ベンの述懐
その男は、ソフィアに連れられていきなり俺の前に現れた。
「ベンさん、どうかお願いします」
そう言って俺に頭を下げた。
今まで俺の元に、狩人のいろはを仕込んでくれと連れて来られた奴は何人もいた。
だが、どれも根性無しなのが一目見りゃ分かるような奴等ばっかりだ。
言われたから仕方なく来ました、といった顔を浮かべる奴や、教わってやるだけ有難く思え、といった態度をとる奴など。
狩人ってのは、侮られることもあるが、危険な職業だ。
冒険者程ではないにしろ、動物や、時には魔物を狩る時もある。
だが、その時来たレイルは違った。
堂々とした立ち振る舞いもそうだが、なにより一番は目だ。
明らかに死線を潜った奴だけがする、特有の目をしていた。
死が日常な、高位の冒険者がするどこか達観した目。
本能的に、こいつは俺より強いと感じ取れる。
オリハルコン等級の冒険者、いやそれ以上かもしれねえ。
そしてその予想は、裏切られることになる。
それ以上の怪物だった。
目も、弓の腕も俺をはるかに上回る。
全く音を立てないその動きは、アダマンタイト級の斥候でも難しいだろう。
熟練のその腕と、その若さがちぐはぐだった。
俺も昔は冒険者だったからこそ分かる。
その年で、これほどの実力になることがどれだけ困難なのかと。
天才の一言で済ませてはいけない地獄の日々があったんじゃねえかと、そう勘ぐっちまうんだ。
極めつけは、ハイランドグリズリーを一撃だ。
そんな偉業を達成したのに、いつもの散歩と変わらないって態度で肉の心配をしてやがった。
謎が多すぎる。
だが……悪い奴じゃない。
あいつはまだ真っ白なんだ。
黒にも、白にも容易に染まる。
だからこそ、爺共がしっかりと導いてやらないといけねえ。
俺はそう思いながら、レイルの将来に思いを馳せた。
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