苦しい瞬間は突然やってくる
女子二人で話をしているAとBがいる。共通する話題があって、くすくすと囁きあって楽しそうに笑っている。
そこに遅れてもう一人の友達Cが合流する。
AとBが作った空気の中に、後から来たCが交ざると、色が変わる。三人だけの空気になるまで時間がかかる。
本音として、AとBはもう少し二人だけで話していたかった。偶然にも共通する話題が見つかり、盛り上がりかけていたところ、Cに水をさされた形になった。
だけど後から来たCを無下にすることはできない。最初から三人で遊ぶ約束をしたのだから。
しかしCもバカじゃない。気まずい空気感から、自分が邪魔者になっているのがわかる。
そこでCは、気を遣って三人に共通する話題を提供した。駅前に新しくカフェができるという、当たり障りない話をした。流れが変わると思った。
Aは「あっ、そうなんだ!」と言った。Bは「いいね」と共感する。話は広がらない。
気を遣って出した話題が空中に消えた。Cはせっかく何か三人に共通する話題はないかと頭を動かしたのに。
Cは苦笑いをしながら、早くいつもの空気感にならないかと、たまらない気持ちになった。
三人で遊ぶ約束なんてしなければよかった。早く解散の時間になれば良い。
そう思ったのもつかの間。昨日していたドラマの話、SNSで話題になった動画、推しなどの話を通じて、Cはいつのまにか笑顔になっていた。
最初に感じた切ない気持ちがなくなると安心した。良かった。楽しくなれるから大丈夫だよと数時間前の自分に教えてあげたい。
しかし、勉強の話になるとAの顔が突然くもった。苦しい瞬間は突然やってくる。だけど永遠に続くかのような時間は案外あっさり終わることをAはまだ知らない。