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訓練

 熊肉がいっぱいあるせいか、しばらく狩りは中止になった。

 となると俺は暇だ。

 なんといっても畑仕事が下手だからだ。

 レイルさんが行商人と、野菜の卸のことで話し合っている時、ソフィアがこちらにやって来た。


「ちょっとこっち来なさい、あんた」


「なんで?」


「なんでじゃないから、とにかくこっちに来なさい」


 俺はソフィアに無理やり引っ張られ、村の外れに連れていかれる。


「ねえ、レイル。あんた、強いんでしょ? 私に剣の使い方を教えなさいよ」


 ソフィアはいきなりそう言った。


「必要あるのか?」


「あるのよ! 私は今、十四だけど、十五になったら王都で冒険者になるつもりなの」


「冒険者?」


「あんた、冒険者も知らないの? あのぼこぼこにした奴等よ。鉄等級、銅等級、銀等級、金等級、ミスリル等級、オリハルコン等級、アダマンタイト等級ってランクがあるんだけど、トップのアダマンタイト級は英雄として、国の顔になるくらいなのよ。冒険者達の憧れね。私はアダマンタイト級冒険者になるのよ!」


 ソフィアが意気揚々と語ってくれるが、知っている。

 実際にアダマンタイト級の奴等は中々厄介だった。

 仕事で、二人程関わったことがあるが、かなり面倒であまり戦いたいとは思えない。


「この村は嫌いなのか?」


 俺は純粋に疑問に思った。

 ソフィアはこの村が好きそうに見えたからだ。


「嫌いじゃないわ……そうじゃない。そう! 私のような者は、農作業より華やかな職業の方が向いているでしょう?」


 そうだろうか。

 俺は首を傾げる。


「なに首を傾げているのよ! ね? いいでしょ?」


「クリフさんに相談してからなら」


 俺がそう言うと、ソフィアは俺の目前まで迫って来る。


「絶対言っちゃ駄目! 分かった? 反対されるから。あんたを助けたのは、私よね?」


 凄い気迫である。

 この俺が気圧されるとは……。


「わ、分かった……」


 俺は圧に負け、認めてしまった。

 それにしても、剣か。もったいないな。


「やったっ! 何を教えてくれるの?」


 彼女に教えるのは、暗殺術ではない。

 となると最初に教えるべきは……。


「まずは、足だな。瞬間的な速度も大事だけど、なにより持久力を」


「えー、地味ねえ」


 御不満のご様子である。


「殆どの人間は自分では勝てない者と遭遇する機会がある。その時、弱者にできることは逃げることだけだ。まずは逃げ足を」


「……分かったわよ。どれくらい走ればいいの?」


「倒れるまで」


「え?」


 俺はソフィアが倒れるまで、延々と走らせた。


「ねっ、ねえ! これ本当に倒れるまで走るの? もう三十分以上走ってるんだけど!」


「ああ」


 ソフィアは結局、一時間程走って倒れた。


「ひっ、ひっ、ひっ、もう無理……」


 とぐったりしている。

 とりあえず、全力疾走の時間も延ばしたいな。

 俺はしばらくソフィアをひたすら走らせることにした。


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