猫と狐の接近
猫田奏襲来!岬目線に戻ります。是非お楽しみください!
あーやってしまった。なんでだろうと自分でも思うが、木寅とはなんでかよく喧嘩する。学校に来てまだ一週間だと言うのに。一週間の間に何度澤巳先生に叱られたことか。あの笑顔の怒りは思ってる以上に恐ろしく、叱られたときは毎回反省する。だが、それを何度も繰り返している。一ヶ月前の憂鬱で問題を起こさなかった自分はどこへやらだ。
喧嘩中にやって来た猫田奏と名乗る少女は可愛らしい見た目と声と裏腹に、どこか凛としている。
「奏!助かったよー」
朝陽が猫田に泣きつく。
「よかった。さて、岬ちゃんとははじめましてだね。私は猫族の者だ。よろしく」
可愛らしい声に見合わないほど凛々しい。
「稲村岬です。狐里家の生き残りらしいです。よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げた。
「さてと」
そう言うと猫田はずんずんとこちらへ歩いてきた。思わず後退りをしてしまう。すると壁にぶつかった。猫田は右手を壁に当てた。
「…壁ドン?」
今、とても混乱している。本当に壁ドン状態だ。
「ふふ、驚いた?驚いた顔もかわいいね」
先ほどの凛々しさに売って変わって、年相応のあどけない笑顔を見せた。
「なんの口説き文句?」
やっと声を出せた。
「安心して、あの男子トリオにもお試し済みだから」
猫田はウィンクして見せる
「えっ?うん?なんか気になることがいっぱいあるんですけど。とりあえず、手をよけてくれます?」
いつもの調子がやっと戻ってきた気がする。
「ごめんね。驚かせちゃったね」
猫田はさっと手をよけた。
「いえ、別に」
自分の席に座ろうとすると、猫田さんは当たり前のように椅子を引いてくれた。紳士的だ。
「で、説明してもらえます?猫田さん。壁ドンの理由」
私がそう言うと、木寅も朝陽も苦笑いを浮かべている。辰井だけ窓の外を見て黄昏ている。要するに美しさを撒き散らしている。なんだこの人間。
「奏でいいよ。この壁ドンの理由は、人の驚いた顔を見るため。壁ドンって結構、人と人との距離が近いでしょ。だから、その人の人との関わりかたがなんとなく分かる気がしたんだ。感覚だけど。まあ、それよりも顔を近くで見てみたいという欲もあるけど」
どんな欲だよ。ツッコミどころが満載だが、猫田はそれ以上考えていない気がする。もういっか。
「でさ、亮先生から聞いた?二年生五人で任務行くって」
奏がさらっと言う。
「五人も使わなくてよくね。俺の呪文で一掃できんだろ」
木寅が椅子をゆらゆら揺らしながら言う。危ないからやめろって。
「というか、聞いてない。どういうことだ?稲村もきたばかりだ。初任務だろ」
辰井がさらっと言う。
「聞いてないの?岬ちゃんの初任務だからもしものためにも二年生全員で行くことになったんだよね。たしか」
猫田のたしかが地味に怖い。信用しきれない。なんとなくだが。その時廊下から足音が聞こえて、教室の扉が開いた。
「皆さん、猫田さん以外には言えていませんでしたが、今から任務に行きたいと思います。勿論私も引率しますので大丈夫です。死にはしません。気を引き締めていきましょう」
にこやかに死にはしないとか言うからやっぱ恐ろしい。っていうか
「今から!?」
私と朝陽の声が重なった。
「仲いいねー」
木寅がニヤッと笑った。
「今からです。まあ木寅さんもいますし、猫田さんもいるので安心してください。稲村さんもずっと任務に行かないわけにはいかないので、せっかく猫田さんが帰ってきたので、皆で行きましょう」
澤巳先生はにこにこしながら言った
最後まで読んでいただきありがとうございました。猫田の壁ドンの意味が分からなくても気にしないでください。そういうキャラなので。これからも続々マイペースに更新していきますので暖かい目で見守ってください。よろしくお願いします。ミスがありましたら申し訳ありません。優しい心で読んでくださいm(__)m