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学園最強の独隠楽生  作者: ます
第1章 イントロダクション
24/27

024-妨害

「そろそろイントロダクション本番が近くなってきたが、他クラスからの妨害は無いのか?」


 風間、狭間、霧島の洗脳を行った日から数日経ち、藤宮と夕飯を食べていた。あれから、彼らの協力的態度は変わることはなく、クラスに直接的に協力しているというより、藤宮に対して最低限の協力は行っていた。

 

「今のところ特にないかな?向こうから接触もないし、私から接触してないっていうのもあるかもしれないけど」


「それはありそうだな。まぁ、今回のルール的に妨害が難しいというのはありそうだな。あるとするなら事前に何かしら接触する位しかない。実は、クラスの誰かは接触している可能性もあるぞ」


「それもあるかもしれないけど、特に目立った動きは今のところないし、みんな普通に準備してる…かな」


 藤宮は少し困惑気味に答えたが、何か引っ掛かることがあるのか、考え込むような表情を見せた。


「まぁ、どこかで裏切りや妨害が発生してもおかしくないだろうけど、お前は何かあったときのことを考えた方がいいぞ」


「うん、私もそのつもりで準備してる…でも、黒崎君たちが協力してくれるのは正直ありがたいかな。あの四人が非協力的なままだったら、もっと大変だったかも」


「藤宮の説得力…ってことにしておくか」


 ふっ、と軽く笑って冗談を言いながらも、実際にあの四人が非協力的な状態でイントロダクション本番を迎えていた場合を考えると、藤宮のキャパシティーはオーバーしていただろう。ただ、問題はまだ幾つも存在しており、月城のグループが代表的な問題と言えるだろうな。


 更に、三組の情報がないことも不穏な空気を感じる。情報共有をした日以降、深町から三組に関しての追加情報は一つも来ていなかった。


「まぁ、黒崎達が協力的になったのは藤宮的に助かっただろうが、まだ安心しない方がいいぞ。月城たちも含め、クラス全体が本当に一枚岩になったわけじゃないしな」


「確かに、そうだよね…」


 藤宮はうなずく。彼女の表情を見るに何か引っかかるものがあるらしく、真剣な顔つきで思案している。



###


 昨日、楽が予感していた通り、教室内では不穏な空気が流れていた。クラスメイトの中で、あるグループが激しく口論しているのが見えた。


「だから言ってるだろ、あの情報は偽物じゃないのか!?」


 と、怒りの声が響く。喧嘩をしているのは葉月翔馬(はづきしょうま)白石千影(しらいしちかげ)の二人だ。葉月が拳を握り締めて、今にも殴りかかりそうな勢いだが、白石はそれを冷静に受け流そうとしている。


「ちがうよ。私は本当のことを言った!本人以外からの情報で疑うのって変じゃない?」


「俺は聞いたぞ…聞いた情報は大体合っていた。だが、そのうちの数項目は答えが違ったんだよ。騙して俺からポイントを取得しようとしたな!?」


「聞いたって、誰から!?」


 葉月は黙り、人物の名前は出さなかった。恐らく、このクラス外の生徒だろう。今回のルールだとクラス内で自分のペア以外にこういった妨害を行う意味は生じないと推測できる。妨害を行った者は情報を渡す代わりに口止めを行ったのか。


 今回、考えないといけないのは、葉月が主張した「大体は合っていた」という点だ。イントロダクションの準備で話していた、口合わせの内容は基本的にはクラス内で行われている。妨害を行った者は、白石の情報をどうにかして取得し、本当の情報と偽の情報を織り交ぜることで信憑性を増したのだろう。


「やっぱりこういうペアの組み方するから相手を信用し辛いんだ」


 最初のペアを決める方法にも問題はあったが、やはりこういう流れになるか。これに関しては藤宮に責任が問われかねない。まぁ、これの対応をするのは藤宮の役目だな。昨日も準備してるって言ってたし……適当言ってるわけじゃないだろうな?


 そんなことを考えていると、藤宮が周りに気付かれないようにゆっくり近づいてきた。


「どうした方がいいかな…?このままだと喧嘩がエスカレートしそうだけど…」


 と、藤宮が不安そうに小声で聞いてくる。イントロダクション本番ばかり気にして、こういった事態を想定してなかったな?


 「ほっとけ」と短く返す。


「下手に介入すると、ますます疑念が深まる。まずは様子を見とけ。時間が経てば、本物と偽物が自然に明らかになる」


「でも…」


 藤宮が心配そうな顔をするが、楽は冷静な表情を崩さない。クラス内の緊張が高まっていたが、今は静観が最善だ。


 楽は藤宮を軽く見やると、少し声を低くして付け加えた。


「お前が今、何を言っても火に油を注ぐだけだ。葉月は今、頭に血が上っている。何を言っても聞く耳は持たないだろうな」


 藤宮は一瞬言い返そうとしたが、楽の冷静な態度に押されて口を閉じた。彼の言う通り、今は状況を見守るのがベストだろう。周囲のクラスメイトたちも、二人の喧嘩を遠巻きに見守っているが、誰一人として止めに入る様子はない。


 その時、教室のドアが開いた。入ってきたのは、黒崎と彼のグループだった。黒崎は口論している葉月たちを一瞥し、興味無さそうに目をそらしたが、『楽の視線』には気付いたようで、わずかにうなずいてみせた。


「おい、どうしたんだ?」


 黒崎が白石の肩に軽く手を置きながら問いかける。白石は少しホッとした表情を浮かべ、状況を説明しようとしたが、葉月が先に声を荒げた。


「黒崎!この女が嘘の情報を流して俺を騙そうとしてるんだ!」


 黒崎は肩をすくめ、葉月に冷静な声で言った。


「騙されたと思うなら、それにどう対応するか考えるのが先じゃねえのか?騒いでる暇があったら、自分の情報が本当かどうか確認したらいいだろ」


 葉月はしばらく睨みつづきていたが、やがて何も言わずに拳を下ろし、そのまま黙り込んだ。黒崎の言葉に、彼も何かを悟ったのだろう。騒いでも無駄だと気付いたのか、それとも黒崎が来たことで冷静さを取り戻したのかは分からないが、口論は次第に収束していった。


 あいつ(黒崎)だけ、少し『条件』を変えていて良かった。彼の性格と人柄は藤宮じゃカバーできない部分で使える。


 黒崎がきっかけとなってクラス内の緊張が解けたことを感じ取った。黒崎が協力的な態度を取ったことで、クラス全体が少し落ち着きを取り戻したのだろう。


「まぁ、これでひとまず収まったな」


 と楽は藤宮に言うと、彼女はホッとしたように微笑んだ。


 現状は収まったが、まだ安心するのは早いだろうな。意図しないペア決め、信頼が必要なルール、誤情報での妨害…水に一滴の毒が入るように、今回の件で問題が広がるのは葉月や白石だけでは済まないだろう。


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