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5話 レザーがバッグや財布などの製品化される前の工程

「それからね、製品化される前のレザーのなめし工程から染め方、銀面の作り方とか職人さんに今までのうっ憤を晴らすかのように事細かに質問してさ、何度も何度も工程を確認してさ、そのおかげでレザーの製造工程を論理的に知ることが出来たんだよね。」


なめし?銀面?えとなんだったかな?それは



革についての専門用語が出ると楓は首を傾げた。確か会社に入った時、最初の研修や説明で習ったはずだが一体なんだったか?



「あのすみません、なめしとか銀面ってどういうことでしたか?勉強不足でよくわからないのでもう一度教えて欲しいです」



楓はなんと革のリペア会社の社員であるにもかかわらず革の基礎的な知識であるなめしのことも忘れていた。入社時にきちんと説明されたと思うのだが。そんな適当な会社ではないはずだ



「え?加藤さん、この子なめしって知らないの?そりゃあまずいね。あ、とりあえずさ、ちょっとこっちきて。ちょうどいいや、牛革でいいのがあるからそれ見ながら説明してあげるよ」



宿谷さんが社長と楓を作業所までまで連れて行く。そこには会社では見たことのない美しい白いレザーがあった


挿絵(By みてみん)



「これはなめした後の牛革だよ。ああ、そうだなめすって忘れちゃったんだね。なめすっていうのは動物の生皮から不要なたんぱく質や脂肪を取り除いて、薬品で処理して、長く持たせるってことだよ。簡単に言うとレザーメンテナンスみたいなもので、革を柔らかく加工するって感じかな」



ああそうだ。なめしっていうのは革の手入れみたいなものだ。楓はそんな基礎中の基礎の言葉も忘れていた。



「それでさ、宮内さん、革には二種類の革があるよね?それは知ってるかな?」



「はい、本革と床革ですよね?」



「そう、銀面っていうのは本革とは、革の最表面の革のことを言うんだよね。この「銀面」っていうのは動物の皮の一番外側にある薄い表皮を除去した「真皮」の表面のこと。わかるかな?」



ああ、確かレザーの勉強をしたときにそんなことを学んだような。ってええと、毎日作業ばかりしていたから楓はすっかり忘れていた。アニメも見る時間も多かったし



「はい、なんとなく思い出しました。ええとそれで床革が革の二層目にあたる部位で、本革みたいに経年変化を起こさなくて柔らかくて使い心地はいいってやつですよね?たしかスエードやベロアなんかも牛の床革を使ってたって学んだ記憶があります」



「その通り!よく勉強してるね。それなのになめしや銀面を知らないって、順番が逆だよ」



宿谷さんがハハっと笑うと楓は俯いて顔を赤くした。これからはもう少し勉強しておこう



それから宿谷さんは楓になめしたあとの白いレザーを見せてくれた。あれ?そういえばなんでこれは白いのか?楓が触った感触ではこれは牛革だったはずだが



「これはさ、毛皮がなくなったあとのなめした牛革だよ。ここが銀層で中が床革だね。そう、牛って本当は美白だったんだよ!」


挿絵(By みてみん)



え?牛は美白!?牛って白と黒っていうイメージもあるけどグレーとかそんな感じもしたけど



「はは、懐かしいね。これは私も最初宿谷さんに見せてもらった時は本当に驚いたよ。牛がまさか美白だったんて」



社長がそういうと次に宿谷さんは奥から何やら黄土色の粉を出してきて楓に見せた



「それからさ、この粉がタンニン剤だよ。このタンニン剤を使ってレザーをなめして染めなどの加工ができるようにしていくんだ。植物由来の成分で出来ているから革との相性もバッチリさ!」



「なめし」の元になるタンニン剤を手に取って楓に見せる宿谷さん。楓はこれが革のなめしの元となるのかあと深く感心した


挿絵(By みてみん)



そしてさらにまた奥から宿谷さんは違うレザーを持ってきた。ん?光加減でわかりにくいが白にも見えるけど、若干青っぽい。これはタンニン剤でなめした革ではないな


挿絵(By みてみん)



「宮内さん、これが何でなめした革かわかる?」



「はい、これはクロム剤ですね。わかります!クロムはフィギュアでも使われている素材なんですよ」



そうなのだ。大学でフィギュア製作に勤しんでいた楓にはわかることだったが、クロムはフィギュアでも使用され、クロムフィギュアというのが存在するのだった。楓のアニメの知識がここで少しだけ役に立った



「へえ!クロムを知ってるとは!いやはや宮内さんも博学だね!クロム剤はさ、化学薬品でウェットブルーと呼ばれてるんだよね。これからさ、少し湿った状態で、乾かないように保存して、後に染色、着色をして、色止めしてさ、それからバッグとかのレザー製品になっていくんだよね。」



今日、楓はこの宿谷さんの工場えお特別に見学させてもらいたくさんのことを学んで感動を抑えきれなかった。今日1日で何日分のレザーに対する経験ができただろう。そして学べただろう。



そしてもう夜も遅くになったために社長と楓は宿谷さんの工場を後にした。社長の車に乗り込み、楓は心臓がドキドキなりっぱなしだった



「宮内さん、今日はラッキーだったね。楽しかった?」



「はい!あの、こんな経験させていただいて、本当に嬉しかったです!社長も、当時はこんな感じだったのかなーって」



「ははは、僕はさ、当時はこんな1日どころじゃなくて何日もへばりついて学習したからもっと感動はすごかったよ。なめした後のレザーを染めたり、艶感を調整する工程を見せてもらったり。なぜなぜ?って深堀をして質問して自分なりに理解をしていったよ。」



「それで最後に職人さんにレザーってこういうことですか?っと聞いてみると


『そういうこと!』


っと答えが返ってきて、その瞬間、心の奥底から感動して、身震いしたことを今でも鮮明に覚えてるよ。今の宮内さんと同じように本当に感動したよ。レザー作りを一から論理的に知ることで、

今まで自分にしかできなかったことが、スタッフにも教えられるようになったしね。今の会社があるのもほんと全部宿谷さんのおかげさ」



社長はそう言って嬉しそうに楓に車の中で語りながら後にした。楓は家に着くと今日あったことを全部思い出しながらメモ帳に全て記録していった

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