第63話 『進まないといけない道』
アコウ「うぅ……この格好、さすがに恥ずかしい……」
ミコト「もう……毎回毎回、なんで私たちだけこんな……。てか、足元クリームだから歩きづらいってば」
ユウ「はい、チーズ(パシャ)」
ミコト「聞いてないー!!」
アコウ「って、また撮ってる!? そろそろマジでアルバム出せるでしょ!」
ユウ「冗談だよ、ふふっ」
――そのとき。
突如、空気が変わった。
雪が止み、ツリーの光がフッとすべて消えた。視界を覆うように白い霧が立ち込める。そして、音のない空間に、銀色の粒が舞う。
静かに、そこに「彼女」が現れた。
ミコト「……あ……あれは……」
アコウ「……ミメイ……!」
ユウ「……やっぱり来たのね」
ミメイは、以前と同じように人形のような無機質な顔立ちをしていたが、目元にはわずかに焦りをにじませていた。
ミメイ「――“時間”が、想定より早く歪み始めています」
アコウ「時間……やっぱりこの変な季節のせい?」
ミメイ「いいえ。それだけではありません」
彼女の声は穏やかだが、確かな“焦燥”が混じっている。
ミメイ「あなたたちの選択と、いくつかの“予期せぬ要因”が重なった結果……。本来はもっと先に起きるはずだった変化が、前倒しで始まってしまった」
ミコト「予期せぬ要因……?」
ユウ「……もしかして、それって……」
ミメイはユウに一瞥を送り、ほんの一瞬、視線を逸らした。
ミメイ「今、ダンジョンの中と外で“時間の断層”が重なり始めています。皆さんが何気なく過ごしている現実世界でも、細かな“ズレ”が生じています」
アコウ「……休日が消えたのも……?」
ミメイ「そう。そして、それは今後、もっと明確な“崩壊”として現れます。記憶の矛盾、人間関係の錯綜……現実の基盤が、不安定になります」
ミコト「ちょっと待って……! それって、私たちがこのままダンジョンを進んだら……現実が壊れちゃうってこと!?」
ミメイ「逆です。あなたたちが進まなければ、時間のゆがみは修復されません」
アコウ「進むしか……ないってことか……」
ユウは目を伏せ、深く呼吸した。
ユウ「……この子たちを巻き込む気はなかった。でも、今さら止まれない……そういうことね?」
ミメイは、ただうなずいた。
ミメイ「第4層の最深部には、“ある鍵”があります。そこに到達すれば、次の選択肢が開かれます」
アコウ「“選択肢”……?」
ミメイ「そう。それが、“この世界の未来”を左右するものになるでしょう」
そう言い残すと、ミメイの体は淡く発光し、ふたたび霧に溶けるようにして消えていった。
ミコト「……また、突然……」
アコウ「でも、進まなきゃいけないってことは、わかったよ」
ユウ「……ごめん。最初から話しておけばよかったね」
アコウ「ううん、もういいよ。だって、ユウも……私たちと一緒に、進もうとしてるんでしょ?」
ユウは目を細め、小さくうなずいた。
吹雪は止み、クリスマスの音楽が、何事もなかったかのようにふたたび静かに流れ始めていた――。




