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作戦を立てる

 森の中の小屋で一晩を明かした私たちは早朝から作戦を立てていた。


「あの、セイレンさん、そういえばこの両手剣受け取ってください、ついに完成したんです」


 セイレンさんは吹き飛ばされた時に剣も盾も失って丸腰になっていた。


「ありがとう、こいつはすごい!大きくて軽い、それによく出来ている」


 セイレンさんが剣を両手に握ると金色のオーラが輝き出した。


「こいつはすげえオーラだ」


「これヤバイわね〜、どんな魔法石ツッコんだのよ。この色、聖属性?聖属性の宿る剣なんて見たことがないわ」


そのオーラは私にも見えるほどに凄まじかった。


「スミレさん、とてつもない剣をありがとう。これで両手剣スキルの感さえ戻せば奴らとも渡り合える」


「いいえ、なんかすごい武器が出来ちゃったみたいでよかったです」


「すぐにでも鑑定士に見てもらいたいところだが町には当分戻れそうもないから修行の中でこの剣に宿っている能力を見てみるよ」


 その日から各々が早速動き出した。私は最低限自分の身は自分で守れるためにハワードさんに護身術を教わった。その傍らでセイレンさんが盾型から両手剣型に転向するための修行に明け暮れていた。ユノさんは奴らに顔が割れていないため町で情報収集を行っていた。


 そうして5日目の夜、集められた情報を元に皆で作戦会議を行った。ハワードさんが話をまとめ皆が意見を言う。


「間違いなく王宮は賊によって陥落している。国王お呼び城の関係者は操られている状態にある。そのため町の人たちは気付いていないようだな。どうにかして王宮に近づき賊を倒さないといかんな」


 ハワードさんは拳を握りしめ力強く言った。


「アタシの聞いた所によると国王はこの1週間、誰とも会わずに玉座にいるらしいのよ。謁見室にも誰も立ち入れないみたいなの。ただ一応国王も姫も生きてはいるみたいよ。側近の兵士たちや大臣はいつも通り暮らしてんだけど王宮のことを尋ねると黙ったり怒ったりして話を聞けないらしいわ」


 ユノさんの話では城の関係者は皆程度は違うが催眠にかかっているようで、近づくことはおろか情報を聞き出すことも難しそうだ。


「賊は上手く王宮を乗っ取ったようだ。なんとか王宮に侵入して賊を倒したい。奴らのメンバーは催眠術を使う魔法使い、高速の二刀流使い、妃殿下を抱えていた筋肉質の大男」


「筋肉質のイケメンはアタシに任せて頂戴」


「いや、イケメンかはわからないが」


「ワハハ、俺は魔法使いをとっちめようか」


 ハワードさんのような単純一途なタイプが魔法使いと戦うなんて分が悪すぎる、と私が思ったのが顔に出ていたのかこちらを睨んでこう言った。


「スミレ、言いたいことはわかるぜ。だが戦ってみるまではわからねえ。相性なんてものは案外どうにでもなるもんなのさ」


 すごい自信だが意味がわからなかった。しかし私はセイレンさんの相手が一番心配だった。


「あの、セイレンさん。二刀流使いってこの前の?」


「そうだ、ヤツはアサシンと呼ばれる殺しの専門職だろう。アイツは俺が倒す。心配は無用だ、スミレさんに作ってもらったこの剣がある」


「スミレちゃん、あなたには国王とお姫様の身を奪い返してほしいのよ。この聖水を振りかければ催眠は解けると思うわ。2本渡しておく」


 聖水を受け取りポッケにしまった。けっこう重要な役割を与えられて緊張と不安でいっぱいだった。


「あの、どうやって王宮に侵入するんですか?」


 不敵な笑みを浮かべてハワードさんが言う。


「それはだな…空から王宮に入る」


「え、空から?」


 セイレンさんは驚いた私を見て苦笑しながらも説明してくれた。


「この世界には空を飛ぶ大型生物が何種類かいるんだが、そのひとつのドラゴンがこの地方に棲息してるんだ。ちょうどこの森の湖にたまに姿を見せるらしい。水を飲みに来る姿が度々目撃されている」


「4人運ぶなら2匹は必要ね、ツガイがくるといいんだけど、明日湖に行ってみるとしてとりあえず今日はもう休みましょ」


 就寝前にセイレンさんに声をかけられた。


「スミレさん、両手剣の出来はとてもいいよ。使えば使うほど馴染んでくる、じゃあおやすみ」


「よかったです、よろこんでいただけて、おやすみなさい」


 私はこの世界で人の役に立つことができ、その喜びを知った。それは前世では経験していないことだった。自分の不運を嘆いてばかりで、それはつまり自分の幸せしか願っていなかったのだろう。彼らのように強くたくましくはないけれど、私には私の出来ることがある。今日はよく眠れそうだった。

いよいよ役者も揃い佳境になります

ここから急展開を見せます

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