表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

新天地に狐参上

ついに岬は宗歴高校へ!幕開けの物語!

「そっかそっか、そんな時が来たかー」


養母は、温かい微笑みを浮かべてそう言った。


「百瀬ちゃん、そんなにあっさり?」


先日、外れ者の騒動の後、木寅と朝陽に熱心に誘われ、仕方なく宗歴高校に通いたいと養母である百瀬ちゃんに伝えたばかりだった。


「いいよー!お姉ちゃんには、なんとなく聞いてたしー。東京は人がたくさんいて危ない所だから、気を付けんだよー」


百瀬ちゃんは、とにかくのんびりしている。姉とは私の実母のことだが、母は狐里家に嫁いだらしい。両親が亡くなってから、まだ若い百瀬ちゃんが、幼い頃からずっと私を育ててくれた。私にとって、実の母のような存在だ。


「じゃあ、頑張ってねー」


そう言って、百瀬ちゃんは書類にサインし、ひらひらと手を振って台所へ向かった。私はとりあえず、朝陽に電話をかけてみた。


「おー、百瀬さん、オッケーしてくれたか」


電話越しに、朝陽の嬉しそうな声が聞こえる。


「えっ、岬ちゃん?俺も電話するー!」


うん?朝陽とは違う声がした。多分、木寅だ。スマホの取り合いが始まったようで、なかなか終わりそうになかったので、私は電話を切った。

その後、なんだかんだと色々な書類にサインさせられ、転校の手続きはあっという間に終わった。そこから、東京の宗歴高校の寮に引っ越す準備が始まり、春休みは遊びに出かけることもできずに過ぎていった。この時、私は初めて知ったのだ。自分の荷物が、意外と多いということを。


数日後


ついに、宗歴高校の大きな門の前に辿り着いた。今日は、まだ化ける前の白髪の姿で登校した。新しい制服は、着物の前合わせのようなデザインを取り入れつつも、全体的に着物のような形をしている。裾には、金の刺繍が施され、和風でありながらも、下は短めのプリーツスカートで、足元はローファーという、現代的なスタイルだ。


「岬ちゃん、久しぶりー!」


木寅が、こちらに向かって走ってくる。抱きついてきそうな勢いだったので、私はすっと身をかわした。男子の制服も、着物のようなデザインだが、しっかりとズボンで、ブレザーを羽織るスタイルになっている。


「おっ、勘がいいね!」


桜の花びらが、ふわりふわりと舞っている。まさに春、という陽気だ。


「説明は、澤巳先生あたりがしてくれるだろうから、気にすることないよ」


いつの間にか、朝陽が隣に立っていた。どこからか買ってきたソフトクリームを、美味しそうに頬張っている。


「何かの少女漫画みたいな展開だね」


こちらもいつの間にか現れた辰井が、微笑みながら言った。確かに、イケメンに囲まれたヒロイン、といった構図かもしれない。だが……


「うーん」


私は、彼らの顔を順番に見渡した。


「いない」


三人は、揃って首を傾げている。


「だから、タイプじゃない。安心して」


私は、できる限りの笑顔を見せた。その後、その時の笑顔について、辰井と木寅と朝陽は、こう振り返ったらしい。


「天使の笑顔だったが、内容は悪魔だった。岬に対して恋愛感情は無いけど、盛大にフラれた気分だった」と。


三人が、口を揃えてそう言ったと聞いた。


宗歴高校は、東京の学校にしては珍しく広大な敷地を持ち、古風な桜の似合う、まるで屋敷のような趣のある建物だった。


「おーい。来ましたかー」


背が高く、三十代後半くらいに見えるが若々しく、少し緑がかった黒髪の男性が立っていた。知的な雰囲気を漂わせ、白衣を身につけている。


「よっ!澤巳っち」


木寅が、嬉しそうに駆け寄り、ハイタッチをしようとする。


「学校にいる時は、きちんと先生と呼びなさい」


澤巳先生は、にこやかに微笑んでいるものの、その奥には怒りのオーラが滲み出ていて、木寅を一喝したが、終始笑顔は絶やさなかった。一番、油断ならないタイプだ。


「稲村さんの担任を務める、澤巳亮です。あっ、そういえば稲村さんのクラス、というか二年生は、辰井夜半くん、木寅杏くん、戌城朝陽くん、そして稲村さんと、もう一人女子生徒の猫田奏さんの五人だけです。猫田さんは、しばらく任務で不在にしていますので、その間、女子生徒は稲村さん一人ということになります」


「へっ?」


思わず、間抜けな声が漏れてしまった。


「そうそう。言ってなかったっけ?」


木寅は、ポカンと口を開けている。


「聞いてないけど……あっ、この三人?うわ、面倒だな。個性大爆発みたいな感じじゃん。特に木寅」


私は、思わず嫌味を言ってしまった。まあ、特に反省はしていないけれど。


「個性大爆発って」


辰井が、珍しく声を上げて笑った。いつもは、どこか寂しげで、計算されたような笑顔しか見たことがなかったから、素直に笑っているのを見るのは初めてだった。なんだか、少し安心した。


「猫田は、一見すると珍しい三毛猫みたいな髪色で、長髪の可愛らしい華奢な女の子って感じなんだけど、中身は…会えば分かるよ」


辰井は、笑いながらそう言った。

読んでいただいてありがとうございました。引き続き楽しんでもらえたら嬉しいです。これからも暖かい目で見守ってください。誤字脱字や矛盾点ありましたら申し訳ありません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ