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両手剣を作る

「こんにちは、スミレさん。今日もいい天気だね」


「こんにちは、セイレンさん。今日は曇りですが」


「アハハ、そうだった。しかしスミレさんの鍛冶スキルは見事なもんだね。」


 私が賊に襲撃された日から1ヶ月ほど経ち、私の鍛冶屋としての腕前はメキメキ上がっていた。自分でも信じられない所に才能が隠れているものだ。


「教えてるやつがいいからじゃねえか!ワハハ!」


 セイレンさんは鍛冶屋にちょくちょく顔を出すようになり、会話するたびに惹かれていった。彼は私の容姿などよりも鍛冶の腕を認めてくれていてそれがたまらなく嬉しかった。私は女神様に変えてもらった容姿に満足していたが、それよりも本当の輝きとは自分の内面にあるということ、それを磨くことが不幸な人生から脱出する手段だったということに気付いた。(今からでも遅くない)


「ハワードさん、セイレンさん見ててください!私一流の鍛冶屋になってみせますから!」


〜〜〜〜〜


 それから半年ほど経った頃に転機が訪れる。セイレンさんとハワードさんは昔パーティを組み冒険していたらしく腐れ縁のようだった。今日もこうして鍛冶場で3人で雑談していたのだが。


「ハワード、俺たちが旅から戻ってからもう10年になるんだな、早いものだ」


「そうだなセイレン、あの頃は怖いもの知らずでムチャばかりやってたよな、ワイバーン狩りなんかは大仕事だった。」


「ハハハ、ところで頼みたいことがあるんだが、両手剣を作ってくれないか、とびっきりのやつを」


「お前盾型に転向したんじゃないのか、お姫様を守るとかなんとかって理由でよ」


「あれは王様の命令だ、王家に代々伝わる家宝であるこの盾をやる代わりに妃殿下を守ってくれと盾型に転向を余儀なくされたが、本当は嫌だったよ」


 お姫様を守るという言葉に私は思わず作業台から身を乗り出し口を挟んだ。(守られてみたい)


「あのセイレンさん、お姫様というのは」


「国王の娘だよ、ワガママで手がつけられない、おっと、こんなこと言ってたのは内密ですよ。王様の命令で親衛隊長を務めていますので」


 この国の王妃は病気で亡くなっており、その娘にあたる妃殿下が女性の最高権力者ということになっているようで、どうやら好き放題やっているらしい。


「ハワード、俺はもう一度剣を握りしめて冒険がしてみたいんだ、だがそれはもう叶わないこともわかっている。だが武器だけでも手元に置き腕を磨いておきたいとも思っている」


「わかった、引き受けよう」


「私にも手伝わせてください」


「なんだと、お前両手剣はまだ作ったことないだろう、できるのか?」


「ハワードさんが作ってるところ何回か見てるのでわかりますよ、やらせてください」


「これは驚いた。期待してるよ、スミレさん。材料に関してはミスリルを使ってほしい。それからこれは追加で混ぜて材料だ」


 セイレンさんは少し自信げに色とりどりの魔法石を10個ほど取り出した。大きさも私が持っていたやつの2〜3倍、直径10センチ近いものまである。


「お前これは…」


ハワードさんが啞然としていた。それはそうだ、魔法石はとても貴重な物らしく、大きくなればその価値も数十倍になるからだ。


「俺のコレクションだ、これをすべて注ぎ込んで最高傑作を作ってもらいたい」


「わかってると思うが、追加で入れる材料が増えればそれだけ成功率は下がる。10個も入れるととんでもなく低くなるぞ」


「まあ、ダメだったらそれでもいいさ、2人の腕を信じている」


「しっかしなあ、相当な幸運を持ち合わせてないと成功しないぞ、スミレ!やってみるか?」


「あのー、ハワードさん。以前私のダガーに付いている効果のこと言いましたっね」


「ん?運を上げる効果のことか?まさか!」


「ん、スミレさんのダガーにそんな効果が?これは期待していいかもしれないな」


「面白くなってきたな、やる価値はある。だがけっこう時間はかかるぞ?」


「気長に待つさ、よろしく頼む」


 次の日から早速取り掛かった両手剣作りはハワードさんが主導し私がほぼすべての工程を行った。小さな剣を作った時の製造方法とは違い鋳造と呼ばれる方法を使った。熱してドロドロになったミスリル鉱を石膏の型に流し込む。冷えてきたら分厚い状態の素材を叩き刀身の形にしていく、打って叩いて刀身の中に含まれる不純物をいかに取り除けるかで刀の強度が決まるらしい。


 作業は困難を極めた。1ヶ月近くも両手剣作りに没頭し肉体的にも精神的にもボロボロになりながら行っていた。彼には婚約者がいる。そんなことはわかっている。だけどこの武器は一生大事にしてくれると思った。それだけが原動力となり頑張った。


 その間セイレンさんは一切顔を出さなくて寂しかったが作業の邪魔になると気を使ってくれたのだろうと思っていた。しかしどうやら王宮の方では何かが起こっていたらしく私がそれを知ったのは後になってからだった。


 両手剣が完成したその日、傷だらけのセイレンさんが鍛冶屋に運ばれてきた。


次回5話だけは、セイレン視点になります

王宮での話を描いた展開になります

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