1.ギルド最高の剣士。
ここから第1章。
「キミは本当に、何者なんだ……?」
「何者って、普通の冒険者だが」
「…………」
ある日、クエストを終えて酒場へ向かう途中のこと。
キーラは心底不思議そうに、俺を見ながらそう口にするのだった。そして、それに特別おかしく思わずに返事をすると、彼女はジト目でこう言う。
「いや、単独でドラゴンの巣を壊滅させられる者が、普通の冒険者のはずがないだろう。普通の冒険者というのは、それこそゴブリンやワイバーンを相手にするものであって――」
少なくとも、俺の力量は並外れている、と。
キーラは淡々と説明していた。それを聞いて俺は、頬を掻く。
そのことに関しては、少しだが自覚はあった。しかし、あいにくだが素性を明かす気にはなれない。身分を明かしてしまえば、アイツらに見つかるかもしれないからだ。
もっとも、冒険者をする上で手を抜くつもりはないが。
「――まぁ、いい。とにかく、食事を摂ろう」
「そうだな。今日はもう、休みだ」
暖簾に腕押しだと気付いたらしい。
キーラはその綺麗な眉尻を下げながら、深くため息をつくのだった。
そして、酒場に立ち寄る前にギルドへと足を運ぶ。達成したクエストに応じて与えられる、いわゆる報酬を受け取りに行くためだ。
「ふむ、今日も無事に帰ってきたのだね」
ギルドカードを提出すると、受付の年老いた男性は顎に手を当てる。
そして、不意にこう言うのだった。
「これは、そろそろランク制度の改定を考えなければならないな」
「ランク制度の改定……?」
「うむ」
どういう意味なのか、それを訊ねると相手はこう答える。
「ギルドにおけるランク、というのは相対評価なのだよ。つまるところ、お前さん――アイゼンも含んだランク付けを新しく作らなければならない」
――もっとも、ここまで大きな改定は久しぶりだが。
受付の男性はそう笑うと、近くにいた一人の冒険者に声をかけた。
「あん? なんだよグランのジジイ」
するとやってきたのは、一人の剣士。
受付の男性をグランと呼んだ彼は、見るからに不良という風体だった。
短く刈り込んだ赤髪に、鋭い赤の眼差し。身に着けている装備は、高価なものなのであろう。しかしどれも着崩しており、まともに攻撃を防げるかは疑問だ。
「これ、ランド。いい加減、口の利き方を覚えろというに」
グランは、その剣士をランドと呼んだ。
ランドはその言葉に、あからさまな不快感を示して頭を掻く。その態度を見て、グランは呆れたようにため息一つ、俺の方を見てこう言うのだった。
「すまないね、アイゼン。ランドは腕利きの剣士だが、どうにも素行が悪い。気に障ったら謝ろう」
「いや、別に構わないのだが。それよりも――」
いったい、どういう意図があるのだろうか。
そう考えていると、心を読んだようにグランは頷いた。
「先ほども言ったが、ランクの改定を行うからね。アイゼンには一つ、このランドと手合わせしてもらいたいんだよ」
そして、剣士を見ながらそう言う。
俺たちは互いに顔を見合わせて、同じく首を傾げた。
だが先に納得したのは、どうやらランドの方だったらしい。
「あぁ、なるほど。テメェが噂のアイゼンか!」
彼はニッと笑うと、
「オレ様の名前はランド・イーグルサス。このギルド最高位の剣士だ」
右手を差し出しながら、こう言うのだった。
「ぜひ手合わせ願うぜ、ゴールデンルーキー?」――と。
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