運命が決まる
セイレンさんの戦いが終わるのを固唾を飲んで見守っていた私は、その強さに驚嘆していた。
凄すぎる……私の目には彼の髪をなびかせ戦う姿が眩く映っていた。
☆☆☆
「終わりました?」
「スミレさん、終わったよ。さあ妃殿下に聖水を」
「はい!」
寝室のベッドに寝かされていたこの国のお姫様は、さっきの国王陛下と同じく虚ろな目をしていた。
私はベッドにあがり聖水をふりかけた。
お姫様は、ハッと目を覚まし辺りを見回す。そこへセイレンさんがやってきて姫の体を優しくいたわっていた。
「妃殿下、ご無事ですか」
「ええ、セイレン……あなたが助けてくれたのね?」
「──ご無事でなによりです」
セイレンさんとお姫様は見つめ合っていた。
私はなんとなくバツが悪くなり、ハワードさんのいる玉座へと走りその場を後にした。
☆☆☆
それから数日間、王宮の復旧が行われた。
私たちの罪は冤罪であることが証明され、家に返された。鍛冶場は兵士たちに捜索されたせいで、散らかっていたので店を開けることはできず、私とハワードさんは片付けるところから始めなければならなかった。
ユノさんは教会へ戻り、セイレンさんは王宮の復旧作業に追われていたようだ
数日後、国王陛下から呼び出された私とハワードさんとユノさんは玉座にいた。玉座には国王陛下もお姫様の姿もあり、セイレンさんの姿もある。
呪いから解かれ元気になり身なりを整えたお姫様のお姿は、壮麗で美しかった。私はなぜか床の赤いカーペットばかり見ていた。
「諸君、呼びだしたのは他でもない!この度の活躍、誠に感謝する。なんでも好きな褒美を取らせよう!」
ハワードさんとユノさんの鼻息が途端に荒くなった。
「いいんですかい?陛下!こりゃたまげた!ワハハハハ!」
「太っ腹ねぇ!何をもらおうかしら!?」
「セイレン騎士団長、そなたにも褒美をやろう。何がいい?新しい鎧か?それとも兜か?」
「──よろしいのですか、陛下。では……」
セイレンさんの表情は固く引き締め、国王陛下にひざまずき頭を下げた。
「無期限の休暇を頂きたい!私は騎士団長の職務を離れ、旅に出たいのです!」
「な、なにを──」
国王陛下が慌てふためき、その場の全員が啞然としていた。
「あのー、陛下。俺からもお願いしたいんですがよろしいですかい?」
ハワードさんも頭を下げた。
「アタシのお願いもそこに乗っけてもらおうかしら」
ユノさんもそれに続いた。
「お願いします!私からも!」
私も自然と頭を下げ、口にしていた。
「よかろう、そこまで言うのなら仕方ない。ただ王宮の復旧が終わるまではいてもらうぞ」
「父上!」
お姫様が国王陛下に向かって叫んだ。国王陛下は明後日の方を見ている。
お姫様はほっぺたを膨らませてそっぽを向いた。
「妃殿下、ご無礼をお許しください。この世界はとても広く壮大です。私はそれを自分の目で、仲間と見てみたいのです」
セイレンさんはそう言ってハワードさん、ユノさん、そして私を見回した。
──え?私も?
☆☆☆
旅立ちの日、私たちの4人は町を追われ逃げ込んでいたあの小屋の外にいた。そばにはドラコとゴンタもいる。
「ねーねー、よかったの?セイレン。王宮の人たちが見送ってくれる準備してたんじゃ」
「いや、挨拶なら昨日済ませて来たから大丈夫だ」
「よーし、じゃあ早速出かけよう、スミレ、お前の幸運剣を地面に置いて倒してくれ、それで進む方角を決めよう」
「そ、そんな、テキトーな!?」
「ゲン担ぎだよ!何度も救われたろ、その短剣には」
私は、幸運剣を地面に置き、そっと手を離した。
幸運剣が示す先には、幸せな未来が待っているに違いなかった。
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