妙だな
「おっ、レイルか。また鹿を獲って来てくれたのか。助かるぜ。これがねえと、肉料理が出せねえからよ。すぐに金取って来るぜ」
店主は鹿を見ると、嬉しそうに鹿を見る。
「クリフさんに」
「お前が受け取れって。クリフさんが困ってたぞ。お金はお前に使って欲しいってよ」
「別に欲しいものもない。ならクリフさんに使ってほしい」
「お互い同じこと言いやがってよ。クリフさんは最近、ここに来るとお前の話ばっかりだ。愛されてんな。ほら、持って行け。金は持ってて困るもんじゃねえ」
と言って、俺の手に無理やりお金を渡してくる。
一万五千ゴルド。
だいたい三人家族の月の食費が六万ゴルド程度らしい。
「レイル君、来てくれたんだー。最近狩人になったんだって? あのベン爺さんが素直に弟子を取るなんて信じられなーい。凄いね!」
とアミラがこちらにやって来て笑う。
距離が近い。仕事柄か、あまり近寄られると警戒してしまう。
首を落とせる距離だからな。
「ちっ、そんなの誰でもできらあ」
「よそ者が」
突然、二人の若者がこちらを睨みながら、吐き捨てるように言う。
「お前等、変なこと言うんじゃねえ。レイルはよそ者なんかじゃねえよ。クリフさんとこの子だ。気にすんな、レイル」
「別に気にしてませんよ」
実際、俺はよそ者だと思うし。
「あいつ等はアミラにまいっちまっているから、お前のことを目の敵にしてんだ。すまねえな」
「そうなのか」
ん? アミラのことが好きなのと、俺が嫌われるのになぜつながるのか全く分からない。
人の気持ちってのは分からん。
「では、失礼します」
俺は考えることを止め、その場を去る。
「格好つけやがって」
背後からも悪口が聞こえてきたが、俺はスルーした。
翌日以降も俺は変わらず、たまに鹿やうさぎを狩り、空いている日は畑を手伝った。
畑よりも狩りの方が俺の性に合っているらしい。
いくらやっても、料理も全く覚えられない。
けど、狩りは良い。
これなら、俺は役に立てる。
矢を手から放すと、矢は一直線に鹿の頭部を貫いた。
「射抜いたか。血抜きに行くぞ」
ベン爺さんと共に、鹿の元へ向かう。
鹿の元に辿り着いた後、ベン爺さんは首を傾げる。
「どうかしましたか?」
「妙だな……鹿達は自らの縄張りから出ない。ここまで村の近くに来ることはねえはずなんだ」
ベン爺さんはそう呟く。
「なにかおかしいことが起きているということですか? 俺が獲りすぎたせいでしょうか」
「いや。生態系を変えない様に、獲る量も制限している。それが原因じゃねえはずだ。気になるな。なにか鹿達より強い魔物に追い立てられた可能性がある」
魔物。
鹿のような動物と違い、体に魔力を宿した獣。
普通の動物と違い強い力を持ち、人や動物を襲う傾向にある。
「まあ、まだなんも分からん。だが、一応村には警告した方がいいな。狩りの頻度もしばらく減らすか。店にも伝えといてくれ」
「分かりました」
俺は下処理を終えた後、酒場に鹿を持って行く。
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