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学園最強の独隠楽生  作者: ます
第1章 イントロダクション
14/27

014-勝利の鍵

「お前はクラスに対して協力的な存在なのか?」


「どちらかと言われれば協力的ですが、特に協力する義理もないですし、自分の利益になるかどうかで判断を変えようと思っています」


 なるほど、深町のスタンスも俺と似たようなもののようだ。どちらにもなれる存在であれば更に好都合だな。


「これから三年間、俺が指示する内容に従え。そうすればお前の望みを叶えてやる。但し、不出来な結果や報告があれば、契約はすぐに切らせてもらう。要するに、全てはお前の技量次第だ」


 他クラス内の手駒として、何かあれば藤宮のバックアップとして動ける人材になってもらおう。


「指示とは、詳細にはどのようなものになりますか?」


「時には情報収集と提供を、時には尾行や戦闘といった感じだ…不服か?」


 まぁ、要求内容としては卒業までの三年間と少し多すぎる気もするが、こいつが自分の願いに対してどれほど重く思っているかの指標となる。これで不服なのであれば、少し減らしてやればいい。


「…分かりました。私は貴方との取引を承諾し、契約を結びます」


 予想とは反してすんなりと条件を飲み込んだ。

 深町が穏やかな性格で助かった。今回は向こうが完全に下手に出てきたおかげで、力で捻じ伏せるような面倒事を起こさず、ほぼ一方的な契約をすることができた。


 話を聞いてみると、深町本人は今後生徒会に入る予定らしい。情報の入手手段としては、生徒内の最高権限を得た中で行えるというのは相当大きい。


「取り敢えず、今日はここまでだ。また指示があれば別途連絡する」


「分かりました。それでは、失礼します」


 深町は再び姿を消してこの場を去った…のだろう。こちらを見ていたから存在に気づくことができたが、見られていなければ本当に分からないな。


 藤宮と違って交換条件ではあるが、二個目の手駒が手に入ったか。


 深町が去った後、しばらくフェンスに寄りかかり考える。深町との契約は有利に進んだとはいえ、警戒心は捨てられない。

 

「入学式で殺害予告してくるからな…」


 藤宮のように、明確な動機や感情が見える相手ならまだしも。深町の言動は掴みどころがない。


「まぁ、使えるうちは使うまでだ」


 再び溜息をつき、気持ちを切り替える。今は深町を信頼する必要もない。手駒として役に立てばそれでいいし、いざという時に負ける気もしない。だが、この静かに進んだ契約が、後に波紋を広げるかもしれない、という考えも頭を過ぎった。



###


 翌日の終礼後、イントロダクション本番時の組み合わせについて相談したいとクラス全体で集合することになった。一人だけ居ないのも不自然という事で、藤宮がどう動くかを確認するために、静かに様子を伺っていた。


 藤宮はクラスメイトたちを前にして、すでに中心に立っている。その姿はどこか頼りがいのあるリーダーのようで、彼女が自然にそう振る舞っていることが分かる。


「皆、イントロダクションで協力し合うことが大事だと思うんだ。クラス全員で連携して、この試験を乗り切りたいんだ。だから、組み合わせもお互いがやりやすいように考えよう」


 藤宮はクラス全体に向けて提案を始めた。数日間クラスメイト達に話しかけていたのが報われ、賛同者は多かった。最初は反発していた女子グループも彼女の言葉に耳を傾けているが、その表情はどこか渋々といった雰囲気が漂っている。


「でも、全員で協力しても、裏切りとかあるんでしょ?それってどう防ぐつもり?」


 女子グループのリーダー的存在である月城美夜(つきしろみや)が、やや挑戦的な口調で藤宮に問いかけた。彼女の発言に、他の女子たちも頷きながら同じ不安を共有している様子だ。


 藤宮はその不安を察して、落ち着いた口調で答える。


「確かに、裏切りはあるかもしれない。でも、皆がちゃんと協力して信じ合えば、そんな状況は避けられるはずだよ。お互いを良く知って、裏切る余地をなくせば、きっと大丈夫だと思うの」


「…信じあえば…ね」


 月城は藤宮の言葉に一瞬間を置き、視線を頬化の女子たちに移した。その顔はどこか半信半疑な表情が浮かんでいるが、周りが見守る中でこれ以上の反撃は控えたようだった。


「まぁ…とりあえず、今はそういうことにしておこっか。やれるだけやってみるってことで」


 渋々といった様子で肩をすくめながら、月城は一応の賛同を示した。だが、その声には納得しきれない響きがあり、他の女子たちもそれに同調するかのように微妙な表情を浮かべている。


 藤宮は小さく頷いたが、その目の奥には少しの不安が残っていた。さらに、問題はまだ残っている。藤宮は視線を男子グループへと向け、少し意を決した表情で話しかける。


「じゃ、じゃあ、男子のみんなも協力してくれるよね?」


 教室の隅に固まっている黒崎大翔を中心とした男子グループは、藤宮の言葉に対して露骨に顔をしかめた。風間陽翔が腕を組んで不機嫌そうに言い返す。


「協力って言われても、そもそも俺たち、そんなに仲良くやるつもりはねぇし。俺たちは俺たちのやり方でやらせてもらうぜ」


 他の男子たちも同調して、藤宮を睨むように無言の反抗を示している。明らかに彼らは協力する気はない。それでも藤宮は屈せず、再び言葉を紡ぐ。


「でも、クラス全体で協力することが一番の勝利の鍵だと思うの。男子のみんなも一緒に考えてほしいんだけど……」


 黒崎は藤宮の言葉を遮り、険しい表情で吐き捨てるように言った。


「いや、俺たちは俺たちでやる。勝手にまとめようとするなよ。お前が勝手に上に立ってるのが、どうにも気に食わねぇんだよ。じゃあな」


 そう言い終わると、黒崎はすぐに立ち上がり、仲間たちに軽く顎をしゃくって退出を促す。彼らは無言で立ち上がり、黒崎の後に続くように教室を後にした。ドアが閉まる音が、教室に静かな緊張感を残して響き渡った。


 やはり簡単にはいかないな、と思いながらも俺は口を挟むつもりはない。


 藤宮は男子たちの行動に困惑しつつも、少し俯いて次の手を考えているようだった。この先どう動くかは彼女の勝手だが、この状況をどう打破するのか、見守るしかない。


 …俺も退出していいか?


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