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冒険者様

「おいおい、ケチケチすんなよ。俺達は村を守ってやってんだぜ? 笑顔で好きなだけくれるのが筋ってもんだ」


「それに……こんなたいして美味くもねえもんで金取ろうってのか?」


 男の一人がそう言って、林檎を一つもいで地面に落とすとそのまま踏みつける。

 果汁と共に、林檎が潰れた鈍い音が響く。


「何やってんのよ、あんた達!」


 それを見たソフィアが掴みかかる勢いで男達に迫る。


「ソフィアちゃんじゃーん。こいつが果物すらくれねえんだ。ひでえよなあ」


 馬鹿にするように笑う。


「酷いのはあんた達でしょうが! この果物一つ一つは、お婆ちゃんが丹精込めて大切に作ったもの。あんた達のような奴等が……ケラケラ笑って、踏みにじっていいものじゃないのよ!」


 ソフィアは、鋭い眼光で男達を睨みつける。


「ちっ、マジになりやがって。ん? 誰だあ、知らないなあ。お前」


 背の高い方が、こちらを見定める様に見てくる。


「怪我したから、うちで拾って来たの。あんたには関係ないでしょ」


「怪しいなあ。もしかしたら不法移民かもしれん。なら、とっ捕まえて領主に突き出さないと」


 にやにやしながら、こちらを見つめている。


「なに言ってんのよ。変ないいがかりつけないでくれる?」


「ソフィアちゃんが代わりに俺達の相手してくれたら、見逃しちゃおっかなあ。俺達村守らないといけないからさ」


「何が村を守るよ。いつも威張ってばかりで何もしてないでしょ」


「じゃあ、斬るしかねえな」


 男の一人はにやにやしながら、剣を抜いた。


「正気!? なに考えて――」


 ソフィアが驚いた声を上げると同時に、俺は瞬時に手刀で剣を抜いた男の首を突く。


「ぐえっ!」


 叫びと共に、剣を放す男。

 その剣を奪うと、もう一人の男も手を剣の柄に伸ばす。

 遅すぎる。

 俺は足払いをして、男のバランスを崩すと、そのままその足で男の顔を踏みつけた。


「ぎゃあああ!」


 そして、首を押さえる男の首元に剣を突きつけた。


「死ね」


「なにやってんのよ、レイル!」


 俺が奴の首を刎ねようとした直前、ソフィアが叫ぶ。


「ん? 殺しちゃダメなのか?」


「いや、確かにこいつ等は死んだ方がいい、んだけど……うーん。流石に駄目よ」


 ソフィアはしばらく悩んだそぶりを見せた後、そう結論付けた。


「そうなのか」


 俺は首を刎ねる代わりに、腹部に蹴りを叩きこむ。


「ぎゃああああ!」


 骨が折れる音と共に、男が大きく吹き飛ぶ。

 踏みつけていた男を解放してやると、こちらをちらりと見た後、吹き飛んだ男を担いで消えていった。


「剣を向けられたのに殺してはいけないなんて、この村は変だな」


 理由がさっぱり分からない。


「普通は殺したりしないものよ。剣を抜かれることもないけど」


「そうなのか? 俺が生きて来た世界だと、武器を抜くという行為にはそれだけ責任が伴うんだが」


「間違いじゃないんだけど、どれだけ危険な世界で生きてきたのよ……いきなり駐在中の冒険者を殺したら騒ぎになるわ。この村で生きていきたいなら、絶対に人を殺しちゃ駄目! 分かった? けど、すっきりしたわ! やるじゃない!」


 ソフィアは歯を見せて笑う。


「そうか。普通の人は剣を抜かれても首を刎ねないのか。分かった。従おう」


 殺した方が早いが、それはどうやら常識ではないらしい。


「それにしても……あんた、強すぎない? 外の人って皆そんな強いの? 剣抜かれたのに、顔色一つ変わってなかったわよ?」


「そうだ」


 嘘である。


「驚いたけど、お兄ちゃん強いねえ。私も胸がすっとしたよ。これ、持って行きな」


 と大量の林檎をもらった。

 村を回るのは割とすぐに終わった。


 そこまで大きい村ではないからだ。


「今日は、酒場で夕食を食べようか。酒以外にも御飯を出しているんじゃ」


 その夜、クリフさんはそう言った。

 二人に連れられ、酒場へ向かう。

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