元暗殺者、就活をする
「レイルもそろそろ働かないとね」
ソフィアは朝食前に、そう言った。
「働く……」
そうか。俺も働かないといけないのか。
「なにか得意なことある?」
得意なことか……暗殺しかないな。
だが、流石にこの村で、暗殺業を生業にすることが無理なのは俺でも分かる。
俺は沈黙で答えるしかなかった。
「料理とかできたりしないの?」
気を遣ったようにソフィアが聞いてくる。
「料理だな。任せろ。朝食は俺が作ろう」
俺はフライパンを持つと、朝食を作り始める。
作ったことはないが……野菜炒め程度なら簡単だろう。
十分後にできたのは、燃えカスになった野菜だった。
「おかしい……この程度で炭になるとは」
「うちで作った野菜を粗末にするな!」
ソフィアから手刀を受ける。
「なんであんた、作れますという顔でキッチンに立ったのよ」
「いけると思ったんだ」
「うちの農業を手伝ったらええ、と言いたいんじゃが、二人で十分でなあ」
「クリフさん、大丈夫です。すぐに見つけて戻ってきますので、安心してください」
料理はできなかったが、これでも元々アスガルド一の暗殺者。
仕事などすぐに見つかるだろう。
俺は早速、仕事を探しに向かった。
「駄目だ。うちには既に看板娘がいるからな。すまねえが」
酒場なら、と思ったが即答で断られた。
「分かりました。ありがとうございます」
俺は頭を下げて酒場を出る。
「ここで働かせてください。調薬には自信があります」
「人手は足りてるねえ。小さな村だからね。私の出番も少ないくらいさ」
薬屋で頼むも、お婆さんにあっさりと断られてしまった。
暗殺者時代に調薬については沢山学んだんだが、そもそも働けないと意味がないらしい。
「分かりました。ありがとうございます」
俺は頭を下げて、薬屋を出る。
続いて、俺は雑貨屋に向かう。
「ここで働かせてください」
「う~ん、もっと明るい子がいいわねえ。人手も足りてるから」
「分かりました」
三連敗。
「そんな馬鹿な……」
俺は雑貨屋を出た後、そう呟く。
暗殺の腕なら誰にも負けないのに。
その後も、働けそうな所に頼むも、皆断られた。
どうやらお呼びではないらしい。
「たしか、クリフさんの家のレイル君だよね。どうしたの?」
途方に暮れていると、隣の家に住む青年、アランから声をかけられる。
俺は簡潔に状況を説明する。
「ああ……分かるよ。小さな村ってのは仕事もないんだ。殆どが家業を継ぐからなんだけど。レイル君は悪くない。僕が仕事を紹介してあげられたらいいんだけど……知り合いに当たってみるね」
「助かる」
良い人だな。
俺が家に戻ると、クリフさんはこちらを見て何も聞かずに小さく微笑んだ。
「お帰り、レイル。もうすぐご飯だから待ってな」
「ありがとう、クリフさん」
この家に来てから、お礼を言ってばかりだな。
早く何かを返したいが、暗殺以外、俺は何もできないんだな。
「あら、レイル。帰って来たのね。どうだった?」
「……駄目だった」
「なに、どこもなかったらうちを手伝えばええ。最近腰も悪くなってきたところじゃ」
「必ず見つけます」
「そんな世の中甘くないのよ」
「ソフィア、素直じゃないのう。ずっと心配して、仕事先探しとったのに」
「そうなのか?」
「あんたが無職だと、私達が困るからよ! 明日、頼んであげるから、あんたも死ぬ気で頭下げなさい!」
「分かった」
「仕事も村ではなかろう。誰に頼む予定じゃ?」
「ベン爺さんよ。あの人、変わり者だし今までずっと弟子入り断っていたから無理かもしれないけど、ダメ元ね! あんたの師匠になるんだから、師匠はしっかりと立てなさいよ。敬意を払うの」
「分かった」
「確かに厳しいが、見る目はある男だ。レイルなら……」
何をするのかは全く分からないが、今度こそ……。
俺は気合を入れる。
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