高揚
レイルに、剣を止めるよう言われた時は頭が真っ白になった。
見捨てられたと思ったから。
自分が最も言われたくない言葉だったから。
だけど、その後の言葉を聞いて、自分の考えを恥じた。
レイルは、レイルなりに私のことを精一杯考えてくれた上で、提案してくれたのだと理解したからだ。
私に本当に魔法の才があるかどうかなんて分からない。
お爺ちゃんと同じ剣士になることしか考えていなかったから。
まだ頑張りたい気持ちもある。
けど、最近はずっと辛かった。
いくら練習しても成長できない、自分が情けなかった。
私に……本当に魔法の才能があるのなら、試したい。
魔法の才もなかったら、と頭をよぎる。
けど、私のことを真剣に考えて提案してくれたレイルを、一度信じてみたくなった。
私は翌日、レイルに告げる。
「魔法を教えてくれる?」
もう一度、自分を信じるために。
「勿論」
レイルはそう言って微笑んだ。
「まずは簡単な魔法から教える。俺の手を握ってくれ」
この男、一体何を言っているんだと思ったが、レイルからは不純な感じが全くしない。
「え!? 分かったわ……」
恐る恐る私はレイルの手を握る。
するとレイルは私の体に何かを急に流し込んだ。
「何これ!?」
体から何かが急に噴き出す。
空気が歪んで見える。
「今、俺の魔力をソフィアに流し込んだ。魔力を感じ取れるか?」
これが魔力……!
「た、多分……」
分かる。この体から噴き出している何か、これが魔力なのね。
「それが魔力だ。ソフィアの体にも魔力は眠っているが、それを今知覚させた。その魔力を体の外に出すイメージで、魔法を唱える。火球」
レイルの手から、小さな火の玉が出る。
当り前のように、火の玉を出す。あれだけ剣を使えるのに、魔法も使えるなんて……。
「……⁉ あんた、魔法も普通に使えるのね……本当何者なのよ」
「俺のことはいいから。やってみて。掌に魔力を集めて、それを火の玉に変えるように。今のソフィアは魔力を感じ取れるはずだ」
気になるけど、今はそれどころじゃないか。
レイルの言葉を聞き、私は目を瞑る。
そして、体の中の魔力を少しずつ掌に集めるようイメージする。
分かる。
確かに……体内の魔力が掌に移動している。
「火球」
私は恐る恐る呟くと、手から小さな火の玉が生まれた。
「で、出た!? え? こんな簡単に!?」
信じられなかった。
魔法は難しくて、一部の人しかできないと聞いていたから。
自分が魔法を使うなど想像もしていなかった。
だが、できた。
その高揚感は……初めてのものだった。
何もできないと思っていた私にもできることがあると分かったから。
私は……魔法が使えるんだ。
「この感覚を忘れないうちに、何度も繰り返して」
「分かったわ!」
私はそれから何度も、何度も火球を生み出した。
何度もしているうちに、レイルの補助もなく、火球を出せるようになった。
楽しい!
火球は自分の意志で大きさも変わる。
大きくしたり、複数生み出したり。
お手玉のように投げることもできる。
気付けば私は笑っていた。
私は一瞬で魔法に魅了された。
それから私は、毎日レイルに習いながら魔法を覚えた。
魔法は奥が深く、そして習えば習うだけ成長できた。
それが何より嬉しかった。
剣とはまるで成長スピードが違うのが私でも分かる。
火の球を遠くに飛ばせるようになったし、日々成長が実感できる。
これだけ練習できるのは、レイルが言うには私の魔力が多いかららしい。
魔力だけなら既にミスリル級レベルだと言っていた。
それだけ凄いのなら、それに値するほど練習しないとね!
私ならできるわ!
私はそれから更に魔法に没頭していく。
ある日、私は自分の成果を見せるため、レイルを呼び出した。
「見てなさいよ、火球」
私が生み出したのは、人より大きな、巨大火球だった。
遂にここまで巨大化に成功した。
私は自慢げにレイルを見る。
「素晴らしいな」
レイルはぽつりとそう言った。
それが、混じりけのない彼の感嘆の言葉だと分かり、私は嬉しかった。
レイルに認められて、私は嬉しかったのだ。
「やっぱり私って、天才ね!」
私は喜びを隠せず、そう言ってしまった。
いいよね、今日くらいは。
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