鳥
「ねぇ、森のずっと奥には、何があるの?」
「若い頃に聞いた話じゃが、小さな洞窟があるそうじゃ。」
「洞窟の中で、願い事を言うと、それが叶うんじゃよ。不思議な話じゃ。」
「素敵な話!暖かくなったら行こうね!絶対だよ!!」
「うむ。約束じゃ!」
そう言って、おじいさんは顔をしわくちゃにして笑った。
僕はおじいちゃんが大好きだ。
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むかし、むかし。遠い国の深い森の中。
一軒の小屋に、おじいさんと少年が住んでいた。
いつも一緒に森の木の実や、動物をたべてひっそりと暮らしていた。
夕飯時になれば、食卓を囲み、色々な話をした。
寝るときだって、おじいちゃんはいつも僕のそばにいる。
本を読んでくれたり、時には窓の外の星を眺めたりもした。
おじいさんの話を聞くと寒い冬の夜も、
体の奥が暖かく包まれるような気持ちがした。
そうやって一日が過ぎていった。
そうやって毎日が過ぎていった。
ある日、
おじいちゃんの具合が悪くなった。
そいで、森へは一人で行くことになった。
いつもの道をとぼとぼと歩いていった。
鳥の声や川のせせらぎがいつもよりきこえてくるような気がした。
食料を取り終わった頃、一匹の大きな鳥が飛んでいるのをみた。
日も傾き夕日が眩しく顔を照らす。
おじいさんを喜ばせるため、それを取って帰ることにした。
大きな鳥を担いで帰った。
「おじいちゃん。ただいま!これを食べて元気だしてよ!!」
大きな鳥をどっさりと床に置く
返事がない
「おじいちゃん?おじいちゃん?」
必死で体を揺さぶるけれど、
ベットに寝ているおじいちゃんが起きることはなかった。
おじいちゃんも床の鳥のように、冷たくて、重かった。
寒い寒い夜だった。一人ぼっちの夜だった。
悲しくて涙をボロボロと出しながら食べた。
やがて、僕は旅に出た。いつかおじいちゃんが話してくれた、
遠く遠く森の奥の洞窟を目指して。道をずっとずっと行った。
『どんなにつらくたって、明るいこころを持つんじゃ。』
そんな言葉を思い出して、
足も手もがむしゃらに動かした。
窓の外の星空を眺めたこと。
色んな話を聞かせてもらったこと。
森の中を一緒に歩いたこと。
しわくちゃの笑顔
一斉に蘇ってくる。
もう何日たったか分からなくなって、少年の心はヘトヘトになっていた。
そんなとき、おじいさんが話で言っていたような、洞窟に出会った。
ひっそりと入口をのぞかせている。
中のひんやりとした中の空気にあの日の寒さを思い出して、
願い事を叫んだ。
「僕をおじいちゃんに会わせて!!」
目には涙をいっぱいためて、必死に叫んだ。
『それはそれはいいところなんじゃろうね。。。』
『素敵な話だね。暖かくなったら行こうね!絶対だよ!!』
『うむ。約束じゃ。』
気がついたら夢を見ていた。
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僕は、大きな鳥になっていた。
あたたかな夕焼けの空に羽ばたいて。
そう。真下にはあの日の僕が見える。
どこまでも飛んでゆけるとおもった。
そう思ったんだ。