ソフィア・オリジン
私の両親は、私の思い出に全く登場しない。
お爺ちゃんがずっと私を一人で育ててくれていた。
「ねえ、どうして私はお父さんとお母さんが居ないの?」
幼い私は、お爺ちゃんに一度だけ問いかけたことがあった。
お爺ちゃんは少しだけ困った顔をしながら、私と同じ目線までしゃがんだ後、優しく撫でた。
「ソフィアのお父さんと、お母さんはなあ、凄い人でなあ。昔、冒険者として人を守るために戦って、死んでしまったんじゃ」
「そうなんだ……」
その時、私はひどく悲しい気持ちになったことを覚えている。
誰かを守るより生きていて欲しかったな、とそう思った。
だけど同時にそんな凄い人が私の両親だったんだと誇らしく思った。
村で昔から男勝りだった私は、納得がいかないことがあったら男の子相手でもよく喧嘩をした。
「またレミを虐めたでしょ!」
そう言って、レミを虐めるいじめっ子達に飛び蹴りを叩きこむ。
「痛ってえ……! 何すんだよ、このブス!」
「アンタみたいな、卑怯者に言われたくないわよ」
私は仁王立ちしながら、いじめっ子達を睨む。
「ちっ! 親に捨てられた癖によ!」
一人のいじめっ子がそう言った。
「何言ってんの? 私の親は、冒険者として立派に戦って死んだんだから、捨てられてなんかないけど?」
「馬鹿でえ、そんな嘘信じているのかよ。父ちゃんに聞いた。お前の両親は生きていて王都で冒険者をしているってよ。お前のこと要らねえから捨てられたんだよ!」
え、生きているの?
初めて聞いた時、素直にそう思った。
それは嬉しかったけど、同時にかっとなった。
「私は捨てられてなんか、ない!」
私はそう言ったいじめっ子に馬乗りになって、何度も殴った。
何度も殴られたけど。
結局、その場は皆で乱闘になって小さな騒ぎになった。
お爺ちゃんは、少し困った顔をしながら、私に尋ねる。
「いったい何があったんじゃ? いつもあんなに激しく喧嘩はせんじゃろう?」
「あいつに、お父さん達は生きているって言われた……私は捨てられたの?」
その言葉を聞いたお爺ちゃんの顔が酷く動揺していて、あいつのことは本当だったのかと感じとった。
お爺ちゃんは私を優しく抱きしめる。
「捨てられてなんて、おらん。だが、確かに両親は生きておる。王都で冒険者をしておるが、凄いから忙しくて中々戻ってこれないだけじゃ」
「じゃあ、いつか会えるの?」
「勿論じゃ。仕事が終われば、きっと戻って来るぞ」
お爺ちゃんはそう言って笑った。
「そっか!」
私はお父さん達が生きていると知って、嬉しかった。
いつ帰って来るのかな?
明日かな、明後日かな?
後々話を聞くと、お父さん達はオリハルコン級冒険者という、上から二番目の冒険者らしい。
そんな凄い冒険者ならきっと忙しいから、一年とかかかるかもなぁ。
私はそれからいつも、両親が帰って来るのを待つようになった。
誕生日の時は、いつもどこか落ち着かないのだ。
お爺ちゃんからプレゼントをもらってもどこか上の空。
「お爺ちゃん、このプレゼント誰からなの!?」
ある日、朝起きたらお爺ちゃん以外からのプレゼントが置かれていたのだ。
私は遂に帰って来てくれたんだと、そう思った。
「……それはベンからじゃ」
「あっ……そうなんだ」
それはお爺ちゃんの友達のベン爺さんからのプレゼントだった。
それからも私は毎年待った。
十歳になる頃には流石に気付く。
いじめっ子の言っていることは正しかったのだと。
私は両親から捨てられたのだ。
そこで私は思った。
冒険者というのは、子供を捨てて追い求めるほど素晴らしいものなのだと。
その時、私は冒険者になることを誓った。
だけど、別に両親にもう会いたいとは思わない。
まだ生きているのか、死んでいるのかそれすら知らない。
私は知りたいのだ。
冒険者というものの価値を。
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