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第十話
「おーい。部屋にいるんだろ。返事をしてくれないか?」
自宅にて。部屋に閉じ籠っている春に声をかけた。
「兄貴。何?」
まるで、セールスマンを警戒しつつ扉を開ける主婦の様に半分だけ扉を開き、春が返事をしてくれた。
「・・・何を警戒してるの?」
「兄貴。嫌いだから」
理由は分からないままであったが、相当な春の怒りを買ってしまってい様だった。
「何も用がないなら」
「待て待て。これ」
扉を閉めようとするのを慌てて止めて、組袋を手渡した。
「何これ?」
「ちょっと、良いプリン。ほら、春プリン好きだろ」
とりあえず、春の怒りを鎮める必要があった。なので無難に好物を渡して。と思ったのだが、「バン!」と勢いよく扉が閉じられてしまった。
「(あれ。プリン好きだったと思うんだけどなぁ)」
仕方ない。物で釣る作戦は失敗した。
プリンは自分で食べるか。
「兄貴。一緒に食べよう」
自分の部屋へに戻ろうとしていると、再び扉を開けた春が一緒に食べようと言ってくれた。・・・どうして、一度扉を閉めたのだろう。謎である。




