第56話 『第4層、クリスマス』
薄暗い闇の中、アコウとミコトは光の中へと足を踏み入れた。足元に赤と緑のイルミネーションが走り、周囲が急速に華やかな光景へと変わっていく。
――ジングルベルのBGMが流れ始めた。
「え、これって……」
「今度は、クリスマス!?」
そう叫ぶ暇もなく、二人の体に光がまとわりつく。強制コスチュームチェンジ発動。
アコウの体は巨大なリボンと包装紙に包まれ、まるで“プレゼントボックス”のような姿に。両手からはキラキラと金粉が舞い散る。
「えっ……なにこれ、動きづらい……!ってか、スカート短すぎ!」
ミコトは全身に電飾をまとった“クリスマスツリー”。髪には星形の飾り、腰回りにモール。背中にはツリートップ風の角が突き出ている。
「重っ! 肩凝る! これ絶対ツリーだよ! 誰がどう見てもツリー!!」
さらに、手には“クリスマスカード”が数枚現れた。見るからにただの紙だが、指先から魔力のようなものが感じられる。
「……またこれ、武器か……」
「前は年賀状で、今度はカードって……ジャンルが地味に細かい!」
と、そのとき――
霧の向こう、雪が降り注ぐイルミネーションの下から、誰かが現れた。
赤と黒のサンタコート、でも帽子の代わりに付けているのは、猫耳のカチューシャ。
――ユウだった。
「……うわあ……またとんでもないの着てる……」
目の前の二人を見た瞬間、ユウは深いため息をついた。
「アコウ……プレゼント箱って……何それ……あと、ミコト……木? ツリー……? そんなの、誰が喜ぶのよ……」
頭を抱えながら、ガックリと肩を落とす。
「久々の再会なのに……なんでこう、ビジュアルが迷走するのかなあ……」
「いや、私たちだって選んでないからね!?」アコウが怒る。
「強制コスプレなんだよ! ダンジョンの!!」ミコトがツリーモールを指差して訴える。
「でも……一応、撮るね……」ユウはスマホを取り出し、カシャカシャと撮影し始めた。
「ちょっと、やめてよ!! そんな顔で撮らないで!」
「うるさい、せっかくだから記録に残すの!」
撮影が一段落したところで、アコウが一歩前に出た。
「……ねえ、ユウ。今まで、どこに行ってたの?」
「なんで、ずっと会えなかったの?」
その声に、ミコトも真剣な表情になる。
「私たち、本当に心配したんだよ」
ユウはスマホを胸元で握ったまま、目線を逸らす。
一瞬、雪の降る空間に沈黙が訪れる。
「……話すよ。ちゃんと全部。ここまで来たんだからね」
その言葉に、アコウとミコトは静かに頷いた。




