第20話 『晩御飯前に』
「なんか静かだね……」
アコウがぽつりと呟く。
ダンジョンの空気はしん……と重く、先ほどまでの雑談が嘘のように、空気が張りつめている。
ミコトがフライパンを構えながら呟いた。
「でも、こういう時って大体“フラグ”なんだよね……ほら、来るよ絶対。ドーン! って来て、バーン! って爆発するやつ」
「フライパンで爆発止められる自信ある!?」
アコウがツッコむその時だった。
――ズズズ……ズッ……
暗い通路の奥から、何かが這いずるような音が近づいてくる。
「……ユウ、なにか来てるんだけど」
「はい。恐らく“具象化された敵”でしょうね。認識が曖昧なほど、理不尽になりやすい傾向が」
「え、待って、あれ……」
見えたのは――巨大なコロッケ。
衣がサクサク音を立てながら跳ねるように近づいてくる。
「……あの、揚げ物ですか!?」
「よりによって! コロッケかよ!!」
そして次の瞬間、背後の壁をぶち破って――
**唐揚げ(推定50cm級)**が豪快に飛び込んできた。
「きゃああああ!? なんで肉汁が飛び散ってるのぉおお!?」
「危ない、アコウ、回避!」
ユウがアコウの肩を引き、唐揚げの豪快なボディプレスが空振りする。
「なにこのダンジョン!? 食卓の逆襲編!?」
「むしろこれは“お惣菜の怒り”ですね……捨てられた者たちの怨念が、形となったのかもしれません」
「怨念強っっっ!! 私、冷蔵庫に入れっぱなしだったコロッケ、謝るからぁああ!」
ミコトはフライパンをクルクル回して構える。
「いいよアコウ、あたしたちの夕飯は……戦いで作るのさ!」
「キメ台詞が意味不明なんだよ!」
そのとき、後ろからピョコッとエビフライの群れが跳ねてきた。
「くっ、次はエビ部隊!? タルタルソース投げてくるぞ絶対!」
「来る前提なの!? タルタルどっから出すの!?」
「どうしますか?」
ユウが問う。まるで日常のような穏やかな声音だ。
「どうするもこうするも……やるしかないっしょ!!」
「了解。では、アコウさん、ミコトさん。ご飯前の準備運動です」
「ユウは余裕だな!!」




