歓声
村の皆は不安な顔をして待っていた。
「おい、アランの奴がハイランドグリズリーを倒したぞ!」
「おおおおおおおおおおおおお!」
ベン爺さんの言葉に、村中から歓声が上がる。
「本当か? ハイランドグリズリーを一人で倒せることなどあるのか?」
村長が恐る恐るベン爺さんに尋ねる。
その時、俺はソフィアの言葉を思い出した。
師匠を立てろという言葉を。
「いえ、ベン爺さんの素晴らしい援護がなければ、決して勝つことはできませんでした。弓での援護があり、なんとか勝利を掴むことができたのです」
「おい、お前何を言って……」
「そうなのか! ベン爺さんと良いコンビなのだな! 皆、ハイランドグリズリーの脅威は二人によって断たれたぞー!」
村長は大声を上げる。
これならベン爺さんも素晴らしい狩人として、村に残るだろう。
俺も、人の心の機微が分かるようになってきたようだな。
俺は自慢げにベン爺さんの方を見る。
だが、ベン爺さんの表情は俺の思っていた表情ではない。
「お前が一人でやったんだろうが! 俺はなんもしてねえ!」
ベン爺さんからげんこつを喰らったが、皆大はしゃぎで誰もベン爺さんの言葉を聞いていなかった。
俺達は村医者に、アランを預ける。
ハイランドグリズリーの死体の元に戻ろうと考えていると、妹のレミがこちらにやって来た。
「お兄ちゃんを救って頂いて、本当に、本当にありがとうございます! 私のせいで、ごめんなさい……」
レミは泣きながら、何度も俺に頭を下げる。
「たいしたことはしていない。だから気にするな」
レミをなだめていると、レミに似た女性もこちらにやって来る。
そして、深々と頭を下げてきた。
「私の息子と、娘を救って頂き、誠にありがとうございます。なんとお礼を言ったらよいか。この御恩は必ず返します」
アランの母か。
そんなたいしたこともしていないのに、こんな感謝されても困るな。
「いや、熊肉が欲しかっただけだ。気にしないでいい」
俺の言葉を聞き、アランの母は小さく笑った。
「お優しいですね。ありがとうございます。何もありませんが、必ず、また御礼させて頂きます」
ずっと頭を下げてくるので、俺は森に逃げる様に戻る。
人手が居るだろうと、数人の男手が村長から借りられた。
「おおおおお! すげえな……」
「ハイランドグリズリーって、こんなでけえのかよ……」
「よくこんなの仕留められたな」
「ベン爺さんのお陰ですよ」
「おい」
初めてハイランドグリズリーを見た者達は皆、その死体の大きさに大声を上げる。
「これだけでかいと、解体にも時間がかかるな。部位ごとに斬って運ぶか」
俺達は巨大な熊肉を解体し、何回か往復して村に運んだ。
これだけ多いと、村だけでは消費しきれないと、ハイランドグリズリーの肉は他の村にも売られることとなった。
村長からは討伐の報奨金として、百万ゴルドが俺達に支払われた。
ハイランドグリズリーの首は、商人に一瞬で売れたらしい。なぜあんなものを買うか分からないが。
「お前、この金を貰うほど俺は落ちちゃいねえよ。これを寄越したら、お前はクビだ」
とベン爺さんに本気で嫌がられたため、俺が一人で貰うこととなった。
クリフさんに渡そうとしたが、いつかレイルがやりたいことをする時のために取っておきなさいと受け取ってくれなかった。
「それにしても、宝物か。俺もいつか誰かのために怒ったりできるのかな」
アランのことを思い出して、そう呟いた。
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