プロローグ
相談したい事があるから聞いて欲しい。
そう呼び出されて、放課後ファミレスにいた。
「話って何?」
「実は、私、忠光君の事が好き」
一見、俺が告白を受けた様に見えるが、忠光とは俺の親友である。
その胸の気持ちを打ち明けて来たのは、幼馴染の佐藤 莉奈である。・・・俺が現在、密かに片思いしている女子である。
「へ、へぇー。そ、そそうなんだ」
動揺するな。落ち着け俺!
一先ず、気持ちを落ち着かせる為に水を飲むことにした。
「・・・どうしたの?手が震えてるよ」
手が震え、コップの水は波を立て、今にも零れ・・・。いや、既に袖がびちゃびちゃになっていた。
「あはは。ちょっと外が寒くて、手が震えちゃった」
季節は四月に入り、かなり暖かい。
我ながら、なんて苦しい言い訳であろか。
「そうなんだ。・・・それでね」
俺の苦し紛れの言い訳を特にツッコミ入れるなどなく、軽く流された。
莉奈にとって、俺の話より、今は忠光の話がしたいがしたいのであろう。
「それで、冬休み前までに告白しようと考えてて。ちょっと、私真剣に話してるんだけど」
「・・・はっ?!」
もうどうにでも良くなって、一瞬思考放棄してしまっていた。
「ちゃんと話を聞いてよ。冬也冬也だから、相談したんだよ」
「ごめん」
俺が謝ると莉奈は自分の考えている計画を話してきた。
「・・・って感じでいく気だから。協力してね」
「わりぃ。俺、お前の事が好きなんだ。だから、協力出来ない」とは言えはずもなく。俺は「分かった」と返事をする事しか出来なかった。
* *三日後* *
またもや、俺はファミレスいた。
「今日は来てくれてありがとうな」
親友の野田 忠光が、頭を下げてお礼を言う。
「よせよ。俺とお前の仲だろ。それで相談ってなんだ。もしかして、また、女子から告白されたとかか」
冗談を言ったような雰囲気でそう尋ねた。
「いや。違うんだ」
どこか真剣な表情をしている忠光を見て、自分は場違いな冗談を言ってしまったと思い、「わりぃ」と言って謝罪した。
「・・・実、は・・・はぁ・・・。実は、な・・・」
まるで苦虫を嚙み潰したような顔をする忠光。
「一旦、落ち着けよ。ほら、水でも飲んで」
そう言って自分も水に口を付けた。
「俺。お前の妹、春ちゃんの事が好きなんだ!」
「ブッッ!!」
盛大に噴き出してしまった。