武器をつくる
「スミレか、いい名前だな。行くところないんだろ?よかったら俺の家に住むといい。飯は食わせてやる。その代わり仕事を手伝ってくれればいい。ワハハ」
私はこの世界ではスミレ・ユンカースと名乗らせてもらっていて今はドワーフのおじさんの家に居候暮らしをさせてもらっている。どうやらおじさんが森で木を集めていると私が倒れているのを見つけたらしい、担いで家まで運んでくれて介抱してくれたとのことだった。(何もしてないよな?)
一応私の体に何か変なことしてないかと尋ねると小娘には興味が沸かないので本当に何もしてないと真顔で言われ少しガッカリした。もしかして種族が違うと恋愛対象ではないのかもしれない。
「役所での手続きは済ませたから、俺たちは一応正式な家族だ。街の人とも挨拶する程度には仲良くするんだぞ」
よくわからんけど、めんどくさい手続きは全部してもらって居候させてもらえることになったみたいだ。うまく出来すぎてる気がするが住むところがあるのは安心できた。本当に運がいい。
陽気なドワーフのおじさんは名前をハワード・ユンカースといい鍛冶屋をやっていた。なかなかの腕前の鍛冶屋で昔は王宮騎士団の武器も手掛けていたというが、私にはその凄さはわからないが店には凄そうな武器や防具がいっぱいあった。
「町の外は魔物が出るから一人で出ちゃダメだ、まあ城壁があって門兵がいるから簡単には出れないがな」
どうやらこの世界は魔物が蔓延る危険な世界で、それに対抗するための手段として剣と魔法による護身術が一般的な世界であった。
この町は中世ヨーロッパ風の町並みで、中心には王宮がある。その周りに町が栄え、町の外には魔物がうろついているいわゆるファンタジー世界によくある町だ。
「お前みたいにイセカイから飛んできたっていうやつには何度かあったことがある」
この世界では私のような転生者は稀にいるらしく異邦人と呼ばれている。もともと世界中に多種多様な民族が存在しているらしく旅人や放浪者も引っくるめて異邦人という扱いなので特別目立つことはない。
「私のような異世界転生者はみんな何をしてましたか?」
「そうだな、俺が一番多く転生者を見かけたのは町の外で死んでいる姿だ。おそらく冒険者になったつもりで外に飛び出し魔物にやられたんだろう」
まぢやばいじゃん、私の顔の血の気が引くのを見てハワードさんは豪快に笑う。
「ワハハ、大丈夫だ。町で普通に仕事についているやつもたくさんいる。異邦人じゃなくても冒険者になるやつなんて稀だよ。冒険者なんてのは何年も修行してスキルや武器を手に入れてからなるもんだ」
「だから私には鍛冶屋の手伝いをしろというわけですか?」
「まあそうだ、何かしら仕事をしないと生きてはいけないからな、慣れてきたら本格的な武器作りも教えてやる」
鍛冶屋の手伝いは最初は単なる雑用だったが、1ヶ月ほどすると武器作りを教えてもらった。鍛冶屋の仕事はクサい汚いキツいの3kだったが前世で工場勤務に慣れていた私としては嫌になるほどではなかった。
「スミレ、明日から武器作りもやってみるか!なーに根が真面目だからすぐに出来るぜ、ワハハ!」
なんだかなあ、せっかく転生したんだから本当は派手な魔法を使って楽をしてみたり、お姫様みたいになりたかったのに、本格的に仕事をするみたいで嫌だったが、この世界で生きていくにはやるしかないと覚悟を決めて、まずは基礎ということで短剣の作り方を教わった。
「材料は用意した、まずは練習がてらやってみな。」
ハワードさんに教えてもらい私は初めての武器制作にチャレンジした。鍛造と呼ばれる方法で熱した金属を金床と呼ばれるたたき台に置き、ハンマーで叩いて成形していく。ある程度形を作ったら、更に熱して叩いてを繰り返して形を整えて仕上げていく。
「基本の金属は鋼鉄を使い、それにいくつかの素材をプラスすることでより良い物を作ることができる。能力を付与したり切れ味を高め基礎攻撃力を上げるとかな。」
なるほど、結構おもしろそうだしやってみることにした。