あなたは死にました
初投稿です
全10話完結予定です
「おめでとうございます!あなたは死にました!」
初めて言われた言葉だった。死にましたのほうではなく、おめでとうございますのほうである(いやマジで)
「あなたはとんでもなく不運な人生を送ったみたいですね、でも安心してくださいね、それはフラグですから」
目を開けると、真っ白な空間にいた。
ぼやけた視界の中にうっすら人影が浮かび上がる。
それはだんだん眩しくなっていき…目の前に全身白のドレスに見を包んだ可憐な女神様が現れた。とりあえず死んだと思ったが口を開いてみたら喋ることができた。
「あのー、ここは天国ですか?あなたは女神様?」
「不運なあなたにはピッタリの世界にご案内しましょう。生き抜くことできっと幸運が訪れることでしょう。前世が不運なほど幸運を掴めるでしょう」
ああ、人の話を聞かないタイプの神様だ。なんかもう私の行き先が決められているみたいなので一応質問してみた。
「あ、あの、私死んだんですか?私の人生は?」
「終わりましたよ」
ああ、終わったのね。転んで滑って終わりか、ヒヒヒ。呆れるやら悲しいやらで思わず口元が緩んだ。
「今から私の質問にいくつか答えていただきます、一度しか聞かないので慎重にお答えください。」
なんだって、というかここはどこなんだろう?今なんか大事なことを言われたような気がする。そして質問は始まった。
「お名前はなんでしょう?」
「すみれ…」
「スミレさんですね。」
これって本当に生まれ変わるのだろうか。異世界転生ってやつ?どうやらそうらしいが頭が全然おいついてない。
「年齢は何歳がよろしいですか?」
ちょっと待て、年齢を決めれるのか。異世界転生最高。しかし死んだばかりで頭があまり働かないのでとっさにいい感じの年齢を答えた。
「17歳くらいがいいかな、なんて」
「17歳ですね、かしこまりました。」
本当に言ってるのかこの女神様は。そりゃ17歳の頃に戻りたい。事故にケガをして足が悪いと言い訳をして世界を自ら閉ざしてしまっていたあの頃に。
「容姿はどこか変えますか?」
待ってましたその言葉。そりゃ変えたいところはいっぱいあるが、この顔でなんとか人生やってきたつもりだ。しかし未練はないどうにでもなれ。
「目は二重で、顎は小さく、胸はもう少し大きくして!ふとももは細くしてほしい!お腹の贅肉も取って!あと健康体にしてほしい、てか悪いところ全部よくしてほしい」
こんなところか、私は思わず早口でまくし立てた。
「全てかしこまりました、変更開始」
言われた瞬間から何か身体に変化を感じている。この時点で私の心は高鳴っていた。
「では職業は何にしますか?」
え?職業を決めるってことは異世界行っても働かなければいけないの?そう考えると途端に現実味が出てきて少し嫌になった。
クソみたいな前世で学校に行っていないとき、生まれ変わってお姫様になって、イケメンの王子様と贅沢三昧したいとかよく妄想していた。でも今はそんなことは恥ずかしくて言えなかった。
「家事手伝い…とかダメですかね?」
「かしこまりました、では健闘を祈ります」
「あ!あぁ!やっぱり伯爵令嬢がいいです!イケメン王子様とのイチャイチャラブラブ展開を期待します。そして妹や姉に略奪されて婚約破棄されるも最後は…」
「もう決定致しましたので変更不可でございます。まもなく転生開始です。初期装備はこちらで用意いたしました」
気がつくと部屋着から冒険者っぽい服装に着替えていた。RPGの村人がきてそうな平凡なやつだ。
「だ、ださい…」
防御力3くらいしかない布の服はわざわざありがたがるものでもなかったのでつい本音が漏れた。
「私からのせんべつとして魔法石を授けます。これはあなたが前世で願い続けるも叶わなかった幸運をエネルギー変換して封印したものです。うまく活用してくださいね。」
なんて?魔法石?幸運?よくわからんけどせんべつだからきび団子みたいな物か。ポケットが急に膨らみ何かが入った気がした、しかしそれを確認する暇はなく…女神様の姿は薄れまた視界がぼやけていった。
さーてさて、夢にしてはかなり出来がいい夢だったがもう覚めるのだろうか、あーもったいないもっと見ていたいくらい不思議な夢だったな。
〜〜〜〜〜
目を覚ますと見知らぬ部屋の中でベッドに寝ていた。
頭が混乱するが意識はハッキリしている。横になった身体を起こすと窓から外が見える。
そこにはヨーロッパ風の町並みが広がっていた。
「まじで………、本当に転生したんだ、夢だとは思えない」
なんだか身体が軽い、立ち上がって姿見で自分の全身を見てみるとそこにはそこそこ美人になった自分が映っていた!(うーんこれならマスクで隠さなくても見れる)
「あぇふ!うそ…足治ってる…」
思わず声が出て跳び上がった。というか腹も引っ込んでる!これは、これはもう間違いない。私は転生して生まれ変わったんだ。そしてこの世界で何かすごいことが待ってるに違いない。ところでここはどこだろう。スタート地点の宿屋かな?
その時階段を駆け上がってくるようなドスドスとした足音が響いた。バンッ!と勢いよくドアが開くとそこにはサンタクロースのようなモジャモジャの白ヒゲに悪人面のドワーフのおっさんが立っていた。なんだこいつやばい、犯される。
「お!起きたか!動けるか?あんた異邦人だろ!行くところがないならうちを手伝ってくれ!うちの鍛冶屋をな!」
鍛冶屋ってなに?武器とか作るあの鍛冶屋?ねえねえ女神様、これじゃ家事手伝いじゃなくて鍛冶屋の手伝いじゃないのよ!
こうして私は美女に生まれ変わった。前世でとんでもないくらいに不運と踊っちまってた私は最高のスタートを切れるかと思いきや、最初に出会ったのはイケメン王子様などではなく、熱血漢のドワーフであり、それが波乱の異世界生活の幕開けだった。
ご拝読ありがとうございます