エピローグ
一方、都市で何かが起こっていることなど全く知らないソフィア達は装備を整え最後の戦に備えていた。
臨戦態勢になり、しばらく村に向かって歩いてくる数人の者が居た。
「来たぞ!」
「なんか少なくねえか?」
こちらにやってきた者は誰一人武器を携帯しておらず、戦をしにきたようには見えない。
「魔法使いかもしれない。警戒を解かないで」
ソフィアのその言葉に、皆警戒心を高める。
「私はホーキンス子爵から使者として派遣されたボロスだ。全面的に降伏する。こちらに争うつもりはない。話がしたい」
ボロスはそう言った。
「なにが今更降伏よ! またアランを寄越せとでもいうつもりでしょ!」
ソフィアが叫ぶ。
「違う! 全く条件など提示しない! どうか話を聞いてほしい!」
真剣な声色で言う使者の言葉を聞き、村人達は話を聞くことにした。
話はシンプルで、条件なしで停戦。税金引き上げやアラン達の引渡しもなし。そして一人三百万ゴルドの賠償金が支払われるというものであった。
村人達は突然湧いた好条件での停戦条件に違和感を覚える。
「大変ありがたい話ですが、なぜこのような条件になったのでしょうか? 先日までと随分違った条件に思えるのですが……」
村長が首を傾げながら尋ねる。
その言葉を聞いた使者が頭を掻いた。
「そう思われるのも当然です。正直、私もよく分かっていないのです。先日ホーキンス様からこの条件で一刻も早い停戦を結べと言われたのですが、理由についてはこちらが悪いからとしか教えてもらえなかったのです」
「こちらが思ったより強かったから、寝首を掻こうとしているんじゃねえだろうな?」
ベン爺が使者を睨みつける。
「そ、そんなめっそうもない! ホーキンス様は全兵士、そしてハビエル様にもこの村に手を出した場合は死罪にすると厳命しました。今後この村が襲われることはないと断言できます!」
その言葉を聞いて、村人も皆首を傾げた。
「他の領主が動いてくれたのか……?」
と口々に話す中、ソフィアが呟く。
「もしかして……レイルが?」
(レイルは王都に行くと言っていたけど、ラービスに向かったんじゃ?)
ありえないと思うも、領主の意見を変えさせられるような人間をソフィアは他に知らなかった。
「分からないが……レイルなら、あり得るかもしれねえな」
ベン爺も同意する。
(そもそも、レイルが突然村を出て行くことにも違和感を覚えたのよ。レイルが、村を見捨てるなんて思えなかった。けど、再び戦を起こさせる前にレイルから動いたのなら……)
「レイルに会わなきゃ」
ソフィアはそう呟く。
もし、本当にレイルが動いてくれたのなら、お礼も言わないと、ソフィアはそう思った。
「行ってこい」
ベン爺が背中を押す。
「うん、行ってくる」
ソフィアはレイルの最終目的地である王都に向かって走った。
◇◇◇
「思ったより王都は遠いな」
俺は王都に向かってゆっくりと歩を進めていた。
急ぐ理由もない。
数日ラービスで領主が血迷ったことをしないか見張っていたが、村に手を出さないよう厳命していた。
あの馬鹿息子を軟禁するくらいだから、問題ないだろう。
「爺ちゃん、約束は守ったよ」
もう村に戻っても良いのだが、俺は王都に向かう。
俺にはまだ経験が足りない。
もっと自由に、世界を見たかった。
別の都市に辿り着き、王都行の乗り合い馬車を探す。
「王都行きの馬車? 坊主、残念だったな、ちょうどさっき出た所さ。次は三日後だ。しばらく町の観光でもしてな」
馬車乗り場のおっさんにそう言われた。
急いではいない。
ゆっくりとするか。
屋台の買った牛の串焼きを食べていると、声をかけられる。
「やっと、見つけた!」
そう言って突進してきたのはソフィア。
「どうしてここに……?」
二度と会わないと思っていたソフィアが突然現れ、俺は驚きを隠せない。
「あんたでしょ。村への出兵を止めさせたの」
押し倒された俺を見据えてそう告げる。
「……そうだ」
「で、黙って去ろうって訳?」
「黙って去る方が、かっこいいだろう?」
俺は笑う。
「あんたって、ほんと馬鹿ね。確かにカッコいいわ。けど、馬鹿!」
ソフィアはそう言って俺に手刀を決める。
普通に痛い。
「礼ぐらい言わせないよ……ありがとう。レイル」
ソフィアは泣きそうな顔で言う。
「どういたしまして」
ソフィアは落ち着いたようで、ようやく俺の上から降りる。
「お礼のためだけにわざわざ来たのか。中々律儀だな」
「何言ってんの? 私も一緒に王都に行くわよ。言ってたじゃない、王都の冒険者になるって。あんた一人で行かせたらどうなるか分かったもんじゃないわ」
「え?」
どうやらついてくる気満々らしい。
俺はソフィアに手を引かれ体を起こす。
けど、まあ一人旅よりは楽しい旅になりそうだ。
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