい気持ちもあり、事実だけを、淡々と告げた。


油断したら声が震え、後藤にからかわれる気がしたのも一つの要因だ。


俺の言葉の後、誰も言葉を発さない。


時計の秒針の音だけが、やけに大きく聞こえる。


時間にして3秒ほど経ったところで、後藤が椅子を勢いよく蹴り、ガタンという音を立てて立ち上がる。


「良かった!やっぱりその辞令だったんだね!」


後藤にしては珍しく顔いっぱいに笑みを浮かべている。


中村は声を出さず、唇を小さく震わせながら俺を見ていた。


何度も瞬きを繰り返し、ようやく一言「……本当に?」と発した。


中村の問いかけに、俺は静かに頷いた。


「よかった……本当によかった……」


それだけで中村は堪えきれなくなったように目元を押さえ、肩を小さく揺らした。


横峯、森下は顔を見合わせ、同時に息を吐く。


「佐藤が居ないなんてありえないよ。戻って来れてよかった……」


「私もそうなる気がしていました!これからもご指導お願いします!後藤部長の指導はもう十分なので!」


その声には、張り詰めていたものがほどけた後の柔らかさがあった。


後藤が、場の空気を読んだのか、森下の発言の後にわざとらしく咳払いをした。


「……まぁ、あんたがいないと全然回らなかったし、張り合いがないし。」


その少しいじらしい口調に、森下が即座に突っ込む。


「毎日毎日机を拭いてましたもんね!…あいたっ!」


森下の尻を後藤が蹴り飛ばし、小さな笑いが起こる。



山崎が、一歩前に出て、俺の目をまっすぐ見つめてきた。


「佐藤主任。」


いつもより少し低く、落ち着いた声だ。


「……本当に異動の辞令だったんだな。」


俺は、山崎の目を真正面から見返す。


「ええ。謹慎解除も捜一派遣も正式な辞令でした。」


山崎は小さく息を吸い、ゆっくりと吐いた。


「そうか……戻ってきてくれてありがとう。…また、よろしく頼む。」


それだけ言って、山崎は視線を伏せた。



俺は、この部屋に再び立てたことを喜ぶと同時に、同じ現場に立つ覚悟を胸に抱き、皆の顔を見回した。


「佐藤警部補は、本日より再び捜一の一員として派遣されました。またよろしくお願いします。」


少し大きく発した俺の声は、部屋の中によく響いた。

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