3.一方その頃のポンコツ。
ざまぁは、別の意味で。
一方その頃、ポンコツ勇者たちは。
「レナ、お前――」
「アタシたちが情けなかったから、アイルは死んじゃったんだもん。これからは、自分たちでなんとかしなくちゃいけないんだから……!」
「だからって、八時間も勉強なんて! 死んじまうだろ!!」
また、なんともポンコツらしい会話をしていた。
アイルの離脱後、とある街に立ち寄った勇者一行は宿に泊まっている。そこでレナは勇者の反対を押し切り、一生懸命に魔法の勉強を始めたのだ。
自分たちのせいでアイルは死んでしまった――もっとも、死んでないが――と。
「このままじゃ、お前が壊れちまう!」
「えへへ。平気だよ、このくらい……!」
「レナ……!」
目の下に大きなクマを作って微笑む少女。
そんな彼女を見て、勇者は唇をかみしめて拳を震わせた。そして――。
「分かった、レナがそのつもりなら……!」
「…………?」
そう言うと、彼は踵を返す。
レナがどうしたのかと、首を傾げるとこう言った。
「オレだって、勇者だ。一人でコボルトを倒せるようになってやる!」――と。
なんとも、低い目標を。
ちなみにコボルトというのは、魔物の中でも最下級とされるもの。正直なところ、一般人でもそうそう苦戦しない。
しかしながら、彼らにとってはまさに魔王級であるかのようで。
勇者の背中を見ながら、レナはこう叫ぶのだった。
「馬鹿、どうしてそんな無茶を……!」
迫真の声で。
すると勇者は振り返り、まるで死地へ赴くかのように微笑んだ。
言葉はない。すべてはその表情に。まるで、そう言わんばかりに彼は部屋を出て行くのだった。レナはそんな勇者を見送って、口を真一文字に結んだ。
そして、再び魔法の勉強へと戻る。
「アタシも、いつかアイルのように……!」
高すぎる目標を掲げて。
少女は、一心不乱に本を読み耽るのだった。
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