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7話 レザリボン

次の日、会社に出向くなり楓はいきなり社長にこう言った


「社長!今まで長い間、お世話になりました!私、今日限りで退社いたします!」


突然の楓の報告に、社長を除く社員一同は驚きを隠せなかった。え?出社するなり何いきなり?


「え?宮内さん、いきなりどうしたの?これから朝礼始まるけど」


大八木さんが呆然としたように楓に問いかける。楓はそんな周りの反応もものともぜず自分の輝きに満ちた瞳でこう答える


「大八木さんも今までありがとうございました!私、ほかにやりたいことができたんです!だから今すぐ東京に帰ってそれをやろうと思うんです!」


とりあえずまあ、なんとなく話の収集がつかないから社長と大八木さん、楓の三人で別室に移った。大八木さんはとても心配した様子だったがなぜか社長は何かを知っているようで動じる様子もなかった


「宮内さん、話が唐突すぎてわからないんだけど、きちんと説明してくれる?急になんで東京に戻りたいって思ったの?」


「はい!それはですね!昨日会社のホームページを見て、自分でも東京でこんな会社始めたいって思ったんです。お客様からの喜びの声を見て、自分もこんなふうに役に立ちたいって!それで私、アニメが好きだし、やっぱりアニメ関係のクリエイターになりたいなって!」


これは若い人によく有りがちな考え方で好きなものを見つけたり自分で何かやってみたいと判断したときにこうやって衝動的に飛び出す、そう、悪い癖だ。仮に技術や情熱があったとしてもそれをビジネスにするのがどれくらい大変なことか全く想像ができていない


「あのね、宮内さん、あなたがアニメが好きで自分の夢を持ってるのはわかるけど、今から東京に戻って再就職を探すつもり?何があったのかは知らないけど急すぎない?もちろんあなたが選ぶ選択だから私たちに止めることはできないけど、もう一度よく考えたら?」


「まあまあ、いいじゃないか」


大八木さんの説得に社長が間に入って話す。どうやら社長もなんとなく理解しているようで止める気にはならなかった


「宮内さん、この前の宿谷さんの工場見学で何かつかんだみたいだね。まあ宮内さんがどういう人間でなんでここまできたのかは私も元から知ってたからいつか東京に戻ってアニメ関係の仕事に就きたいと思ってたのは重々承知だったよ。だから私はこのまま宮内さんを送り出そうと思う。何事も早くするのに越したことはないからね。ちょうど一年半くらいだったかな?うちで働いてくれてありがとう」


「はい!こちらこそ今まで本当にありがとうございました!急に仕事を辞めるのは会社に申し訳ないことは承知なのですが、私どうしても今すぐに帰りたいんです!今住んでいる賃貸の荷物は近々自分で取りに来るので今日はこれから鈍行に乗って東京に帰ります!本当にありがとうございました!また何かあればこちらにご連絡させていただきます!よろしくお願いします!」


そういうと楓はぺこりとお辞儀をして部屋を出ようとした。しかしそういえば気になったことがある。そう、昨日、会社のホームページを見たときに、新しく別の事業を始めようとしていたことだ


「そういえば社長、うちの会社で使っている薬品を他に売り出すことにしたんですか?それで直し方の研修も始めたってなんか見たような」


「ああ、そうそう。他にもビジネス始めようと思ってね。すごく悩んだんだけど大八木さんと二人で話し合って始めることにしたんだ。レザーリペアのやり方を教えて、それをビジネスにするって」


そういえば最後になんとなくその研修の看板名を見たような気がした。えーとうちの会社の名前じゃなくて、なんだっかな?


「あ、はい、それは見ました。ええとそのうちの会社の名前と屋号違いましたよね?確かカタカナだったような」


「はい、レザーリペア。リザーをまた蘇らせるっていう意味でRebornからとって『レザリボン』ってサービス名にしたよ」


「レザリボン‥。」


楓はその名前を聞くと、何か心に響くものがあった。この名前、すごい、素敵。りぼん?髪に巻くリボンではなくて女の子が読む雑誌じゃなくて、生まれ変わるっていう意味、そう!革をまたもう一度使えるようにっていう意味でレザリボン!


「素敵な屋号じゃないですか!もし私が東京でお店やるとしたらその名前、借りてもいいですか?」


「もちろんだよ!うちで働いた人が東京で何かビジネスをするとしてうちの名前使ってもらえるなんて是非!」


そう言って二人と話を終えると、楓は社員一人一人に挨拶をして会社を出た。そして家に着くと必要な荷物だけまとめてすぐに東京行きの電車に乗り込むのだった

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