夢を見上げて
「あなた、まだ現実なんて見ているの?いい加減夢を見なさいよ」
分かっているよ、そんなこと。でも、やりたい事なんて見つからないし、皆みたいに僕には得意な事も無いんだもん。皆は良いよね、凄いよね。やりたい事がはっきりしていて、それに向かって行けるんだから。
「なんだお前、まだ現実なんて歩いてんのかよ」
「もう散々に言われているよ、うるさいな。僕だって出来る事はやってるさ。それに、向かいたい夢も無い。君は、夢へ飛び込む事が恐く無いのかい?」
「恐くないのかだって?恐いに決まってんだろ馬鹿。でも、そんなのは始めだけだ。今も不意に恐くなることはあるけれど、当たり前の事だから気にならなくなるよ。だって地に足が着かないんだぜ?恐いとかの話じゃないだろ」
やっぱり、恐いじゃないか。僕だって、知っているさ。道から外れる恐さだって。崖から飛び込む様な、海へ進んで行くような。あんなの、皆がみんな進めるわけじゃない。無理して進むなんて、死にに行くようなものじゃないか。
「あれ、君まだ現実……」
「もういいよ、良いじゃないか現実ばかり歩いていたって。向かいたい夢も無いし、恐いし、早死にしたくないんだよ!あんたは命が惜しくないのか!?」
「惜しくないよ、もう賭けちゃったし。それに、自分の命だけじゃ足りないから私は進むの。見て、書いて、歌って。私だけじゃ足りないから、君も書いてみない?」
「そんな簡単に出来るわけないじゃないか。」
「別に簡単だとは言ってないよ。でも誰でも夢は見るでしょう?」
僕はいいよ、出来ないよ。眠っている時に夢を見る事で十分さ。僕は恐くて夢を追えない。現実を生きて、君達の夢を歩いて見て楽しむよ。君達が見せてくれる夢だって、見てくれる人が居ないと詰まらないだろうから。僕はここから夢を見上げるよ。誰でも夢は見るけれど、誰でも夢へ駆けることは出来ない。現実にしか、生きられない奴も居るんだよ。




