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学園最強の独隠楽生  作者: ます
第1章 イントロダクション
25/27

025-利用価値

 白石の誤情報が出回った日から四日が経ち、イントロダクション本番まで残り数日となった。それに伴い、深町の調査によって他クラスの情報も徐々に集まっていった。


 相変わらず三組の情報は掴めていないが、他クラスでも誤情報が出回り、少しずつクラスの纏まりが崩れているようだ。藤宮のような中心人物たちは、その対応に勤しんでいることだろう。


 俺のクラスでは、藤宮を中心にクラスの準備は進んでいた、その裏で少しずつ問題が表面化している。誤情報によってクラスの信頼関係が揺らぎ始めているのが明らかだった。特に、数日前の葉月と白石の喧嘩はその兆候の一つに過ぎない。


「三組や他のクラスがどう動くか見物だが…」


 クラスのポイントを下げないことに注力するのか、それとも、他クラスのポイントを下げに行くかのどちらかだが、確実に他の四組の内一つは相手のポイントを下げに来ている。


 俺がいる四組と同様に、妨害を受けているのは二組と五組らしい。単純に考えると、一組か三組になるわけだが、結局、クラス単位での作戦ではなく、個人で攻撃している可能性もある。

 

「深町、お前はどうなんだ?」

 

「そうですね…私のクラスだと内部で二つの派閥に分かれました。一つは積極的に外部と接触を行うグループ。もう一つが、あまり外部と関わらないという慎重派のグループです」


 深町は冷静に続ける。彼女のクラスでも、表面上は穏やかに見えるものの、内部では既に軋轢が生じているようだった。


「他クラスの妨害によって、こちら側も同様に何かしら仕込んだ方がいいと思う人達が少しずつ増えていきました。リーダーである真壁陽菜さんは後者側の動きをしていますが、前者側のグループを抑えきれていません」


「なるほどな…まぁ、『どこも同じ』ものだな」


「そうですね」


 深町は少し困った笑いを見せる。


「お前はどちら側なんだ?」


「私は後者です。というのも、特に他クラスに興味はありませんので、基本クラス内も静観していますね」


 ふむ、静観か…それが賢明だろうな。


 俺は深町の言葉に頷きながら、彼女が本当に静観しているかは分からないが、少なくとも彼女の立場は確保されていると感じた。どのクラスでも内部での派閥争いや意見の対立は避けられないが、その中で自分をどう位置付けるかは重要な問題だ。


「まぁ、お前は引き続き情報収集を頼む。やはり三組だな。そこがどう動くかが鍵になるだろう。既に動いた結果なのかもしれないが」


「分かりました。三組は依然として厳重に情報が遮断されていますが、何か掴めればすぐに報告します」


 深町が礼をして屋上を後にし、俺はその場で軽く息をついた。他クラスの情報が不透明であればあるほど、こちら側も警戒を強めなければならない。今回の誤情報の件が動いた結果なのか、もしくは、今後何か動きがあるのかは不明だ。



###


 情報共有が終わり、寮へと帰っている最中、後ろから声を掛けてきた人物がいた。


「東雲…楽」


「おい。どうしてここで話しかけてくるんだ?」


 振り返ると、そこには帰宅途中の黒崎がいた。


「東雲…お前には、聞きたいことが沢山ある」


「俺は、お前に聞かれることはひとつもない。この前のことを話したら、もう一度、前よりも苦痛を味わうだけだ」


「言わねぇよ…あんなのはもう勘弁だ。だが、どうして俺だけ記憶を残したのか聞きたいだけだ。あの時、殆ど説明がなかったじゃねえか」


「……」


 黒崎を拷問した日、全てが終わり四人を連れ、帰宅した際に黒崎だけは一度、俺の部屋へ連れて帰った。


 部屋に着く時には未だ気絶していたが、ギフトを使用して無理やり起こした。彼だけ記憶改竄を行わず、あの時起こった出来事は消さずにいる。


「お前は利用価値がありそうだったからだ。それ以外の理由はない。楽になりたいと言えば…まぁ、記憶を消して他のやつらと同じ状況にはしてやる」


「いや、いい。前の件でお前が只者じゃないってのは分かったからよ。ついていくだけで良い思いができそうな気がするぜ」


 良い思い…ね。どうせ使えなくなったら捨てるだけだからな。現状は表立って色々動ける藤宮に続き、黒崎も性格を除けば、今までの動きが無ければ前に出れる人間だろう。これから様々な特別授業でクラス間の争いが起こる際、最低限二人以上の中心人物が必要になるはずだ。黒崎をおとりとして動かしていきたい。もしくは…もう一人。


「そうか。良い思いができるかはお前次第だ。ただ、現状イントロダクションでお前がするべきことは、藤宮に対して協力的であればいい」


 それでイントロダクションは『すべて上手くいく』。


「さっさと帰れ。あと、あまり俺に話しかけるなよ。何かあれば俺から連絡を入れる」


「ちっ、分かったよ」


 黒崎は舌打ちをしながら足早に寮とは反対方向へと向かった。おそらくショッピングモールに向かったのだろう。ということは、俺に接触するためにわざわざ待っていたというのか。よくもそこに労力を割けられるな。


 楽はそのままのペースで歩き出した。


 もう一人などと考えたが、一旦、現状動いている藤宮、深町、黒崎の三人で当分は楽に過ごせそうだ。クラスの中心に立っている藤宮と、それをサポートできる程の影響力を持つ黒崎。他クラスなのにも関わらず、オールラウンダーで有力なギフトを持つ深町。


 序盤にしてはかなり良い手札を揃えられたと言えるだろう。黒崎に関しては、藤宮の向かっていた運命に転がっていた副産物だ。元々、全員記憶を消すつもりでいたが、今後のことを考えた時に彼は有用だろうと思えたのだ。


 イントロダクションについては、もう十分に動いただろう。あとは、周りの奴らが想定通りに動けば……勝てるようになっている。

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